読書録・書評

【読書録・書評】『金持ち父さんのパワー投資術 お金を加速させて金持ちになる』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.本書の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、前回、前々回とレビューしてきた、『金持ち父さんの投資ガイド 入門編』および『金持ち父さんの投資ガイド 上級編』と、内容的にほとんど変わらないものとなっています。

前著と同じことを表現や言い方を変えて述べているに過ぎないのですが、一部には目新しい内容があったのも事実です。

ですので、ここではそういった点を中心にレビューしていきたいと思います。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • はじめに:どうしたら十年で一万ドルを千倍にできるか?
  • 第一部:何に投資したらいいですか?
    • 第一章:セールスマンに聞く
    • 第二章:牧場主と酪農家に聞く
    • 第三章:銀行員に聞く
    • 第四章:保険代理店に聞く
    • 第五章:税務署に聞く
    • 第六章:ジャーナリストに聞く
    • 第七章:ギャンブラーに聞く
    • 第八章:ニュートンに聞く
    • 第九章:「時の翁」に聞く
  • 第二部:投資家に聞く
    • 第十章:パワー投資家になれない人がいる理由
    • 第十一章:パワー投資の力
    • 第十二章:投資ではなく賭けをしている投資家
    • 第十三章:すばらしい投資を見つける方法
    • 第十四章:すばらしい投資家になるには
  • おわりに:結論―勝つか負けるか

2.3つの資産と6つの力を統合する

『金持ち父さん』のシリーズでは、資産には、ビジネス不動産紙の資産の3つの種類があると再三にわたり述べられています。

本書では、これら3種類の資産に、「銀行のお金」、「税法」、「会社組織」の3つを合わせた6つの力を統合して加速することができれば、超高率のリターンを達成することができると書かれています。

ただ、例によって、抽象的な内容であることは変わりなく、この内容を実践するには、読者一人ひとりが自分の頭で考えて、学び、実践し、失敗を繰り返しながら進んでいく必要があります。

もちろん、人によって、国や法律、職業、資産状況などの背景が全く異なるため、抽象的な内容となってしまうのはやむを得ないのでしょうが、それにしても歯切れの悪い言い回しが多いと感じました。

そして、本書の内容を要約するとしたら、以下の一文に集約されるでしょう。

金持ち父さんによる「金持ちになるためのプラン」は、まずビジネスを起こし、次に不動産に投資し、それから紙の資産に投資するというやり方だった。

3.不動産を守るための戦略

それらの資産のうち、不動産については、以下のようなことが書かれています。

法人形態の選択は、金持ちが自分たちの資産である不動産を守るために何代にもわたって使ってきた裏技と戦略を理解する上でも、とても重要だ。不動産の場合、一つの物件が危険にさらされても他の物件に影響が及ばないように、物件ごとに別々の法人で所有するのがいい場合が多い。

不動産を所有するのによく使われる法人の形態は、有限責任会社やリミテッド・パートナーシップだ。あなたが住んでいる地域の法律に基づいて選ぶこともまた重要なので、弁護士や税務アドバイザーなどの専門家に相談することが大事だ。

この「物件ごとに別々の法人で所有する」というのは、リスクヘッジという観点でなるほどと思えるポイントでした。

4.20-10-5の投資のサイクル

また、本書の内容で目新しかったのは、「20-10-5の投資のサイクル」です。

これと似たようなサイクルは、投資の世界ではいくつか言われたりもしますが、これについては、以下のように説明されています。

株式市場は20年間好調が続き、そのあと暴落があって、次の10年間は石油、金、銀、不動産、ガス、大豆、豚肉といった商品の価値が上がる。

そして、最後の5は、5年毎に何らかの悲劇、例えば1987年の株式市場の暴落や2001年9月11日の同時テロのような出来事が起こることを意味している。

実際に、1973年に株式市場は下降を始めて、この傾向がおよそ10年続き、1983年に商品市場が暴落した直後、株式市場は上向きに変わり、2000年には最高値を記録したということも書かれています。

一方で、このサイクルに関して、次のようにも書かれています。

私はこのサイクルに自分の時計を合わせ、それに従って行動するつもりはないが、サイクルの存在を知っていることは投資戦略上、大いに役立っている。

なぜなら、市場が変化することを常に思い出させてくれるからだ。このサイクルはまた、異なる市場で投資のチャンスを探すことの大切さも思い出させてくれる。

すばらしい投資を見つける一番いい方法の一つは、現在嫌われていても、すぐに人気が戻ると思われる投資対象を探すことだ。

こういったサイクルに関する考え方というのは、資産運用を行っていく上で、非常に重要なものだと言えるでしょう。

5.金融商品の宣伝文句

こういったサイクルを意識せず、「株式市場は平均して9%の割合で上昇している。それは歴史を見ればわかる」と言うのは、金融商品のセールスマンによる売り込み口上だとも述べられています。

こういった売り込み口上は、洗練されていない投資家たちをおびき寄せるためのもので、「平均をあてにして投資するのは平均的な投資家だけです」と言うのです。

さらに踏み込んで、次のようなことも書かれています。

ファイナンシャル・プランナーたちは投資やそのほかの金融商品(保険など)を平均的な投資家に売って手数料を取る。

私たちは彼らに適切な質問をする方法を学ぶ必要がある。適切な質問とは、例えば、この投資信託の手数料はいくらか? この金融商品を売ることで、どれくらいの歩合手数料をもらえるのか? といったことだ。

6.未来を占う水晶玉

本書では、未来を占うには人口統計を見ればいいといったことにも触れられています。

それは、アメリカのベビーブーマー世代のような出生数の多い世代が引退を始める時期には、株式市場など多くの市場が影響を受けるだろうなどといったことです。

また、不動産に関しても、次のように触れられています。

私は、アメリカの人口が増加の一途をたどるという人口統計上のトレンドを信じているので、不動産投資は続けていくつもりだ。

出生率が下がっている日本で不動産に投資するのはあまり気が進まない。不動産の資産価値は、借りたいと思う人が大勢いる場合しか上がらない。

7.総括

これまで、『金持ち父さん』シリーズについて、本書を含めて5冊をレビューしてきましたが、基本的にはどれを読んでも主旨は大して変わりません。

ただ、もしこれから『金持ち父さんの投資ガイド 入門編』および『金持ち父さんの投資ガイド 上級編』を読むというのであれば、代わりに本書を読んだ方が良いと言えるでしょう。

そして、既に本書以外の『金持ち父さんシリーズ』の書籍を読んだことがある人にとっては、僭越ながら本書に関してはこのレビューを読むだけで十分かもしれません。

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