Contents
1.バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏
今回は、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ(BRK)の2021年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
バフェット氏は、「投資の神様」や「オマハの賢人」と呼ばれることがあることからも分かるように、過去35年間(1986-2020年)の年平均リターンは、15.2%と驚異的なものとなっています。(同期間のS&P 500の年平均リターンは、8.5%。)
ただ、下の表に示すように、最近の10年間で見ると、やや様相が異なっていることが分かります。
年平均リターン | BRK | S&P 500 | 超過リターン |
過去3年間(2018-2020) | 5.3% | 11.9% | -6.6% |
過去5年間(2016-2020) | 11.9% | 12.9% | -1.0% |
過去10年間(2011-2020) | 11.2% | 11.5% | -0.3% |
過去3年間(2018-2020年)および、過去5年間(2016-2020年)、過去10年間(2011-2020年)のいずれの期間においても、S&P500をアンダーパフォームしているのです。
これは、米国株の上昇が続いていることから、バフェット氏のお眼鏡に適うような割安株が見つかりづらくなったことも要因の一つではないかと思われます。
実際、バークシャーの現金等の待機資金は、2010年頃より増加傾向となっています。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、バフェット氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、11月中旬頃には、著名投資家たちの9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されていたというわけです。
3.バークシャー・ハザウェイのポートフォリオ
それでは早速、バークシャー・ハザウェイの2021年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2021年6月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者を比較すると、上位15銘柄の中で、持分変動があったのは、以下の3銘柄のみでした。
ティッカー | 銘柄名 | 持分変動 | 組み入れ比率 |
USB | U.S. Bancorp | -1.9% | 2.56% |
CHTR | Charter Communications Inc | -19.4% | 1.04% |
CVX | Chevron Corp | 24.1% | 0.99% |
4.バークシャー・ハザウェイの主な売買銘柄と総括
続いて、21年7月から9月末までの間に、バークシャー・ハザウェイが売買した銘柄の中で、ポートフォリオ全体への影響度が0.1%以上あった銘柄を見ていくことにします。
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率 | 持分変動 | ポートフォリオへの影響度 |
CVX | Chevron Corp | 0.99% | 24.1% | 0.19% |
RPRX | Royalty Pharma PLC | 0.16% | 新規買い | 0.16% |
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率 | 持分変動 | ポートフォリオへの影響度 |
BMY | Bristol-Myers Squibb Co | 0.44% | -16.2% | -0.1% |
ABBV | AbbVie Inc | 0.53% | -29.9% | -0.24% |
MRK | Merck & Co Inc | 0 | 完全売却 | -0.24% |
CHTR | Charter Communications Inc | 1.04% | -19.4% | -0.25% |
これらを見ると、BMY(ブリストル・マイヤーズ・スクイブ)、ABBV(アッヴィ)、MRK(メルク)と製薬企業の売却が目立ちます。
前四半期の21年4月から6月末の期間においても、これらを含む製薬企業を売却していたので、それに続く売却ということになります。
業績や株価は概ね堅調ですが、割高感が強いことは否めず、製薬企業には見切りを付けたということなのかもしれません。
一方で、新規買いとなったバイオ医薬品関連のRPRX(ロイヤリティ・ファーマ)の株価には、割安感があるとは言えないものの割高感はありません。
そして、バークシャーのポートフォリオで4割強もの組み入れ比率を占めるAAPL(アップル)は、持分変動はなかったものの、株価上昇により、組み入れ比率が41.5%→42.8%へとやや上昇していました。
なお、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は最近、12月14~15日のFOMC(連邦公開市場委員会)で、テーパリング(量的緩和縮小)加速を議論する意向を示していました。
この背景には、インフレの長期化懸念があり、さらには利上げの前倒し観測も高まっていることがあります。
こういった状況というのは、将来的な業績拡大が多分に織り込まれている成長株にとっては逆風になると考えるのが一般的です。
実際に、前回の記事で触れた、デビッド・テッパー氏率いるアパルーサ・マネジメントのポートフォリオでは、ハイテク関連銘柄への比重が引き下げられていました。
ただ、前回も書きましたが、過去の利上げ局面を振り返ってみると、必ずしもハイテク関連銘柄の株価が軟調な値動きとはならなかったということも指摘されています。
しかも、先月11月からFRBによるテーパリングが開始されたとはいえ、依然として量的緩和が継続されていることには変わりなく、ハイテク関連銘柄の株価が今後も堅調な推移を示すことも十分に考えられます。
そういったことなどから、バークシャーがポートフォリオをどのようにマネジメントしていくのかは、引き続き注目していきたいところです。