読書録・書評

【読書録・書評】『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.本書の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、数多くの最新の統計データを用いて、世界の本当の姿や基本的な事実、正しい見方について書かれています。

こういったことに関して、大学教授や科学者、ジャーナリストなども含め、私たちの多くがその思い込みによって、世界について間違った見方をしていると言うのです。

本書は投資に関する内容ではありませんが、ここでは、主に投資に関連してくる部分についてレビューしていきたいと思います。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章:分断本能
  • 第2章:ネガティブ本能
  • 第3章:直線本能
  • 第4章:恐怖本能
  • 第5章:過大視本能
  • 第6章:パターン化本能
  • 第7章:宿命本能
  • 第8章:単純化本能
  • 第9章:犯人捜し本能
  • 第10章:焦り本能
  • 第11章:ファクトフルネスを実践しよう

2.極度の貧困層の減少

第1章では、世界の人口のうち、「極度の貧困層」の割合がここ20年で半減したとのことで、世界が分断されていたのは過去の話だと書かれています。

この「極度の貧困層」に関しては、所得レベル(一人当たりの1日当たりの所得)に応じて、以下の4つのグループに分類されています。

  • レベル1:2ドル未満。世界におよそ10億人。
  • レベル2:2ドル以上8ドル未満。世界におよそ30億人。
  • レベル3:8ドル以上32ドル未満。世界におよそ20億人。
  • レベル4:32ドル以上。世界におよそ10億人。

このうち、レベル1が「極度の貧困層」ということになります。

そして現在では、レベル1(低所得国)の人口が世界の9%と、20年前の29%から大きく減少し、レベル2とレベル3を合わせた中所得国の人口が世界の75%で最も多いとのことです。

そういったことから、世界のほとんどの人は中間にいて、「先進国」と「途上国」、「豊かな国」と「貧しい国」といったような分断はもはや存在しないと言うのです。

3.相対的貧困率も重要では?

確かに、世界というマクロな視点からすれば、本書にあるように「世界の大半は、少しずつだが良い暮らしをし始めている」のでしょう。

ですが、現在の日本のように経済が成熟しており、少子高齢化や人口減少が進行していくような国では、もはや経済の大きな成長は見込めません。

そればかりか、特殊技能を持たず、付加価値の低い人材は、外国人の安い労働力や、AI・ロボットに置き換えられてしまうリスクというのも高まっています。

実際、既に日本では、相対貧困率が先進国の中でも高い水準となっているのも事実です。

この相対貧困率というのは、大まかに言うと、全人口に占める所得が中央値の半分未満の人たちの割合になります。

そして、相対貧困率が高いということは、格差が増大しているということはもちろんですが、その広がった格差の固定や、治安の悪化などといった問題にもつながってくるのです。

しかし本書では、こうした問題にはほとんど触れられておらず、その点はとても残念に感じてしまいました。

4.世界の人口分布と将来予測

第5章では、世界の人口分布について触れられています。

現在、世界には70億人の人がいますが、暗証番号になぞらえて「1・1・1・4」と覚えておくと良いと書かれています。

つまり、アメリカ大陸には約10億人、ヨーロッパ大陸には約10億人、アフリカ大陸には約10億人、アジア大陸には約40億人が暮らしているということです。

さらに国連では、今世紀末には「1・1・4・5」になるだろうと予測されています。

これは、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸ではほとんど人口が変わらないものの、アフリカ大陸で約30億人、アジア大陸で約10億人ほど人口が増えるということです。

5.新興国の高成長

また、第7章では、欧米諸国が今後も発展し続けるという幻想について触れられています。

2008年の世界金融危機後、レベル4の国々は何年間も年率3%の予想経済成長率に届かなかったと言います。

一方で、「アフリカのガーナ、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、そしてアジアのバングラデシュといったレベル2の国が、5%を超える高成長を遂げていた」と言い、次のようにも書かれています。

アジアやアフリカでは、史上まれに見る中間所得層の拡大から、ものすごい事業機会が生まれている。

地元企業はすでに足場を固め、知名度を高め、大陸中に事業を拡げつつある一方で、西洋の大企業はやっとこさ眠い目をこすって何が起きているかを見ようとしている。

こういったことを踏まえると、これまではアジアやアフリカの新興国にはそこまで投資せずとも、グローバル企業に投資しておけば十分だろうと考えていましたが、もしかするとそれは誤解だったのかもしれないと思えてきます。

特に、石油や天然ガス、貴金属などの資源が豊富で、最後のフロンティアとも呼ばれるアフリカには要注目でしょう。

6.非民主主義国の経済発展

続く第8章では、急激な経済発展と社会的進歩を遂げた国のほとんどは、民主主義ではないとのことで、以下のように書かれています。

韓国は(産油国以外で)世界のどの国よりも急速にレベル1からレベル3に進歩したが、ずっと軍の独裁政治が続いていた。

2012年から2016年のあいだに経済が急拡大した10ヵ国のうち、9ヵ国は民主主義のレベルがかなり低い国だ。

こうした事実からすると、非民主主義の新興国にこそ、意外と投資妙味があるのかもしれません。

7.総括

現在ではインターネットが普及し、私たちはこれまでにないほど大量の情報にされされるようになりましたが、その一方で、情報を処理する人間の能力というのはそこまで大きくは変わりません。

ですから、多くの情報を処理するに当たっては、どうしても単純化したり、都合の良い情報ばかり集めたり、都合の良いように解釈してしまったりするのは、ある意味仕方のないことだと言えます。

ただ、それにより、私たちが世界を大きく誤解して捉えてしまっているということが、本書では様々な角度から指摘されています。

ですから、本書を読むことによって、日々接する情報や、自分の見方・考え方にまで疑いの目を向け、謙虚になることや自分の頭で考えることの大事さに気づくことができるのではないでしょうか。

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