読書録・書評

【読書録・書評】『改訂版 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント:経済的自由があなたのものになる』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、キャッシュフロー・クワドラントという、4つの収入を生み出す方法の違いについての内容となっています。

本書では、お金の哲学や、ビジネスオーナーとして成功するための心構えなどについても書かれていますが、ここでは主に投資に関係してくる部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • はじめに:キャッシュフロー・クワドラントとは何か
  • 第一部:クワドラントの右側か左側か
    • 第一章:私があえてホームレスになったわけ
    • 第二章:クワドラントが違えば人間も違う
    • 第三章:人はなぜ自由よりも安全を求めるのか
    • 第四章:ビジネスシステムを手に入れる
    • 第五章:投資家の五つのレベル
    • 第六章:お金は目に見えない
  • 第二部:最高のあなたを引き出す
    • 第七章:なりたい自分になる
    • 第八章:どうしたら金持ちになれるか
    • 第九章:銀行そのものになれ
  • 第三部:クワドラントの右側で成功するために
    • 第十章:まずはヨチヨチ歩きから
    • 第十一章:ラットレースから抜け出すための七つのステップ
  • おわりに:道はかならず見つかる

2.キャッシュフロー・クワドラントとは?

キャッシュフロー・クワドラントの図本書では、左のような図を用いて、キャッシュフロー・クワドラントという、4つの収入を生み出す方法の違いについて説明されています。

まずは、この4つについて、それぞれ見ていきたいと思います。

 

  • E(従業員):雇われて働いている(システムのために働く)
  • S(自営業者):自営している(本人がシステムとなって働く)
  • B(ビジネスオーナー):自分のために働いてくれるビジネスシステムと従業員を持っている(システムを作り出し、所有し、管理する)
  • I(投資家):お金が自分のために働いてくれる(システムにお金を投資する)

そして、これらについて次のように書かれています。

経済的にいまより安定した状態になるために私が勧めたいのは、EやSのクワドラントで仕事をする一方で、BやIのクワドラントについて学ぶことだ。

キャッシュフロー・クワドラントのどちらの側でも自分がやっていけるという自信がつけば、たとえ持っているお金は少なくても、もっと安心した気持ちでいられるようになる。

平均的な金持ちは収入の70%を右側のクワドラントから、残りの30%を左側から得ている。

3.株式ブローカーは投資家ではない!

本書では、「株式ブローカーや、不動産代理販売人、ファイナンシャル・アドバイザー、銀行家、会計士といった人たちは、ふつう従業員か自営業者だ」と書かれています。

つまり、投資の世界でアドバイザーと呼ばれる人たちの多くは、そもそもその仕事の内容からして、自分の収入をIクワドラントから得ているわけではないということです。

そして、相談相手としているアドバイザーが優秀かどうか確かめるためのいい方法の一つとして、次のようなものがあると言っています。

手数料や相談料としてもらう収入と、投資や自分の主有するビジネスからの不労所得との割合を聞いてみることだ。

4.投資の専門家と投資信託

さらに、上記の内容と重なりますが、投資の専門家について、以下のようなことも書かれています。

なげかわしいことに、たいていの人は投資の方法を学ぶことが重要だとは考えていない。彼らが投資は危険だと信じて、「専門家」に自分のお金を託すのはそのためだ。

だが、その専門家たちは大部分が本当の投資家ではなく、お金を託した投資家が儲けようが損をしようが、手数料を稼ぐセールスパーソンだ。

また、資産運用のプロとでも言うべき、ファンドマネジャーについても次のように言及されています。

投資についてよく知らない人たちは、自分より専門知識があってうまくお金を運用してくれそうなファンドマネジャーにお金を託す方が安全だと思っている。

プロの投資家になる気のない人にとってはたしかにこれは一つの賢いやり方だ。問題は、賢い戦略ではあっても、他のやり方よりリスクが少ないわけではないという点だ。 

5.集中型のポートフォリオ

他にも本書では、分散投資について言及されています。

「安全な投資をしたいという人はよく分散投資という言葉を口にする」が、投資を分散することは、「損をしない」ための戦略で、「勝つための投資戦略ではない」と言います。

「投資家として成功している人、投資で金儲けをしている人たちは分散などしない。彼らは焦点を定めて投資する」と言うのです。

その例として、世界的に著名な投資家である、ウォーレン・バフェット氏が分散投資について語った次のような言葉が引用されています。

「われわれがとっている戦略は、標準的な分散方式には従っていない。そのため、いわゆる専門家の中には、われわれの戦略が普通の投資家の方法より危険だとする人間もたくさんいる。だが、われわれはそうは考えていない。」

「われわれは集中型のポートフォリオによってリスクを下げることが可能だと信じている。つまり、そうすることによって投資家が一つのビジネスについてより深く考え、購入前よりもその経済的特質に関して安心感を持てるようになるならば、リスクはしかるべくして下がる」

6.分散投資の是非

また本書では、真の投資家・本物の投資家は、市場の大きな変動を歓迎し、市場の状態がいいときより悪いときの方が、たくさん儲けるとも書かれています。

確かに、やりようによっては、そういったアクティブな投資戦略によって、一般的に行われるような分散投資よりも優れた成績を上げることは可能だと思われます。

とはいえ、投資のために十分な時間や労力を割くことができないという人にとっては、分散投資の方が適しているでしょう。

実際に、バフェット氏自身も近年では、中途半端な勉強や研究で個別銘柄への投資に手を出すくらいなら、分散投資をすることを投資家に勧めています。

それは、投資家の多くが市場平均を超えるような運用成績を上げることができないためです。

ですから、分散投資と集中投資では、どちらの方が優れているかといった問題よりも、どちらが自分にとって適したものであるかを考えることの方が大事だと考えています。

7.総括

本書について、著者は次のように書いています。

この本は読者に解答を与えるためのものではない。お金に関する問題や自分の目標を違った見方で見る方法を教える本だ。

つまり本書では、何か具体的な投資戦略やビジネスアイデアなどといったことが書かれているわけではありません。

ただ、経済的自由を手に入れるためには、クワドラントの右側に目を向け、長期的な見通しを持って考えたり、計画を立てたりすることが重要だということについて、本当の意味で気づかせてくれる一冊だと言えます。

ユルゲン・ヘラーはその著書の中で、「たいていの人は、自分が短期間で到達できることを過大評価し、長期間で達成できることを過小評価する」と述べていますが、短期間で達成できることなど、たかが知れています。

私たちも、目先のことばかりにとらわれず、是非とも長期的な視点で物事を考えるようにしていきたいものです。

 

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