1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- スタバ株は1月に買え!: 10万円で始めるイベント投資入門
- 著者:夕凪
- 出版日:2014/4/25
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、イベント投資
まずは、本書の概要からです。
本書は、企業の業績や財務状況といったファンダメンタルズによらない、株主優待投資やアノマリ―投資などのイベント投資についての内容となっています。
なお、本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:30万円で始めた株で1億円を達成!
- 第2章:株で儲ける仕組みは花屋に学べ!― イベント投資のキホン
- 第3章:スタバ株は1月に買え! ― 実践 株主優待投資
- 第4章:株を始める前に知っておきたいこと ― 数字が示す儲けのヒント
- 第5章:プロの土俵にあがるな! ― 個人投資家 9つの心得
- 第6章:専業投資家への道 ―千里の道も一歩から
2.イベント投資とピラミッディング
第1章では、イベント投資の概要について書かれています。
まず、イベント投資は、全体市場の下落やバブルなどに関係なく、コツコツと利益を積み重ねていくものだということです。
そのため、大きなリターンを上げるためには、より大きく殖やせる方法を組み合わせる必要があると言います。
これに関して著者は、ジェシー・リバモアをモデルにして書かれた『欲望と幻想の市場』という本に書かれていた手法を参考にしたとのことです。
具体的には、高値を更新したところで利益を確定するのではなく、むしろどんどんと買い増していくピラミッディングを積極的に行うことで、非常に効率よく利益を上げることができたと言うのです。
3.株主優待投資の基礎と実践
第2章では、株主優待銘柄への投資について触れられています。
株主優待銘柄は、優待目当ての個人投資家の買いによって、「権利付最終日」あたりにかけて株価が上昇する傾向があるのです。
もちろん、株主優待銘柄の値上がり益を目的にして株式に投資する場合は、どんなに遅くても権利付最終日までには売却する必要があります。
一方で、売却する時点で含み益の状態であろうが含み損の状態であろうが、売り時が決まっているのがイベント投資の最大のメリットだと書かれています。
また、イベント投資では、企業の業績や財務状況といったファンダメンタルズは一切関係なく、著者の場合は、基本的に順張り投資のためトレンド系のテクニカル指標に注目していると言います。
特に、5日、25日の終値の平均を表した移動平均線を用いていて、これが水平の状態から上向きに転じたところが、まさに投資のタイミングとしては絶好だとのことです。
なお、数日間の短期保有目的なら5日線、数ヵ月の中期保有目的なら25日線がいいでしょうとも書かれています。
第3章は、株主優待投資の実践編のような内容となっています。
一般的な株主優待銘柄の値動きとして、株主優待月の2~3ヵ月前から徐々に株価が上昇し始め、だいたい権利付最終日の3~4営業日前くらいに株価がピークを付ける傾向があると言います。
また、外国人投資家の保有比率が高いような銘柄は避けたほうが無難で、理想は為替に影響されることのない内需株だとのことで、例えば、化粧品会社や外食チェーンになります。
ただ、株価が上昇したところで立会外分売や公募増資を発表してくる企業や、株主優待の中止などには注意が必要だと書かれています。
4.株価パターンとアノマリー
第4章では、株価のパターンや、様々なアノマリーについて書かれています。
まず、株価のパターンについては、1年の相場の動きを、1~3月期、4~6月期、7~9月期、10~12月期の4つに分けて、それぞれの時期の値動きの特徴について説明がされています。
それらの内容を総合して、個人投資家が積極的にポジションを取れる時期というのは、ほぼ決まっていて、以下のように年に2回、大きな上昇波動があると言っています。
- 2月中旬~4月中旬
- 11月末~12月末
この2つの時期が、個人投資家にとって儲けるチャンスになるということです。
また第4章では、様々なアノマリーについても検証されています。
よく言われる、「節分天井彼岸底」や「サマーラリー」は当てにならず、「鯉のぼり天井」や「掉尾の一振」は割と当たっているとのことです。
さらに、10年周期の西暦を使った、日経平均株価の年間平均上昇率の傾向についての調査結果も示されています。
それによると、1950年から2013年までの64年間で、西暦の末尾の年が「5」と「9」の年は一度もマイナスになっていないとのことでした。
5.バブル崩壊の予兆
第5章では、バブル崩壊の予兆として、米国の金利に注目するという見方が紹介されています。
それは、過去のバブルは、だいたい米国の金利と一緒に動いていて、バブルの盛り上がりとともに米国の金利水準も上昇するというものです。
また、金利がどんどん上がっているときはまだ大丈夫ですが、怖いのは利下げに転じたときだと言います。
そして、米国が金利を引き下げたときに、それを好感していったんは株価が上昇しますが、そこが逃げ時だと言うのです。
なお、これに関しては以前、以下の記事の最後に日経新聞から引用したデータを載せていましたので、よろしければご参照ください。
さて、ちょうど今月30~31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備理事会)による利下げが見込まれています。
もし今回もこの通りになるとすれば、今後の米国株には警戒が必要になってくるかもしれません。
6.総括
本書で紹介されている株主優待投資は、本書の出版当時と比べて現在では割りと広く知れ渡っているため、現在でも有効なのかは気になるところです。
同様にアノマリーの多くも現在では幅広く知れ渡ったことにより、有効性が低下していると言われていますので、その実践に当たっては慎重になる必要があるかもしれません
ただ、本書で説明されていた、1年間の日経平均株価における四半期ごとの値動きのパターンはとても参考になるものだと言えます。
もちろん、これもあくまで傾向ですので、毎年その通りになるというわけではありません。
ですが、相場の季節性を意識しておくことで、積極的に動くときとそうでないときのメリハリをつけることができるようになります。
季節性を加味してポジションの調整を行うことで、おそらく多くの個人投資家にとってパフォーマンスの向上に役立つのではないでしょうか。