ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 日経平均 値動きのルール (30億円稼いだ伝説の元証券ディーラーが説く!)
- 著者:ゆうじ。
- 出版日:2018/3/27
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、株価指数先物
Contents
1.書籍の概要
まずは、本書の概要からです。
本書では、平成の30年間に起こった出来事について、その時々の値動きとともに、著者がどのようにして利益を得たかが書かれています。
なお、本書に書かれている著者の売買対象は主に日経平均先物、TOPIX先物、日経225オプションとなっています。
また、本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:戦争・テロ ~地政学リスクを攻略~
- 第2章:震災 ~突発的な暴落をチャンスに変える~
- 第3章:政治 ~翻弄されない攻めの投資術~
- 第4章:バブル ~相場でもっとも儲かるには~
- 第5章:バブル崩壊 ~バブル崩壊はまたとないチャンス~
- 第6章:市場暴落 ~〇〇ショックは爆益を生み出す絶好の機会~
- 第7章:現在の投資 ~自由な裁量での売買~
ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。
2.戦争とテロ
第1章では、「戦争・テロ」ということで、湾岸戦争や米国同時多発テロの際の市場の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、湾岸戦争、米国同時多発テロの際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【湾岸戦争】
- 開戦前 1990年8月2日~1991年1月16日
- 株価は下落
- ニュースが報じられるたび、激しく乱高下を繰り返す
- 反発材料 政府が発表した「株価のテコ入れ策を検討」で急騰
- 開戦直後 1991年1月17日
- 開戦直後は大きく下落
- 反発材料 「多国籍軍の圧倒的優勢」で短期終結の観測が流れ、急騰
- 開戦から2週間ほど 1991年1月17日~1991年1月31日
- 徐々に値動きが少なくなる
- 開戦から2週間後から停戦協定まで 1991年2月1日~1991年3月3日
- 日経平均は急上昇していく
- 停戦協定受け入れ後 1991年3月3日以降
- 懸念材料が払しょくされ、程なくして株価は最高値をつける(ザラ場高値2万7270円)
- 買い一巡後、株価は下落(その後26年経っても抜けることのできない高値となった)
【米国同時多発テロ】
- 事件発生 2001年9月11日
- 日本時間は夜間。翌日、寄りから全面売り気配
- 寄り後、サーキットブレーカー発動 取引は中断
- 取引再開 前場はリバウンド
- 後場 下落 ストップ安
- 事件発生後~2002年1月
- 大崩れもないが、立ち直りもない 低空飛行が続く
- 2002年2月以降
- 一時的に回復の場面があったものの、じりじりと下落が続く
3.震災
第2章では、「震災」ということで、阪神淡路大震災や東日本大震災の際の市場の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、阪神淡路大震災、東日本大震災の際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【阪神淡路大震災】
- 地震発生 1995年1月17日 早朝
- 発生当日 前場は休場
- 発生後1週間 値動きは乏しい
- 1月23日 ストップ安
- 英ベアリングズ社ディーラーによる不正事件
- 1月23日以降「下落後、小幅なリバウンド」が繰り返される
- 下落トレンドが続く
- 1995年7月以降
- 株価 回復(日銀 金融政策など)
【東日本大震災】
- 地震発生 2011年3月11日(金)
- 地震発生が引け間際だったため、日経平均株価、当日の下げは限定的
- 3月14日(月)
- 日経平均株価終値 前日比633円安
- 夜間、松井証券の自動ロスカット口座の(無茶な)強制執行でオプション市場が混乱
- 3月15日(火)
- 福島第一原子力発電所 爆発のニュースが報じられ暴落
- 下落スピードは速く、著しい下げがある一方で、切り返しも大きい
- 3月16日(水)
- 日経平均株価終値は前日比488円高
4.政治
第3章では、「政治」ということで、細川内閣時の政治改革関連法案制定の際や、細川護熙首相辞任の際の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、政治改革関連法案の制定や細川護熙首相辞任の際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【政治改革関連法案】
- 法案に関して相場の反応を予習しておくことが必要
- ①株価を上下させる要因を把握
- ②結果次第で株価がどちらに動くか理解
- (例)この法案が通ったら企業業績の向上が期待できる→株価上昇
- 原則1:規制緩和、減税は株価上昇の要因/原則2:増税は株価下落の要因
- 結果がマーケットの期待を裏切ったときにビッグウェーブが起こる
- 1994年1月21日(金)
- 法案成立の見通しで株価上昇
- 1月22日(土)
- 週末、参議院で否決。週明けストップ安。材料が出るたび株価は激しく上下
- 1月31日(月)
- 法案成立。2日連続ストップ高
【細川護熙首相辞任】
- 首相辞任は「売り」とは限らない
- 首相交代が頻繁に起こると、マーケットの反応は鈍くなる
- 細川護熙首相辞任の場合:辞任の報道直後
- 特別売り気配 寄った後も下落
- 高値から400円下落後リバウンドし、最終的に高値引けで終わる
- 翌日以降
- 2日間、株価は下落
- 3日目以降、株価は回復。辞任前の水準に戻る
5.バブル
第4章では、「バブル」ということで、ITバブルや郵政バブルの際の市場の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、ITバブル、郵政バブルの際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【ITバブル】
- ITバブル 1990年代末~2000年
- 光通信、ソフトバンクなどのIT関連銘柄の株価が安値から90倍、100倍と著しく伸長
- 大型株よりも、時価総額の小さな、新興銘柄のほうが株価は大きく伸びた
- 相場は中心的な動きをするものを最前線で売買する人が一番儲かる
- 1990年代、ITバブルの前・・・先物が相場の中心にあった
- ITバブル時・・・IT関連銘柄が相場の中心の座に就く
- IT関連銘柄を売買する投資家が大きな利益を得る
- 日経平均株価の値動きに変化
- ソフトバンクなど、ITバブルの銘柄は日経平均株価の225銘柄に採用されていなかったため、日経平均株価は主要なIT関連銘柄と比べて、値動きが乏しかった
【郵政バブル】
- 解散を表明 2005年8月8日
- 小泉首相が郵政民営化の是非を問うため、解散総選挙を表明
- 日経平均株価は上昇
- 選挙で圧勝 9月11日
- 自民(小泉政権)圧勝。日経平均株価は著しく上昇
- この当時は先物主導の相場であった
- 先物主導のときは、日経平均株価の売買で利益が上げやすい
- 新興市場が活況
- 同時期、ライブドア関連銘柄など、新興銘柄が大きく上昇
- 2005年11月、ライブドアマーケティングは分割を発表
- 株価は1780円から8万5000円まで上昇
6.バブル崩壊
第5章では、「バブル崩壊」ということで、ITバブル崩壊に関して、序章と本章とに分けて市場の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、ITバブル崩壊の序章と本章の際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【ITバブル崩壊(序章)】
- 暴落は突然訪れるわけではない
- ITバブル終焉では、光通信など、上昇が大きかった銘柄が高値を付けた後も日経平均株価は上昇を続けた。一斉に、すべての銘柄が暴落したわけではない。
- 光通信、ソフトバンク
- 2000年2月に高値
- NTTドコモ、日経平均株価など
- 比較的時価総額の大きな銘柄はソフトバンクが高値を付けた後、3月まで高値圏にあった
- 2000年4月に高値
※違いが生じた理由は、ノムラ日本株戦略ファンド(1兆円ファンド)が買い支えたことが一つとしてあった
【ITバブル崩壊(本章)】
- 暴落の直接的なきっかけは次の①②があった
- ①日経平均30銘柄入れ替え
- 従来の入れ替え数(6銘柄程度)から大幅に入れ替えの銘柄数が増える
- ②ニューヨークダウの下落
- NYダウ、NASDAQが大幅に下落、当時としては史上最大の下げ幅を記録した。これに伴い、日経平均株価も下落
- プットでの売買
- 日経平均株価が大幅に下落するときは、オプション(プット)の売買が利益をもたらす
7.市場暴落
第6章では、「市場暴落」ということで、ライブドアショックやリーマンショックの際の市場の値動きとともに、その際に著者がどのような売買を行ったかについて書かれています。
そして、ライブドアショック、リーマンショックの際の値動きについては、それぞれ以下のようにまとめられています。
【ライブドアショック】
- 事件発生 2006年1月16日夕方
- ライブドアに強制捜査が入る
- 翌日 1月17日
- 日経平均先物は前日比440円安。混乱はあったが序の口
- 1月18日
- マネックスショック
- マネックス証券はライブドア関連銘柄の代用有価証券掛け目をゼロにすると発表⇒売り殺到
- 東証ショック
- 東証、サーバーダウンの恐れ。「処理上限に近づいたら取引を止める」と発表。さらに売りが殺到
【リーマンショック】
- リーマン経営破たん 2008年9月15日
- 米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たん。ただ、9月中は大幅な下落はない
- 暴落開始は10月
- 日経平均先物 10月の値動き
- 大幅に下落するが、リバウンドも大きい
- 1日1万1500円⇒8日前日比1120円安 1万円割れ
- 10日1180円安 8000円割れ⇒11日9000円超まで切り返し⇒14日1660円高
- 16日1240円安 28日 7000円割れ⇒30日 9000円超え(3日の間で2000円上昇)
8、投資全体のまとめ
第7章では、ディーラーを退職した後の著者の売買について主に書かれており、投資全体のまとめとして次のように書かれています。
- 中心を攻める
- 短期で多くの利益を得るには中心となる銘柄を売買する
- 鉄火場相場の攻略法
- 相場についていくこと
- 下落トレンドだからといって売りポジションを全力で持ち続けないこと
- リバウンドに乗ることが大切
- バブル相場のポイント
- 相場における中心銘柄をしっかりと握る
- 多少の下落があっても「売らされないこと」が大切
- 柔軟性を常に意識
- 扱う金融商品、投資手法など、相場の変化に対応する柔軟性を忘れないことが必要
9.総括
本書では、戦争やテロ、震災など、相場で起こった様々な出来事に関して、その際の値動きとともに、著者がどのように売買して利益を得たかが書かれています。
また、著者は先物のディーラーであり、その取引対象は日経平均先物やTOPIXが中心となっています。
著者の投資手法については、有事で市場のボラティリティが高まった際に、市場の値動きに追随することで、上げと下げの両方を取りにいくというものになります。
当然ですが、厳しいディーラーの世界で長く生き残ってきたとのことで、リスク管理についても徹底されているのが伝わってきます。
ディーラーとして24年間で約30億円の利益を上げたという著者の手法は、そうそう真似できるものではありませんが、主に第7章にまとめられているような相場に対する著者の考え方というのは参考になります。
そして、過去におきた出来事とその際の市場の値動きというのは、今後の相場で似たような状況が生じたときに、きっと役に立つものとなるのではないでしょうか。
- 日経平均 値動きのルール (30億円稼いだ伝説の元証券ディーラーが説く!)
- 著者:ゆうじ。
- 出版日:2018/3/27
- 分類:株式投資、株価指数先物