投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)のデータから、以下の記事の前者では海外投資家について、後者では自己・個人・信託銀行についてそれぞれ書いてきました。
特に前者の記事の方では、「投資部門別売買状況とは何か?」について詳しく触れていますので、よろしければご参照下さい。
そして、後者の記事でも少し触れたのですが、「自己」と「個人」については「現金」の売買と「信用」の売買とに分けてそれぞれデータが公表されています。
ですので、ここではそれらについて詳しく見ていきたいと思います。
1.自己の現金と信用
まずは自己の方からですが、自己というのは証券会社が自身の勘定で行った売買(ディーラー業務)のことでした。
上記の記事では、その自己の差引き売買金額の累計を日経平均株価と比較しましたが、それを更新して再掲したのが以下の図です。
自己の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
そして、ここではこの自己の売買金額の内訳を、現金と信用とに分けて見ていくというわけです。
その自己(現金)の差引き売買金額の累計を日経平均株価と比較したのが以下の図になります。
自己(現金)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図からは、自己部門の現金による取引(現物取引)では一貫して買い続けていたことが分かります。
ちなみに、相関係数は約0.49となっています。
次に、自己(信用)の差引き売買金額の累計を日経平均株価と比較したのが以下の図です。
自己(信用)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図を見やすくするために、自己(信用)のスケールを反転させたのが以下の図です。
自己(信用・軸反転)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図から分かるように、自己部門の信用取引においては現物取引とは逆に一貫して売り続けており、相関係数は約0.41となっています。
この自己の現金と信用について考察する前に、次に個人の現金と信用についても同様に見ていきます。
2.個人の現金と信用
個人の売買に関しても、上記の記事ではその差引き金額の累計を日経平均株価と比較しましたが、それを更新したものをまずは再掲したいと思います。
個人の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
そして、ここでもこの個人の売買金額の内訳を、現金と信用とに分けて見ていきます。
その個人(現金)の差引き売買金額の累計を日経平均株価と比較したのが以下の図になります。
個人(現金)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図を見やすくするために、個人(現金)のスケールを反転させたのが以下の図です。
個人(現金・軸反転)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図からは、個人部門の現物取引では、一貫して売り続けていることが分かります。
なお、相関係数は約-0.75となっています。
次に、個人(信用)の差引き売買金額の累計を日経平均株価と比較したのが以下の図になります。
個人(信用)の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)
この図を見ると、個人部門の信用取引においては現物取引とは逆に一貫して買い続けていることが分かり、相関係数は約0.66となっています。
3.自己・個人の現金・信用の売買動向から分かること
以上のように、自己部門と個人部門のそれぞれについて、その売買を現金と信用とに分けて見てきましたが、結論から言うと特に目新しい情報は得られませんでした。
まず、個人においては、相場上昇に伴って現物を売り続け、その売りに比べれば規模は小さいものの、一部の個人が信用取引で買いつないでいるといったところです。
また、自己においては、ほぼ一貫して現物を買い続け、その買いとほぼ同じ規模を信用取引で売りつないでおり、主にヘッジ目的に信用取引を利用していると思われます。
そして、これらのことはこの記事におけるデータを見るまでもなく、ある程度想像できるような事柄でもあります。
ですから、残念な結論になってはしまいますが、自己と個人の売買において、現金と信用の内訳までを見ていく必要性は低く、合計の売買動向だけ追っていけば十分だといえそうです。