相場のデータ・指標

「日経平均株価」のデータ分析(2018.12)(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、バフェット指数、騰落レシオ、信用評価損益率)

ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、バフェット指数、騰落レシオ、信用評価損益率といった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.PER・PBR

まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。

この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。

日経平均株価とPER13~17倍相当株価の推移を示した図(2018.12)

この図からも分かるように、12月21日大引け時点での日経平均株価はPER 13倍相当の株価水準を大きく下回り、平均PERは約11.3倍となっています。(参考までに、PER 11倍相当の株価は、約19720円となります。)

次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。

PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日経平均株価とPBR1~1.5倍相当株価の推移を示した図(2018.12)

日経平均株価は、PBR 1.1倍に相当する株価を下回っており、PBR 1.0倍に相当する株価である、19391円に接近していることが分かります。

2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ

次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。

海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

海外投資家の売買動向と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

この図から、2018年に入ってから海外投資家は売り越し傾向にあることが分かります。(2018年は、12月第2週までで、約5兆円の売り越しとなっています。)

また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。

ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。

この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

日銀ETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額との合計と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

この図から明らかなように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めていますが、直近では日経平均株価の急落により乖離が生じていることが分かります。

3.ドル建て日経平均株価

では、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価について見ていきます。

ドル建て日経平均株価を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

ドル建て日経平均株価の長期推移を示した図(2018.12)

この図から、2015年以降を取り出したのが、下図になります。

ドル建て日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

この図から、ドル建て日経平均株価は支持線となっていた200ドルのラインをはっきりと下回っているのが分かります。

今後は、この200ドルの水準が、ドル建て日経平均株価の抵抗線となってくることも考えられます。

4.NT倍率

また、海外投資家は一般に日経平均先物を売買することが多いため、NT倍率(=日経平均株価/TOPIX)についても見ていきます。

NT倍率と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

NT倍率と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

この図から、NT倍率はおよそ9~14の間で推移しており、その上限となる14に近づきつつあることが分かります。

NT倍率の上昇は、海外投資家の買い越しによって日経平均株価が押し上げられていることを示している可能性もあり、今後海外投資家の売り越しが膨らんでいくようだと、NT倍率の低下に伴って、日経平均株価が下落していくことも予想されます。

5.バフェット指数

続いて、バフェット指数を見ていきます。

バフェット指数=株式時価総額/名目GDP×100

バフェット指数は上記の式で求められますが、日本株では株式時価総額に「東証1部の株式時価総額」が一般に用いられますので、ここでもそのデータを使用しています。

そして、バフェット指数の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

バフェット指数と日経平均株価(2018.12)

バフェット指数では、100を超えてくると相場が過熱圏にあるとされますが、直近では100を大きく超えている状態であることが見て取れます。

6.騰落レシオ

さらに、25日騰落レシオについても見ていきます。

騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

騰落レシオと日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

騰落レシオは「だまし」の多い指標でもあるため、これだけでは何ともいえないところですが、直近では騰落レシオが日経平均株価の底値圏を示唆する水準となっているのは確かです。

7.信用評価損益率

最後に、信用評価損益率についてです。

以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。

信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

また、2013年1月以降で、2市場の信用評価損益率とともに、松井証券が公表している信用評価損益率を、日経平均株価と併せて示したのが以下の図です。

2市場・松井証券の信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図(2018.12)

一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。

そして、松井証券の信用評価損益率を見る限りでは、日経平均株価が底値圏にあると言えそうです。

8.総括

日経平均株価は、12月21日の大引け時点で20166円と急落しています。

この背景には、2019年のFRBの想定利上げ回数が2回と市場の予想を上回るものであったことや、米政府機関の一部閉鎖が長期化することへの懸念、米中貿易摩擦の激化、原油安によるオイルマネーの流出、欧州情勢など様々なものがあると思われます。

国内情勢を見ても、個人投資家のシェアが高い新興市場や、今年新規上場したメルカリやソフトバンクの株価低迷から、国内の個人投資家のマインドも冷え込んでいるはずです。

ただ、日経平均株価に関しては、平均PERや平均PBRという観点からすると割安な水準にあると言えます。

特に平均PBRに関しては、0.9倍~1.0倍がほぼ下限となっており、リーマンショックの際にも、その後2009年3月につけた0.81が最小値となっています。

そして、12月21日大引時点での平均BPS(一株当たり純資産)である約19391円を基にすると、平均PBR 1.0倍に相当する株価は19391円、PBR 0.9倍では約17452円、PBR 0.81倍では約15706円となります。

ですから、少なくとも日経平均株価が1万円台前半となるような暴落は考えづらく、当面は19000円台前半が下値メドとなるのではないでしょうか。

テクニカル的には、来年1月から2月に3段下げを見せて、その際に18000円割れとなるかもしれませんが、その後は4月頃まで再び上昇に転じていくのではないかと考えています。

 

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