相場のデータ・指標

デビッド・テッパー氏率いるアパルーサ・マネジメントの最新ポートフォリオ(2021年6月末時点)

1.アパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパー氏

今回は、デビッド・テッパー氏が率いる、アパルーサ・マネジメントの2021年6月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。

デビッド・テッパー氏は、ヘッジファンド・マネージャーの運用報酬ランキングで、2009年、2012年、2013年にトップとなり、その後も、2016年3位、2017年5位、2018年3位と驚異的な成績を残しています。

特に2009年には、リーマンショック後に大きく売られた大手銀行株などを大量に取得し、辛抱強く持ち続けたことで、最終的に70億ドルもの利益を上げたと言われます。

また、2013年には、市場で不人気だった航空株への投資でリターンを出すなど、特定業種への集中投資で成果を出してきたことで知られています。

2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務

さて、デビッド・テッパー氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。

これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。

この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。

ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。

また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。

さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。

つまり、8月中旬には、著名投資家たちの6月末時点でのポートフォリオが数多く公開されていたというわけです。

3.アパルーサ・マネジメントのポートフォリオ

それでは早速、アパルーサ・マネジメントの2021年6月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位17銘柄を示しています。)

アパルーサ・マネジメントの2021年6月末時点でのポートフォリオを示した図

また、この四半期前の2021年3月末時点でのポートフォリオを示したのが下図になります。

アパルーサ・マネジメントの2021年3月末時点でのポートフォリオを示した図

21年6月末時点のポートフォリオでは、組み入れ比率の上位10銘柄はいずれも20~50%もの売却となっていました。

21年3月末時点のポートフォリオでも、組み入れ比率の上位7銘柄がいずれも5~40%の売却となっていたので、それに続く格好となっています。

また、保有銘柄数で見ても、21年3月末時点での68銘柄から、21年6月末時点では54銘柄へと減少していました。

4.アパルーサ・マネジメントの新規・買い増し銘柄と総括

続いて、21年3月末から21年6月末までの間に、アパルーサ・マネジメントが新規買い、もしくは買い増した、以下の6銘柄について見ていきたいと思います。

ちなみに、この6銘柄と、変化なしの7銘柄以外は、いずれも全量または一部が売却となっています。

ティッカー 銘柄名 組み入れ比率 持分変動
UBER Uber Technologies Inc 2.11 新規買い
PHM PulteGroup Inc 1.7 新規買い
BODY The Beachbody Co Inc 0.43 新規買い
TCVA TCV Acquisition Corp 0.12 新規買い
MOS The Mosaic Co 1.63 約129%増
FCX Freeport-McMoRan Inc 1.54 約33%増

そして下記は、上記の6銘柄について、企業の概要と株価の値ごろ感をそれぞれ付記したものになります。

  • UBER(ウーバー・テクノロジーズ)
    ライドシェアなどを手がけるテクノロジー企業。大幅な赤字継続。株価も軟調。
  • PHM(パルトグル-プ)
    米国最大の住宅メーカーのひとつ。業績は右肩上がりで、株価も割安。
  • BODY(ビーチボディ)
    アメリカのフィットネスおよびメディア会社。21年初めに上場したばかりで、赤字が継続しており、株価も軟調。
  • TCVA(TCVアクイジション)
    SPAC(特別買収目的会社)で、21年4月に上場したばかりで、赤字継続、株価も軟調。
  • MOS(モザイク)
    肥料の大手生産会社。業績は横ばい、やや割高感あり。
  • FCX(フリーポート・マクモラン)
    世界最大級の銅生産量を誇る米鉱山会社。業績は直近で好調も割高感やや強い。

これらは、いずれも株価が横ばいあるいは軟調な動きとなっているため、逆張りでの買いではないかと予想されます。

ただ、主力銘柄のポジションを減らす中で、あえて新規買いもしくは買い増しするような銘柄なのかは、個人的には疑問です。

いずれにしても、多くの銘柄のポジションが引き下げられていることから、デビッド・テッパー氏は、米国株の先行きに関しては弱気の見方をしているのかもしれません。

年内あるいは、22年の初めからテーパリングが開始される見込みであることを併せると、今後、米国株が軟調な値動きとなる展開は十分に想定されます。

とはいえ、過去の相場からすると、米国株が本格的な調整局面となるのは、テーパリング後に、利上げが開始された後ではないかと考えています。

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