相場のデータ・指標

【2022年9月末時点】デビッド・テッパー氏率いるアパルーサ・マネジメントの最新ポートフォリオ

1.アパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパー氏

今回は、デビッド・テッパー氏が率いる、アパルーサ・マネジメントの2022年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

デビッド・テッパー氏は、ヘッジファンド・マネージャーの運用報酬ランキングで、2009年、2012年、2013年にトップとなり、その後も、2016年3位、2017年5位、2018年3位と驚異的な成績を残しています。

特に2009年には、リーマンショック後に大きく売られた大手銀行株などを大量に取得し、辛抱強く持ち続けたことで、最終的に70億ドルもの利益を上げたと言われます。

また、2013年には、市場で不人気だった航空株への投資でリターンを出すなど、特定業種への集中投資で成果を出してきたことで知られています。

2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

さて、デビッド・テッパー氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、22年11月中旬には、著名投資家たちの22年9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。

3.アパルーサ・マネジメントのポートフォリオ

それでは早速、アパルーサ・マネジメントの2022年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位17銘柄を示しています。)

アパルーサ・マネジメントの2022年9月末時点でのポートフォリオを示した図

また、この四半期前の2022年6月末時点でのポートフォリオを示したのが下図になります。

アパルーサ・マネジメントの2022年6月末時点でのポートフォリオを示した図

この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。

4.デビッド・テッパーのポートフォリオ・マネジメントと総括

22年7月から9月末までの間では、新規買いや買い増した銘柄はなかったため、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.5%以上であった銘柄について見ていきます。

ティッカー 銘柄名 減少率(%) 組入比率(%)
KSS Kohl’s Corp -4.20 0(完全売却)
OXY Occidental Petroleum Corp -3.23 0(完全売却)
MU Micron Technology Inc -2.00 0(完全売却)
APTV Aptiv PLC -1.40 0(完全売却)
META Meta Platforms Inc -1.27 8.73
SYY Sysco Corp -1.20 1.04
EQT EQT Corp -0.70 7.56
NFLX Netflix Inc -0.55 0(完全売却)

この表から、前四半期に続いて、「OXY(オクシデンタル・ペトロリアム)」や「EQT(EQT)」といったエネルギー関連銘柄を大きく売っていることが分かります。

また、この表にはありませんが、前四半期にポートフォリオ全体の1割近くをも占めるまでに新規買いしていた、米大手クリーンエネルギー企業の「CEG(コンステレーション・エナジー)」も多少売っていました。

もっとも、ポートフォリオ全体が売り越しとなる中で、相対的に「CEG」の占める割合が増加し、「CEG」の株価も堅調に推移していたので、ポジション調整のために一部を利益確定したというだけかもしれません。

そして、他の売却銘柄に関しては、年初から株価が低迷しているものが多く、損切りしたのではないかと思われます。

なお、9月末時点から直近までにポートフォリオの内容に変更がなかったと仮定すると、アパルーサ・マネジメントのパフォーマンスは、S&P 500に対して6%ほどのアンダーパフォームとなっています。

これは「GOOG(アルファベット)」や「AMZN(アマゾン)」、「META(メタ・プラットフォームズ)」といったポートフォリオの上位構成銘柄の株価が軟調な値動きとなっているためでしょう。

とはいえ、ポートフォリオ全体の時価総額がここ十数年で高いときには70~100億ドルであったのが、22年9月末時点では13.6億ドルとなっていることから、損失額はだいぶ低減されているのではないかと思われ、さすがのポートフォリオ・マネジメントだと言えます。

さらにここまで減少させているということは、先行きに対してもかなり悲観的になっていることの裏返しなのかもしれません。

まだ先のことかもしれませんが、アパルーサ・マネジメントが再び大きくポジションを膨らませるタイミングを注視していきたいところです。

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