相場のデータ・指標

【2021年10月】「日経平均株価」のデータ分析(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオ)

ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.PER・PBR

まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。

この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。

21年10月までの日経平均株価とPER13~17倍相当株価の推移を示した図

この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。

そうした状況下では、平均PERが指標として機能していませんでしたが、直近ではそうした状況も落ち着いてきており、日経平均株価はPER 14倍程度での推移となっています。

次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。

PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

21年10月までの日経平均株価とPBR1~1.5倍相当株価の推移を示した図

平均PBRは10月1日大引けの時点で、1.28倍での推移となっています。

なお、10月1日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が26973円、平均PBR 1.3倍相当が29221円となっています。

2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ

次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。

海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

21年10月までの海外投資家の売買動向と日経平均株価の推移を示した図

この図からも分かるように、2020年10月頃より続いていた、海外投資家の買い越し傾向は足元で一服しており、2021年4月以降はほぼ横ばいとなっています。

また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。

ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。

この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

21年10月までの日銀ETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示した図

この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より、大きくペースダウンしていることが分かります。

ちなみに、4月以降における日銀のETF買い入れは、4月21日の701億円、6月21日の701億円、9月29日の701億円、10月1日の701億円の4回だけでした。

さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

21年10月までの日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額との合計と日経平均株価の推移を示した図

この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。

3.NT倍率

また、NT倍率も見てみることにします。

21年10月までのNT倍率と日経平均株価の推移を示した図

この図からは直近で、日経平均株価とNT倍率との乖離が拡大していることが見て取れます。

4.信用評価損益率

続いて、信用評価損益率を見ていきます。

以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。

21年10月までの信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図

一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。

信用評価損益率は、9月24日時点では-7.7%となっており、決して底値圏といえるような水準ではありませんが、この後のデータでどこまで低下しているかを確認したいところです。

5.騰落レシオ

最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。

騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

21年10月までの騰落レシオと日経平均株価の推移を示した図

後講釈にはなりますが、騰落レシオは9月28日には、145.7にまで上昇しており、短期的な相場の過熱感を示していたことになります。

6.総括

日経平均株価は、9月中旬より調整色を強め、10月1日には大幅下落となっていました。

この背景には、中国大手不動産の信用不安問題や、エネルギー価格の高騰などインフレ懸念とそれに伴う米国の早期利上げ観測の台頭、米債務上限問題といったことがあるかと思われます。

当面は、こうした問題がくすぶり続けると思われ、株式市場にとっては逆風となるでしょう。

また、9月29日は岸田氏が新総裁に選ばれましたが、同氏は財政健全化や、格差是正として富裕層に対する金融所得課税の強化を打ち出しており、これらは海外投資家にとって日本株を嫌気する要因となりそうです。

そして、岸田首相は衆院選を19日公示、31日投開票と短期決戦で実施することを決めており、それまでは海外投資家も日本株に対しては様子見となる可能性が高く、短期的には株価もその結果次第となるのではないでしょうか。

ただ、直近の業績や業績見通しの良い日本企業は多く、年内や年度末までには再び株価上昇局面が見られるのではないかと考えています。

とはいえ、中国経済の先行きが不透明なことも確かであり、中国依存度の高い銘柄は避けた方が無難かもしれません。

【2021年9月】「ドル円相場」のデータ分析(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)前のページ

【2021年10月】「米国株(S&P 500)」のデータ分析(PER・CAPEレシオ・ブルベア指数・長短金利差)次のページ

関連記事

  1. 相場のデータ・指標

    「米国長期金利」のデータ分析(2019.9)(日本と中国の米国債保有額・FRB保有債券残高)

    この記事では、直近の「米国長期金利」について、日本と中国の米国債保有額…

  2. 各種金融商品・制度

    「金(ゴールド)価格」を需要と供給、NY金先物のCFTC建玉明細から見る!

    この記事では、金価格について、金(ゴールド)現物の需要と供給、NY金先…

  3. 相場のデータ・指標

    購買力平価説から見る「ドル円相場」

    この記事では、相対的購買力平価説の観点からドル円相場について書いていま…

  4. 相場のデータ・指標

    【2022年4月】「米国株(S&P 500)」のデータ分析(PER・CAPEレシオ・ブルベ…

    この記事では、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CA…

  5. 相場のデータ・指標

    2種の「ブルベア指数」。一方は無用だが、もう一方は有用か!?

    この記事では、2種類のブルベア指数について、その比率などを米国の代表的…

  6. 相場のデータ・指標

    「WTI原油」のデータ分析(2019.12)(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフ…

    この記事では、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポ…

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 相場のデータ・指標

    【2023年3月】「東証REIT指数」の最新データ分析(NAV倍率・分配金利回り…
  2. 投資戦略・手法・市場展望

    原油相場を取り巻く世界情勢
  3. 読書録・書評

    【読書録・書評】『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社…
  4. 株式取引履歴

    【2024年3月】株式取引履歴(日本株・外国株)
  5. 相場のデータ・指標

    太陽黒点数が減少すると、日経平均株価も下がるのか!?
PAGE TOP