ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近では、日経平均株価は急伸し、PERも16倍近くでの推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは9月22日大引けの時点で、1.35倍となっています。
なお、9月22日大引けの時点で、平均PBR 1.3倍相当が31202円、平均PBR 1.4倍相当が33602円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家の売買動向は、長らく売り越し傾向となっていましたが、直近では大きな買い越しへと転じていることが見て取れます。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から分かるように、日銀のETF買い入れは、2021年4月より大きくペースダウンしており、2023年3月14日を最後にそれ以降、買い入れは行われていません。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
ドル建て日経平均株価では、長らく上値抵抗線となっていた225ドル近辺での推移となっており、21年2月に付けた280ドル台後半の高値まではまだ距離があることが分かります。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、直近の9月15日時点では、-8.19%となっています。
なお、信用評価損益率では信用買い建玉のみの損益を見ており、空売りの損益は反映されていません。
ですから、直近で日本株が大きく上昇しているにも関わらず、信用評価損益率がほぼ横ばいで改善を認めていないというのは、意外な結果だと言えます。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、9月22日時点で128.3と天井圏を示し値となっています。
5.総括
23年6月以降の日経平均株価は、31000~34000円内でのレンジ相場となっています。
日経平均株価は、3~6月にかけて大きく上昇していましたが、6月以降も米国の株価指数であるダウ平均株価やS&P 500と比べて、堅調な値動きを保っています。
米国の株価が冴えない理由としては、その金融環境が挙げられます。
米インフレ率は低下のペースが鈍化しており、直近の19~20日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では追加利上げが見送られたものの、利下げへの転換が予測される時期は後ズレする可能性が高まっているのです。
一方の日本では、着実にインフレ率が高まっているにも関わらず、日銀によるマイナス金利の解除くらいはあったとしても、欧米のように利上げを継続していくということは考えづらいでしょう。
こうした金融環境の差や、日本企業の4-6月期の業績も堅調ぶりが目立ったことから、日本株は海外投資家から選好されやすい状況にあると言えます。
米国経済のハードランディングや、中国の不動産問題などにより、日本株が大きく調整することもあり得ますが、そうした局面というのは日本株の絶好の買い場になるのではないかと考えています。