ここでは、直近(2019年3月)の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図からは、2018年後半にかけて大幅な売り越し傾向となっていた投機筋のネットポジションが、小康状態となっていることが分かります。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
これらの図から、特に直近の推移に関しては、WTI原油先物価格とBEIとに強い相関性があることが見て取れます。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの図からは、EIAとAPIの在庫統計がともに、2019年に入ってから微増傾向を示しているにもかかわらず、WTI原油先物価格は上昇傾向となっていることが分かります。
また、在庫統計は、原油先物価格の先行指標となるような傾向も見て取れるため、在庫統計が2019年に入ってから微増傾向となっている後を追って、原油価格が今後、反落していく可能性もありそうです。
4.総括
WTI原油先物価格は、2018年10月初めに75ドル強まで上昇し、その後12月末にかけて40ドル台前半まで下落していました。
そこから、直近では60ドル弱と半値戻しを達成したことになります。
前回の2018年12月に原油価格の上昇を予測してはいましたが、正直、ここまで早いペースで戻してくるとは思っていませんでした。
石油輸出国機構(OPEC)やロシアの協調減産があるとはいえ、それ以上にアメリカのシェールオイル増産や、米中貿易摩擦による世界的な景気減速(→原油需要の低下)の影響が大きいと思われたためです。
そして、今後の原油価格は、世界的な景気の先行きにかかっていると言えるでしょう。
また、テクニカル的な観点からすると、現在の60ドル前後というのは、2014年央の100ドル超から20ドル台にまで下落していく過程での戻り高値の水準に当たります。
そのため現在は、この水準を超えて再び70ドルを目指していくのか、この水準に跳ね返されて反落していくのかの分かれ目にあると思われます。
個人的には、米中貿易摩擦が長引きそうなことから、どちらかとうと後者の展開を予測しています。
特に、変動幅を縮小しながら揉み合う「三角持ち合い」のような展開となるのではないかと考えています。
さらに、その三角持ち合いの後に、上放れとなるか下放れとなるかに関しては、前回(以下の記事)の総括に書いたような理由からも、上放れとなっていくのではないでしょうか。