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【2021年9月末時点】デビッド・テッパー氏率いるアパルーサ・マネジメントの最新ポートフォリオ

1.アパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパー氏

今回は、デビッド・テッパー氏が率いる、アパルーサ・マネジメントの2021年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

デビッド・テッパー氏は、ヘッジファンド・マネージャーの運用報酬ランキングで、2009年、2012年、2013年にトップとなり、その後も、2016年3位、2017年5位、2018年3位と驚異的な成績を残しています。

特に2009年には、リーマンショック後に大きく売られた大手銀行株などを大量に取得し、辛抱強く持ち続けたことで、最終的に70億ドルもの利益を上げたと言われます。

また、2013年には、市場で不人気だった航空株への投資でリターンを出すなど、特定業種への集中投資で成果を出してきたことで知られています。

2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

さて、デビッド・テッパー氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、11月中旬には、著名投資家たちの9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されていたというわけです。

3.アパルーサ・マネジメントのポートフォリオ

それでは早速、アパルーサ・マネジメントの2021年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位17銘柄を示しています。)

アパルーサ・マネジメントの2021年9月末時点でのポートフォリオを示した図

また、この四半期前の2021年6月末時点でのポートフォリオを示したのが下図になります。

アパルーサ・マネジメントの2021年6月末時点でのポートフォリオを示した図

21年3月末時点でのポートフォリオでは、組み入れ比率の上位7銘柄が5~40%の売却、21年6月末時点では、上位10銘柄が20~50%もの売却となっていましたが、今回はそこまで顕著な変化はありませんでした。

ただ、上位17銘柄の中で、下記の8銘柄には、10%以上の持分変動がありました。

ティッカー 銘柄名 組み入れ比率 持分変動
AMZN Amazon.com Inc 5.5% 44%減
OXY Occidental Petroleum Corp 4.7% 16.3%増
MU Micron Technology Inc 4.7% 51.4%減
M Macy’s Inc 3.8% 93.9%増
PCG PG&E Corp 3.1% 17.9%減
XOP SPDR Oil & Gas Exploration and Production ETF 2.3% 32.9%増
ALIT Alight Inc 2.2% 新規買い
GT Goodyear Tire & Rubber Co 2.2% 64.3%増

4.アパルーサ・マネジメントの主な売買銘柄と総括

続いて、21年7月から9月末までの間に、アパルーサ・マネジメントが売買した銘柄の中で、ポートフォリオ全体への影響度が0.2%以上あった銘柄を見ていくことにします。

ティッカー 銘柄名 組み入れ比率 持分変動 ポートフォリオへの影響度
ALIT Alight Inc 2.2% 新規買い 2.2%
M Macy’s Inc 3.8% 93.9%増 1.8%
EQT EQT Corp 1.4% 167.6%増 0.87%
GT Goodyear Tire & Rubber Co 2.2% 64.3%増 0.86%
OXY Occidental Petroleum Corp 4.7% 16.3%増 0.66%
XOP SPDR Oil & Gas Exploration and Production ETF 2.3% 32.9%増 0.58%
AR Antero Resources Corp 1.3% 59.9%増 0.48%
WMT Walmart Inc 0.33% 新規買い 0.33%
KSS Kohl’s Corp 1.7% 23.5%増 0.32%
ティッカー 銘柄名 組み入れ比率 持分変動 ポートフォリオへの影響度
BP BP PLC 0 完全売却 -0.22%
BABA Alibaba Group Holding Ltd 1.9% 10.3%減 -0.28%
FB Meta Platforms Inc 9.2% 5.2%減 -0.45%
PCG PG&E Corp 3.1% 17.9%減 -0.62%
NFLX Netflix Inc 0 完全売却 -0.72%
VIAC ViacomCBS Inc 0 完全売却 -1.38%
EMR Emerson Electric Co 0 完全売却 -1.47%
AMZN Amazon.com Inc 5.5% 44%減 -3.92%
MU Micron Technology Inc 4.7% 51.4%減 -5.1%

まず何といっても、7月初めに上場したばかりのALIT(アライト:企業の福利厚生管理などのソフトウェア企業)を大きく新規買いしているのが目に付きます。

また、EQT(EQT:天然ガス生産会社)やOXY(オクシデンタル・ペトロリアム:石油探鉱・生産会社)、XOP(石油・ガス探鉱生産ETF)、AR(アンテロ・リソーシズ:天然ガス探査・生産会社)と、エネルギー関連銘柄への投資が目立つことが分かります。

一方で、MU(マイクロン・テクノロジー:半導体製造)、AMZN(アマゾン:テクノロジー企業)、NFLX(ネットフリックス:コンテンツ・プラットフォーム)、FB(メタ・プラットフォームズ:テクノロジー企業)といったハイテク関連銘柄の売りも目立ちます。

実際、ポートフォリオ全体で見ても、21年6月末と9月末で比較してみると、エネルギーセクターが11.0%→13.8%、テクノロジーセクターが18.0%→14.8%と、他のセクターに比べて大きく変動していました。

エネルギー価格が高騰し、インフレの長期化が懸念される中で、エネルギーセクターへの比重を高めるのは自然なように思われます。

そして、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げの前倒し観測も高まる中では、利上げが逆風とされるハイテク関連銘柄への比重を下げるのも当然の投資行動かもしれません。

ただ、過去の利上げ局面を振り返ってみると、必ずしもハイテク関連銘柄の株価が軟調な値動きとはならなかったということも指摘されています。

しかも、今月11月からFRBによるテーパリング(量的緩和縮小)が開始されたとはいえ、依然として量的緩和が継続されていることには変わりありません。

中国企業の過剰債務問題や、インフレ長期化懸念など、先行き不透明感も強く残る状況下では、やはりGAFAMに代表されるようなハイクオリティ銘柄に資金が集中するという流れは、そう簡単には変わらないのではないでしょうか。

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