ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、バフェット指数、騰落レシオ、信用評価損益率といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
この図から日経平均株価は、昨年末から依然としてPER 13倍相当の株価水準を下回って推移していることが分かります。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
一方の平均PBRは、昨年の12月25日に0.99倍で底を打ち、直近ではPBR 1.1倍相当での株価水準となっています。
なお、9月20日時点での、PBR 1.0倍相当の日経平均株価は20072円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家による売り越し傾向が2018年から継続していることが分かります。(なお、2019年の累計額は9月第2週までで、約2.4兆円の売り越しとなっています。)
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めていますが、直近ではやや乖離が生じていることが見て取れます。
ここで見ている海外投資家の売買動向は現物株についてのものですので、海外投資家が日経平均の先物に関しても売り越し傾向となっていることが要因ではないかと思われます。
3.ドル建て日経平均株価
そして、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価についても見ていきます。
ドル建て日経平均株価を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、2015年以降を取り出したのが、下図になります。
直近の日経平均株価は、ドル建て日経平均で200ドルの水準を超えてきていることが分かります。
このドル建て日経平均は、2018年にあったように一時的にオーバーシュートすることはあっても、200ドルが上値として意識される可能性が高そうです。
となると、日経平均株価はドル円相場の動向にも影響を受け、円高ドル安が進行するようだと、日経平均株価も軟調な展開となりやすいでしょう。
4.NT倍率
また、海外投資家は一般に日経平均先物を売買することが多いため、NT倍率(=日経平均株価/TOPIX)についても見ていきます。
NT倍率と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日経平均株価はNT倍率を中心として、上下に乖離するような動きを見せていますが、直近では両者の乖離がほとんど見られないことが分かります。
5.バフェット指数
続いて、バフェット指数を見ていきます。
バフェット指数=株式時価総額/名目GDP×100
バフェット指数は上記の式で求められますが、日本株では株式時価総額に「東証1部の株式時価総額」が一般に用いられますので、ここでもそのデータを使用しています。
そして、バフェット指数の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
バフェット指数では、100を超えていると相場が過熱圏にあるとされていますが、この図からは依然として過熱圏の水準にあることが分かります。
今後、実施されるであろう東証1部の再編では、時価総額が基準の一つとなりそうですが、これはつまり、本来であれば1部上場基準を満たさないような企業が東証1部に数多く含まれているということを示しています。
そうなると、ここで用いている「東証1部の株式時価総額」が減少することは間違いなく、バフェット指数で言うところの過熱圏にあるような状況では既にないのかもしれません。
6.騰落レシオ
さらに、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは「だまし」の多い指標でもあるため、これだけでは何ともいえないところですが、直近の騰落レシオは、日経平均株価が目先の天井圏であることを示唆しています。
7.信用評価損益率
最後に、信用評価損益率についてです。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされますが、この図からは、日経平均株価が目先の底値圏にあると言えそうです。
8.総括
ここまで見てきたことから、当面の日経平均株価の下値は平均PBR 1.0倍相当の約20100円で、上値に関してはドル建て日経平均などからすると上昇余地が乏しいように思われます。
ここ最近では、日経平均株価が上昇しており、なかでも大型バリュー株が上昇しています。
そのきっかけとなったのは、米長期金利の急反発ですが、これは低金利環境がグロース株にとって追い風であったことも関係しています。
また、長期金利は一般に景気・経済の見通しを反映していますが、米中通商交渉の再開が報じられたことにより、米長期金利が上昇していました。
しかし、米中貿易摩擦は米中のハイテク産業を巡る覇権争いという面が強く、事態が再び悪化することが目に見えています。
中国では、10月1日の国慶節(建国記念日)に建国70周年の記念行事があり、それに向けた一時休戦といった形なのでしょう。
とはいえ、来年2020年11月には米大統領選挙も控えており、また先進国の中央銀行も再び緩和方向へと舵を切っています。
そういったことを踏まえると、世界的に景気減速傾向が徐々に明らかとなりつつありますが、当面の間は株式市場が底堅い展開を示すのではないかと考えています。