ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近で、PERは16.98倍(3月19日時点)での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは3月19日大引けの時点で、1.54倍となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家の売買動向は、長らく売り越し傾向となっていましたが、直近では大きな買い越しが続いていることが見て取れます。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から分かるように、日銀のETF買い入れは、2021年4月より大きくペースダウンしています。
また、日銀は3月18-19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除とともに、ETFの買い入れを終了することを決定していました。
そして、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
日経平均株価は3月初めに4万円を超える場面がありましたが、ドル建て日経平均株価で見ると、21年2月に付けた280ドル台後半の高値をまだ更新できていないことが分かります。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、直近の3月8日時点では、-4.33%となっており、目先の天井圏を示唆していると言えます。
なお、信用評価損益率では信用買い建玉のみの損益を見ており、空売りの損益は反映されていません。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、3月19日時点で122.32とこちらも目先の天井圏を示唆する水準となっています。
5.総括
日経平均株価は、年初から一気に上昇し、直近でも4万円前後での推移となっています。
そして、前述の通り、日銀は今月3月18-19日の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除やYCC(イールドカーブ・コントロール)の終了、ETFの買い入れ終了を決定していました。
また、今後に関しても、日銀が2024年中に1~2回の利上げを行うではないかと予想されています。
ただ、日本企業は2024年度も増収増益が見込まれており、この程度の金利上昇であれば、株価への影響は軽微であると思われます。
日本株には業績以外にも、グローバル投資家による日本株のウェイト引き上げや、企業による株主還元の拡充などの強気要因がありますが、ここで見てきたように、相場にはやや過熱感が見られています。
しかし、欧米や中国の景気後退懸念や、中東などの地政学的リスク、米大統領選挙など、海外発の波乱要因が山積しているのも事実です。
また、時期的にも「セル・イン・メイ(Sell in May)」のようなアノマリーも気になります。
ここはあまり欲をかかず、少しずつ利益確定を進めながら、来たるべき相場調整に備えて現金比率を高めておくのが得策ではないかと考えています。