相場のデータ・指標

【2022年6月】「東証REIT指数」の最新データ分析(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況)

ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.東証REIT指数とTOPIX

まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。

22年6月の東証REIT指数とTOPIXの推移を示した図

この図から、TOPIXと東証REIT指数とは強い相関を認めることが分かります。

2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り

次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。

まずは、NAV倍率の方からです。

22年6月の東証REIT指数とNAV倍率の推移を示した図

NAV倍率は、1.06倍となっており、どちらかと割安な水準であると言えます。

続いて、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)

22年6月の東証REIT指数と分配金利回りの推移を示した図

直近のJ-REIT分配金利回りは3.64%となっていますが、この利回りをリスクと比較して高いと見るかそうでないかは、意見が分かれそうです。

3.各種利回りの比較

さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。

22年6月の分配金利回り、配当利回り、長期金利の推移を比較した図

ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」などにより、ここ何年もほぼゼロ%近傍での推移となっています。

そういったこともあり、長期金利は比較対象として適切なものかどうか疑わしいため、ここではJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとを比較してみます。

このJ-REITの分配金利回りとプライム市場株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。

22年6月の分配金利回りと配当利回りのスプレッドの推移を示した図

この図から分かるように、スプレッドは低い水準となっており、東証REIT指数は株式と比較して割安であるとは言えなそうです。

4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数

なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。

そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。

具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。

まずは、「毎月決算型」の方からになります。

この「毎月決算型」を見るのは、分配金を毎月出す投信にとって、相対的に利回りの高いREITというのは、都合が良いためです。

22年6月の東証REIT指数と毎月決算型投信の推移を示した図

ここ最近では、「毎月決算型」投信の純資産総額はほぼ横ばいとなっていますが、東証REIT指数が上昇していたため、両者の乖離は拡大傾向となっています。

2017年末頃からは両者の乖離が大きくなっており、「毎月決算型」投信の純資産総額は、もはやあまり参考にならないのかもしれません。

続いて、「国内 不動産投信」になります。

22年6月の東証REIT指数と国内不動産投信の推移を示した図

対照的に、「国内 不動産投信」の純資産額の推移は、東証REIT指数とほぼ連動するような動きとなっていることが分かります。

「国内 不動産投信」の純資産額は、高い水準を維持していると言えます。

5.総括

東証REIT指数は、直近では方向感に乏しい展開となっています。

J-REITの予想分配金利回りは、22年5月末時点で平均して3.64%で、これは一見すると利回りが高いように感じるかもしれませんが、REITでは、収益の9割以上が分配金として還元されていることを忘れてはなりません。

一方で、同じ5月末時点でのプライム市場全銘柄の加重平均配当利回りは、2.33%でした。

日本企業の配当性向が3割強であることを加味すると、収益性という観点では、株式に軍配が上がることが分かります。

もちろん、単純に利回りだけで比較できるものではありませんが、それでも業績が堅調で、株価もまだまだ割安な企業が多いことを考えると、REITよりも株式の方に投資妙味があるのではないかと考えています。

また、J-REIT市場では、平均LTV(=有利子負債÷総資産)が44.6%と、平均して半分近くを有利子負債で賄っているため、REITは金利上昇リスクに弱いのではないかと懸念されるかもしれません。

しかし、これに関しては、2021年の上場企業全体の有利子負債依存度(=有利子負債÷総資産)の平均が85.8%、中央値が33.2%であるため、一概にREITの方が株式よりも金利上昇リスクに弱いとは言えません。

いずれにしても、日本においてもインフレ率が亢進し、金利上昇リスクが高まると考えるのであれば、有利子負債比率の低い銘柄を選んでおくのが無難かもしれません。

【2022年3月末時点】ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイの最新ポートフォリオ前のページ

【2022年6月】「WTI原油」のデータ分析(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API))次のページ

関連記事

  1. 相場のデータ・指標

    「ドル建て」や「東証1部時価総額」から見た日経平均株価

    この記事では、ドル建て日経平均株価という観点や、東証1部時価総額との比…

  2. 相場のデータ・指標

    レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最新ポートフォリオ(2021年6月末時点)

    この記事では、レイ・ダリオ氏率いるヘッジファンド、ブリッジウォーター・…

  3. 相場のデータ・指標

    「日経平均株価」のデータ分析(2019.12)(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入…

    この記事では、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資…

  4. 相場のデータ・指標

    製造業PMI(購買担当者景気指数)と株価指数(米国・日本・中国)

    この記事では、米国・日本・中国のそれぞれについて、製造業PMI(購買担…

  5. 相場のデータ・指標

    「ドル円相場」のデータ分析(2019.6)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)

    この記事では、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修…

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 読書録・書評

    【読書録・書評】『世界のエリート投資家は何を考えているのか:「黄金のポートフォリ…
  2. 相場のデータ・指標

    【2022年9月末時点】レイ・ダリオ氏率いるブリッジウォーター・アソシエイツの最…
  3. 読書録・書評

    【読書録・書評】『やさしい低位株投資』
  4. 読書録・書評

    【読書録・書評】『5万円からでも始められる! 黒字転換2倍株で勝つ投資術』
  5. 株式取引履歴

    【2024年1月】株式取引履歴(日本株・外国株)
PAGE TOP