ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そうした状況下では、平均PERが指標として機能していませんでしたが、直近ではそうした状況も落ち着いてきており、日経平均株価はPER 14倍程度での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは12月24日大引けの時点で、1.26倍での推移となっています。
なお、12月24日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が27412円、平均PBR 1.3倍相当が29696円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図からも分かるように、2020年10月頃より続いていた、海外投資家の買い越し傾向は足元で一服しており、2021年4月以降はほぼ横ばいとなっています。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日銀のETF買い入れは、2021年4月より、大きくペースダウンしていることが分かります。
ちなみに、4月以降における日銀のETF買い入れは、4月21日の701億円、6月21日の701億円、9月29日の701億円、10月1日の701億円の4回だけでした。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
3.NT倍率
また、NT倍率も見てみることにします。
直近では依然として、日経平均株価とNT倍率との間に乖離を認めています。
日経平均株価が調整して、NT倍率との乖離が縮小する展開も念のため視野に入れておいた方が良いかもしれません。
4.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、12月17日時点では-11.21%となっており、目先の天井圏あるいは底値圏のどちらとも言いにくい水準となっています。
5.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオも、12月24日時点で83.3と、天井圏と底値圏のどちらとも言えないような水準となっています。
6.総括
日経平均株価は、11月下旬に調整した後、直近では半値戻しに近い水準まで回復するような値動きとなっています。
そして、12月14~15日には、日本株にも大きな影響を及ぼす、FOMC(米連邦公開市場委員会)がありました。
そこで、FRB(米連邦準備制度理事会)は、テーパリング(量的緩和の縮小)の加速を決定し、2022年の利上げ回数が3回になるとの見通しも示されました。
この内容自体は、ほぼ市場の想定内のものであったため、今のところ、株価への影響は限定的なものとなっています。
ただ、コロナ禍の終息にはまだ時間がかかりそうであり、人手不足や物流機能の低下などといった供給制約で生じている面が大きい足元のインフレは、金融政策だけでは解消しにくいと言えます。
仮に高インフレが長期化し、それを抑制するために利上げを加速させると、オーバーキル(過度の引き締めによる景気後退)に陥ってしまうリスクもあります。
いずれにしても、これまでのような金融相場から業績相場へと移行していく局面のように思われ、そうなると高PERのグロース株にとっては逆風となりそうです。
これまで一部の高成長株が全体相場(株価指数)を牽引するような展開が続いてきたため、そうした主導株の調整は全体相場の調整にもつながることになるでしょう。
今後は業績の良いバリュー株に注目が集まるような展開も十分に考えられますが、相場のさらなる調整に備えて、現金比率を高めることも重要ではないかと考えています。