相場のデータ・指標

「ドル円相場」のデータ分析(2020.9)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)

ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.日米10年国債利回りとドル円相場

まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。

米10年債利回りとドル円相場の推移を示した図(2020.9)

この図から、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっていることが分かります。

また、2018年末から米長期金利が急速に低下していたにもかかわらず、ドル円相場の方は、概ね横ばい(ボックス圏)での推移となっていることが分かります。

そういった意味では、米長期金利だけを見た場合には、ドル安円高の余地があると言えそうです。

次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。

日米10年国債利回り差とドル円相場の推移を示した図(2020.9)

こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。

しかし直近では、長期金利差が急激に縮小したため、ドル円相場との乖離も拡大しています。

2.購買力平価とドル円相場

次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。

なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。

日米の各種購買力平価とドル円相場の推移を示した図(2020.9)

この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていることが分かります。

つまり、ドル円相場を購買力平価という観点から見た場合には、ドル安円高余地が大きいように思われます。

3.修正ソロスチャートとドル円相場

最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。

修正ソロスチャートとドル円相場の推移を示した図(2020.9)

この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との相関性が高いことと同時に、両者の乖離が縮小傾向にあることが分かります。

4.総括

ここまで見てきたように、日米10年国債利回りや、購買力平価では、依然として円高余地があるように見えます。

ちなみに、ここ1ヵ月ほどのドル円相場は、概ね105~107円のボックス圏での推移となっています。

また、9月15~16日には、11月初めの米大統領選前で最後となるFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されています。

経済の方は予断を許さないものの、FRB(米連邦準備制度理事会)などの金融政策により急場はしのいだように思われるため、今回のFOMCでは大きな政策変更は行われないものと予想されます。

とはいえ、コロナ禍の終息が早期に見込めない現状では、米国をはじめとした主要国の金融政策が当面の間、少なくとも維持されることは間違いないでしょう。

そうなるとドル円相場は、現在0.7%近くの米長期金利の行方次第、つまり米国の景気見通しにかかってくることになりそうです。

そして、米大統領選挙があり、各企業の第2四半期(7~9月)決算が集中する11月初めまでは、ドル円相場も様子見となり、動意に乏しい展開となるのではないでしょうか。

「WTI原油」のデータ分析(2020.9)(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API))前のページ

「日経平均株価」のデータ分析(2020.9)(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均株価、信用評価損益率、騰落レシオ)次のページ

関連記事

  1. 相場のデータ・指標

    投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)を読み解く! その弐

    この記事では、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)のデータから、自…

  2. 相場のデータ・指標

    景気動向と日経平均株価②

    この記事では、景気動向を測る主な指標のうち、特に景気動向指数(CIとD…

  3. 相場のデータ・指標

    「東証REIT指数」のデータ分析(H30年6月)(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式…

    この記事では、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利…

  4. 相場のデータ・指標

    NT倍率の2年ぶり低水準をどう見る?

    この記事では、過去30年近くにわたるNT倍率と日経平均株価の推移を検証…

  5. 相場のデータ・指標

    FRBの量的緩和政策(QE)と「米長期金利」

    この記事では、長期金利の決定要因および、FRBによる量的緩和政策(QE…

  6. 相場のデータ・指標

    「米国株(S&P 500)」のデータ分析(2019.12)(PER・CAPEレシオ・ブルベ…

    この記事では、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CA…

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 株式取引履歴

    【2023年9月】株式取引履歴(日本株・外国株)
  2. 読書録・書評

    【読書録・書評】『株、FX、世界経済がマンガでわかる!新女子高生株塾』
  3. 相場のデータ・指標

    「日経平均株価」のデータ分析(2021.3)(PER・PBR、海外投資家売買動向…
  4. 相場のデータ・指標

    「グローバル・エクイティ・モメンタム(GEM)」なるデュアルモメンタム(絶対モメ…
  5. 相場のデータ・指標

    「ドル円相場」のデータ分析(2020.9)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソ…
PAGE TOP