1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 私は株で200万ドル儲けた (ウィザード・ブックシリーズ)
- 著者:ニコラス・ダーバス
- 出版日:2002/12/28
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略
まずは、本書の概要からです。
本書では、ボックス理論という独自の投資戦略を編み出したニコラス・ダーバス氏によって、わずか18ヵ月で200万ドルを稼ぐに至った過程が書かれています。
本書の章立ては、次のようになっています。
- 第1部:ギャンブラー
- 第1章:カナダ株の時代
- 第2部:ファンダメンタリスト
- 第2章:ウォール街に乗り出す
- 第3章:最初の危機
- 第3部:テクニカル分析
- 第4章:ボックス理論の開発
- 第5章:地球を駆けめぐる電報
- 第4部:テクノ・ファンダメンタリスト
- 第6章:小型の弱気相場
- 第7章:効力を発揮し始めた投資理論
- 第8章:最初の50万ドル
- 第9章:二度目の危機
- 第10章:200万ドル
- 『タイム』とのインタビュー
- 付録
- 電報
- チャート
- 株式索引
- 質疑応答
なお、本書には以下のように『新装版 (2017/1/21)』と『文庫版 (2008/4/11)』も出版されています。
私が読んだのは『原版』と『文庫版』で、『新装版』は読んでいないのですが、これらの大きな違いは、『文庫版』には、付録の「株式索引」と「質疑応答」が載せられていないということです。
これについては、最後の総括で改めて触れていくことにします。
2.従うべきルール
第2章では、著者が株式取引の経験を積んでいくうちに、従うべきルールの輪郭が徐々に見え始めたとのことで、次のようなものが挙げられます。
- 投資顧問の言うことを聞いてはいけない。彼らは絶対的に信頼できる存在ではないからだ。これはカナダでもウォール街でも変わらない。
- ブローカーのアドバイスには用心しなければならない。彼らも間違えることがある。
- ウォール街の格言は、どんなに古くからのものでも、またどんなにありがたられているものであっても、無視すべきだ。
- 「店頭株」に手を出してはいけない。取引するのは、売りたいときには必ず買い手が見つかる上場株だけにする。
- どんなに根拠があるように見えても、うわさに耳を傾けてはいけない。
- ギャンブル的手法よりも、ファンダメンタルズに目を向けるやり方のほうがうまくいった。ファンダメンタルズの勉強をしなければならない。
- いちどきに10種類の銘柄を短期間で売買するよりも、むしろ値上がりしている1銘柄を長期間保有すべきだ。
3.ボックス理論
第4章では、ボックス理論について書かれています。
株価というのはほぼ常に高値と安値の間を行き来していて、この上下変動を取り囲む領域(フレーム)を「ボックス」と定義しています。
株価が一番上のボックス圏内に入った後、そのボックス内で株価が上下に勢いよく変動していれば、買いの検討対象となり得るとしています。
そして、次の一段と高いボックスを目指し、上へ突き抜ける動きを絶えず待つのです。
その間、株価がボックス内にある限りは、つまり下方のボックスへと落ち込まない限りは、それが長期に及んでも気にしないと言います。
そのため、ボックス理論での基本的な戦略は、買いは自動的なストップ・オーダー(仕掛けの逆指値注文)、売りはストップロス・オーダー(手仕舞いの逆指値注文)となります。
4.個別銘柄と平均株価
第5章では、個別銘柄と平均株価との関係性について触れられています。
個別銘柄と平均株価との間にはある程度の関係があるものの、それを正確に測ることはできません。
それでも平均株価に注目する目的というのは、マーケット全体が強いか弱いかを判断するためです。
実際、保有株の説明し難い動きは、マーケット全般が荒れ模様になったときと合致することが多いと述べられています。
つまり、弱気相場や強気相場といった主要な周期は、通常たいていの株式に影響を与えるということなのです。
5.株式と収益力
第6章では、著者がテクノ・ファンダメンタリスト理論に到達するに至った経緯が書かれています。
これは、テクニカル分析の要素が強いボックス理論に、ファンダメンタル分析を組み合わせるということです。
そのきっかけは、小型の弱気相場が収まりつつある頃、いくつかの下落傾向に逆らい出した銘柄を調べてみたことだと言います。
すると、それらの銘柄の大半は、収益が急速に上昇傾向を示していたのです。
そのため、銘柄の選択はテクニカルな動きに基づくものの、その銘柄を買うのは、収益性の改善が認められる場合に限ることにしたと述べられています。
また、著者が注目するのは未来との結びつきが強い株式であり、革新的な新商品を持っているために将来は収益性の飛躍的改善が期待できる企業の株式であるとのことです。
マーケットに現れる兆候を注意深く監視して、流行の先端を行くような株や、人々の未来に対する想像力をかき立てることによって値上がりしそうな株を見つけることが重要だと言うのです。
6.ボックス理論の売買戦略
具体的な売買戦略については、その多くが付録の特に「質疑応答」で書かれています。
ここでは最後に、それらの要点を箇条書きでまとめておきたいと思います。
- 私の手法はある業界とその業界グループの中でも特に最強の銘柄の長期的な成長性を基礎にしている。
- その年の高値が少なくとも安値の2倍以上の株式を選ぶ。そのほかの株式は「くず」として無視してよい。
- その株式の動きについての「感覚」をつかむためには、それを実際に保有してみなければならないため、通常は少量の試し玉から入る。
- 試し玉のあと、株価が期待どおり堅実なパターンで動きを続けたときには、その銘柄を追加で買い付ける。
- 買い付けのタイミングとしては、厳密な意味で「史上最高値」になるまで待つ。
- 注文は、株価がボックスの上限を破った(いかにわずかであろうとも)ときに“間髪を入れず”行うべきものである。
- 高値を突破する前に買いのストップ・オーダーを出す。指値は高値の1/8ポイント上になる。
- ストップロスの地点は、破られたボックスの上限価格から1/8ポイント下である。このストップロスの指示は、その株式を買い付けた「直後」にブローカーに出す。
- 株価が新たに上のボックスに突入したときには、ストップロス・オーダーは以前のままの水準にしておいて、株価が新しいボックスの上限および下限を構築するのを待つ。新しいボックスの下限がはっきりと定まれば、以前のストップロス・オーダーを新しいボックスの下限の1/8ポイント下まで引き上げる。
7.総括
本書の内容は、1950年代の出来事と古いものではありますが、未だに多くの投資家から高い評価を受けるものとなっています。
本書はストーリー形式で書かれているのですが、著者が辿ってきた経緯というのは、多くの投資家が犯してしまいがちな数々の過ちに対して、示唆に富むものだと言えます。
また、ボックス理論という投資戦略に関しては、とてもシンプルなものですが、現在成功を収めている成長株投資家たちの投資戦略に共通する、本質的なもののように感じました。
そして、ここで書いてきたように、ボックス理論の売買戦略に関しての具体的な内容は、付録の「質疑応答」に書かれています。
ただ、冒頭でも触れたように、本書には「原版」以外に「新装版」と「文庫版」もあり、「文庫版」には付録の「質疑応答」が載せられていないのです。
ですから、出来れば「原版」もしくは「新装版」を読みたいところですが、「文庫版」には「Kindle Unlimited」だと無料で読むことができるというメリットがあります。
一方、本書の続編として『金融市場はカジノ ——ボックス理論の神髄と相場で勝つ方法』、『「株で200万ドル儲けたボックス理論」の原理原則』という書籍も出版されています。(リンク先は当ブログのレビュー記事になります。)
こういったことを踏まえると、本書の続編を読むつもりであれば「文庫版」を選択し、そうでなければ「原版」か「新装版」を読むのが良いのではないかと思われます。
- 私は株で200万ドル儲けた (ウィザード・ブックシリーズ)
- 著者:ニコラス・ダーバス
- 出版日:2002/12/28
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略