ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近で、PERは14.5倍(12月19日時点)での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは12月19日大引けの時点で、1.29倍となっています。
なお、12月19日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が30902円、平均PBR 1.4倍相当が36052円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家の売買動向は、長らく売り越し傾向となっていましたが、直近では大きな買い越しへと転じていることが見て取れます。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から分かるように、日銀のETF買い入れは、2021年4月より大きくペースダウンしています。
実際に2023年には、3月13日と14日、10月4日にそれぞれ701億円ずつの買い入れが行われたのみとなっています。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
ドル建て日経平均株価では、長らく上値抵抗線となっていた225ドル近辺での推移となっており、21年2月に付けた280ドル台後半の高値まではまだ距離があることが分かります。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、直近の12月8日時点では、-9.71%となっています。
なお、信用評価損益率では信用買い建玉のみの損益を見ており、空売りの損益は反映されていません。
ですから、直近で日本株が大きく上昇しているにも関わらず、信用評価損益率がほぼ横ばいで改善を認めていないというのは、意外な結果だと言えます。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、12月20日時点で99.72と中立な位置にあります。
5.総括
日経平均株価は、11月に大きく上昇し、直近でも高値圏での推移となっています。
とはいえ、12月に入ってからは株価が調整する局面もあり、最高値更新を続ける米国株と比べると勢いに欠けます。
この背景には、12月18-19日に開かれた日銀の金融政策決定会合での、マイナス金利解除などへの警戒があったものと思われますが、結果は大方の予想通り、現行の金融緩和政策を維持するというものでした。
ただ、来年24年中には、YCC(イールドカーブ・コントロール:長短金利操作)の撤廃やマイナス金利解除がなされる可能性が高そうです。
一方、米国ではFRBによる利下げ観測が高まっていることなどを考えると、これまでのように一方的な円安方向への動きとはなりづらいように思われ、これ自体は日本株にとってはやや逆風であると言えます。
しかし、例えば以下のような、日本株に対する強気要因もあります。
- FRBがQT(量的引き締め)を継続しているのに対し、日銀は量的緩和を継続。
- 海外投資家による中国株から日本株への資金移動。
- 世界的に見ても、好調な日本企業の業績見通し。
もちろん、政治や紛争などの地政学的なリスクが世界的にも高まっていることを考えると、24年の日本株は辰巳天井とはいうものの、今年ほどの上昇は見込めないかもしれません。
それでも、日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新するのは時間の問題と言う識者が増えてきたように、株価が大きく調整する局面がもしあれば、そこは押し目買いのチャンスとなるのではないでしょうか。