1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 資産を10倍にする! 株の達人が教える『会社四季報』のトリセツ
- 著者:渡部 清二、エミン・ユルマズ、藤野 英人、加谷 珪一
- 出版日:2018/12/7
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略
まずは、本書の概要からです。
本書では、『会社四季報』の活用方法について、その愛読者でもある投資の達人4人によって解説されています。
なお、本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:『会社四季報』で10倍株100倍株を狙う方法 渡部清二
- 第2章:株式投資で得た利益で自分の好きなものを買おう エミン・ユルマズ
- 第3章:超成長株のヒントは身近なところに転がっている 藤野英人
- 第4章:長期に成長が見込める優良株を確実に狙う 加谷珪一
- 付録:『会社四季報』をさらに深く活用するための基礎知識
2.テンバガーの見つけ方
第1章では、渡部清二氏が、テンバガー(株価10倍が期待できる株)の見つけ方のポイントとして、次の5つを挙げています。
- 成長性が高い(4年間で売上高が2倍‥年20%以上の増収)
- 営業利益率が10%以上
- 上場5年以内
- オーナー企業
- ストーリーづくり
このうち、最後の「ストーリーづくり」というのは、なぜその企業がよいのかを見極めることだと言い、次のように書かれています。
その企業の商品・サービスは世の中を変える魅力があるのか? 社会にとってどんな貢献をしているのか? といった銘柄選びの方向性をしっかりと理由づけすること―それがストーリーづくりです。
3.創業社長とサラリーマン社長の違い
上記の5つのポイントのうち、4.の「オーナー企業」とも関連するのですが、第3章では藤野英人氏が、創業社長とサラリーマン社長の違いについて調査した結果が書かれています。
それは、2007年12月末~2018年4月末の期間における、全上場銘柄3657社を対象としたもので、創業者が社長を務めている138社とそれ以外の3519社を比較したものです。
それによると、創業社長の企業は株価が約7倍(710%上昇)になっていたのに対し、サラリーマン社長の場合は約3倍(319%)の上昇だったとのことです。
ただ、この調査結果にどれだけの意味があるのかは正直疑問です。
というのも、創業者が社長を務める企業というのは、社歴が浅く成長途上にある傾向が強いことから、成長性が高いのは、ある意味で当然のことだからです。
また、創業社長の企業の母数がそれ以外の企業と比較してかなり小さく、非常に高いパフォーマンスを示した一部の企業が全体の成績を押し上げている可能性もあります。
さらに、抽出した3519社が2016年12月末時点でのものであったことから、特に創業社長の企業で生存者バイアスがかかっているのではないかと思われるからです。
4.安全な割安株と成長株
第2章で、エミン・ユルマズ氏は、自身のストーリーで銘柄を選ぶと、結果的に「グロース株(成長株)」になることが多いが、一見地味なことをやっている安全な「バリュー株(割安株)」も大好きだと書いています。
そして、業績面での見方としては、以下のようなものを挙げています。
- 売上の前期、今期予想、来期予想の3期分を見る:売上高の変化率が最低5%あれば十分。
- 有利子負債:「現金同等物」が「有利子負債」より多いかどうか。
- 自己資本比率:理想は70%以上。
- 時価総額:1000億円前後の中型株や、100億円以下の銘柄。
また、PER(株価収益率)は高くてもあまり気にしない一方で、PBR(株価純資産倍率)については意識するとも書かれています。
5.長期に成長が見込める優良株
そして、第4章では、加谷珪一氏が投資で重視している、「数字(財務)」「市場(マーケット)」「シナリオ」の3つについて書かれています。
そのうち、財務面での指標としては、3~5期分の業績を見て、売上高が順調に伸びており、そのペース以上に営業利益が伸びていれば、有力な投資対象だと言います。
また、自己資本比率は、最低でも15%以上はあったほうがよいとも述べています。
他にも、同業他社と比較する際に、売上高を総資産で割って求める「総資産回転率」という指標を用いたり、売上高を従業員数で割った、1人当たりの売上高を比較したりといったことにも触れられています。
6.総括
本書では、『四季報』の読み方や活用方法について、基礎から応用までとても分かりやすく書かれています。
実際に四季報を活用して、非常に素晴らしい成績を上げている4人によって書かれたものであり、株式投資の初心者から上級者まで幅広く参考になるような内容だと思われます。
もちろん、網羅的な内容というわけではないため、これ一冊だけで十分というわけではありませんが、四季報を活用する上で、まず大事な要点をしっかりと把握するのに最適な一冊だと言えるでしょう。