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1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント
今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2021年12月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。
また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。
これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。
他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
そして、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、この22年2月中旬には、著名投資家たちの21年12月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2021年12月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2021年9月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者の違いを際立たせるために、21年12月末時点でのポートフォリオの上位15銘柄について、各銘柄の組み入れ比率と、前四半期からの増減率を示したのが、以下の表になります。
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率(%) | 増減率(%) |
JD | JD.com Inc | 8.2 | 5.06 |
MSFT | Microsoft Corp | 6.21 | -35.41 |
SE | Sea Ltd | 5.55 | 9.37 |
NU | Nu Holdings Ltd | 5.43 | 新規買い |
SNOW | Snowflake Inc | 4.44 | 16.41 |
DASH | DoorDash Inc | 3.77 | 5.41 |
FB | Meta Platforms Inc | 3.7 | 0 |
CVNA | Carvana Co | 3.66 | 18.13 |
CRWD | CrowdStrike Holdings Inc | 3.36 | 0 |
NOW | ServiceNow Inc | 3.12 | 0 |
AMZN | Amazon.com Inc | 2.56 | -37.79 |
WDAY | Workday Inc | 2.51 | 0 |
ZM | Zoom Video Communications Inc | 2.45 | 28.67 |
SHOP | Shopify Inc | 2.42 | -8.5 |
DOCU | DocuSign Inc | 2.3 | -5.21 |
4.チェース・コールマンのポートフォリオ・マネジメントと総括
上の表で、まず目を引くのが、大量の新規買いとなった、ブラジルのデジタルバンク「NU(ヌー・ホールディングス)」でしょう。
ただ例によって、売上高の伸びは大きいものの、赤字が続いており、株価も相当に割高となっています。
一方で、「FB(メタ・プラットフォームズ)」の保有量には変化がないものの、「MSFT(マイクロソフト)」や「AMZN(アマゾン)」は大きく売り越していることも見て取れます。
そして、21年10月から21年12月末までの期間においては、上の表にある全ての銘柄が下落しており、特にSNOW、DASH、FB、ZMは3~4割、SE、CVNA、SHOPに至っては5割超もの下落となっていました。
なお、タイガー・グローバル・マネジメントでは、2017年頃から徐々にハイテク銘柄へのウェイトを増しており、21年12月末時点では、ポートフォリオ全体に占める割合が51.8%にもなっています。
上の表からも、ハイテク銘柄へと傾斜している様子が伺えますが、こうした銘柄は、低金利環境下で将来の成長が過分に織り込まれていたという面があったと言えます。
また、直近ではウクライナ情勢が緊迫化していますが、これによりFRBによる拙速な利上げ観測が後退することも十分に考えられ、それ自体はハイテク銘柄にとってプラス材料と言えます。
ただ、先行き不透明な状況下では、ハイテク銘柄の中でも選別が進み、やはりGAFAMに代表されるような銘柄に資金が集中するのではないかと思われます。(GAFAMの「F」、すなわち「FB」は選好されづらいように思われますが‥)
そうした代表的なハイテク銘柄のポジションを縮小する一方で、新興のハイテク銘柄のポジションを増大させ、依然としてハイテク銘柄がポートフォリオの半分以上を占めるタイガー・グローバル・マネジメントが、この苦境をどう乗り越えていくのか注目していきたいところです。