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1.フィッシャー・インベストメンツ率いるケン・フィッシャー氏
今回は、ケン・フィッシャー(ケネス・ローレンス・フィッシャー)氏が率いる、フィッシャー・インベストメンツの2021年12月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
ケン・フィッシャーは、故フィリップ・A・フィッシャーを父に持ち、米国有数の著名投資家であると同時に、米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者でもあります。
なお、フィリップ・A・フィッシャーは、ウォーレン・バフェットが師と公言し、成長株投資の礎を築いた伝説的投資家です。
そして、ケン・フィッシャーは、フォーブス誌に「ポートフォリオ・ストラテジー」というコラムを1984年から長期連載しており、投資に関する著書も数多くあります。
中でも、『Super Stocks』(邦訳:『ケン・フィッシャーのPSR株分析』)では、PSRの有効性をケン・フィッシャーが初めて提唱したと言えます。
ただ、このPSRに関しては、その後の『The Only Three Questions That Count』(邦訳:『投資家が大切にしたいたった3つの疑問』)の中で、広く知れ渡ったことによりPSRは機能しなくなったと述べています。
また、同書には、他人には知ることのできない優位性を継続的に発見し、投資判断を常に改善・修正していくための方法が書かれており、その深い洞察力には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、ケン・フィッシャーに限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、2月中旬頃までには、著名投資家たちの21年12月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.フィッシャー・インベストメンツのポートフォリオ
それでは早速、フィッシャー・インベストメンツの2021年12月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位24銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2021年9月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
これらの図からは、両者の違いが分かりにくいのですが、上位24銘柄の中でポートフォリオの組み入れ比率に10%以上の変動があった銘柄をピックアップしてみると、次の6銘柄となりました。
- AMZN(アマゾン):+12.18%
- V(ビザ):-15.47%
- NFLX(ネットフリックス):+30.41%
- FB(メタ・プラットフォームズ):+26.27%
- AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ):+26.47%
- PYPL(ペイパル):+20.65%
これら銘柄の、過去3ヵ月の株価騰落率を見ると、NFLXは40.5%、FBは33.0%、AMDは22.5%、PYPLは42.9%と、特に大きな下落率となっています。
4.ポートフォリオへのインパクトが大きかった銘柄と総括
さらに、21年9月から12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が大きかった銘柄のうち、+0.30%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) |
AMZN | Amazon.com Inc | 0.44 |
NFLX | Netflix Inc | 0.43 |
INTU | Intuit Inc | 0.4 |
FB | Meta Platforms Inc | 0.38 |
UBER | Uber Technologies Inc | 0.36 |
AMD | Advanced Micro Devices Inc | 0.34 |
AAPL | Apple Inc | 0.31 |
この中で特筆すべきは、UBER(ウーバー・テクノロジーズ)が新規買いであったということでしょう。
なお、新規買い銘柄のうち、ポートフォリオ全体に占める増加率が特に大きかったのは、次の3銘柄になります。
- UBER(ウーバー・テクノロジーズ):+0.36%
- DOCU(ドキュサイン):+0.26%
- ZM(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ):+0.23%
これら3銘柄の過去3ヵ月の株価騰落率は、それぞれ-18.5%、-51.9%、-43.0%といずれも大きく下落しています。
続いて、21年9月から12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が大きかった銘柄のうち、-0.20%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) |
WMT | Walmart Inc | -0.69 |
DIS | The Walt Disney Co | -0.63 |
INTC | Intel Corp | -0.58 |
V | Visa Inc | -0.39 |
UNH | UnitedHealth Group Inc | -0.38 |
SBUX | Starbucks Corp | -0.35 |
CSCO | Cisco Systems Inc | -0.34 |
以上のように、ケン・フィッシャーのポートフォリオ・マネジメントからは、軟調な値動きとなっているハイテク株に対して依然として強気であることが伝わってきます。
ただ、年が明けてから、インフレが予想以上の加速を見せたこともあり、FRB(米連邦準備制度理事会)による年内の利上げ予想回数も増加しています。
金利上昇は、将来の成長を大きく織り込んだ成長株にとっては特に逆風となるため、米国のハイテク株も調整の値動きとなっています。
そして、そうしたハイテク株をポートフォリオ上位に多く組み入れている、フィッシャー・インベストメンツの今後のポートフォリオには注目していきたいところです。
あくまでインフレは一時的なものと見ているのか、米10年債利回りと2年債利回りのスプレッドが縮小していることから、FRBの利上げ回数はそこまで多くはならないと見ている、ということなのかもしれません。