読書録・書評

【読書録・書評】『10万円から始める! 割安成長株で2億円』

1.本書の概要

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

まずは、本書の概要からです。

本書は、サラリーマン投資家として、2002年からの17年間で株式投資によって資産2億円を達成したという弐億貯男氏によって書かれています。

なお、本書の章立ては、次のようになっています。

  • Prologue:株式投資で生涯賃金2億円を稼いでしまった!
  • Step 1:個人投資家は「割安成長株」への中長期投資がベスト
  • Step 2:「割安成長株」を見つけるための5つのポイント
  • Step 3:手っとり早く「割安成長株」を見つけるならIPO銘柄
  • Step 4:「割安成長株」の保有テクニック
  • Step 5:「割安成長株」の売りどきを極める
  • Step 6:新型コロナショックのような不測の事態への対処法
  • Step 7:投資リスクをコントロールする12のポイント
  • Epilogue:サラリーマン投資家として資産5億円を目指す

2.「割安成長株への中長期投資」の概要

まず、Prologueでは、著者が用いている資料として、次のものが挙げられています。

  • 四半期に一度発表される決算短信1ページ目の売上と利益
  • 決算説明資料
  • 個人投資家向け説明会資料
  • 証券会社サイトで無料で読める「会社四季報」情報

次のStep1では、著者の実践している「割安成長株への中長期投資」について説明されています。

割安株の指標としては、PER15倍以下、できれば10倍以下が望ましく、一方で成長株かどうかは、直近2~3年が増収増益かで判断するとあります。

中長期投資に関しては、2~3年程度を指し、この程度なら「会社四季報」や「IR情報」から見通すことができると言います。

ただ、保有期間は短期となることもあれば長期となることもあり、ケースバイケースで臨機応変に対応するとのことです。

さらに、「現金買付余力」として手元資金の半額は残しておくとも書かれています。

3.割安株の見つけ方

Step2は、割安株の見つけ方についてで、著者は「銘柄スクリーニング」はほとんど利用せず、次の3つをベースにすると言います。

  • ブログやTwitter、マネー誌などで「割安」と書かれた銘柄
  • 昨年・今年上場の「IPO(新規上場)」銘柄
  • 「立会外分売」をする銘柄

そして、その中から、以下の5つのポイントで、割安成長株を絞り込んでいきます。

  1. 成長性:直近2~3年は「増収増益」か?
  2. 割安性:「PER」が15倍以下か?(10倍に近いほうが望ましい)
  3. 安定性:「配当性向」を30%以上公約しているか?
  4. 利回り:「配当利回り」が3%以上か?
  5. ビジネスモデル:「ストック型ビジネス」を展開しているか?

2.では、PERに関しての注意事項が書かれています。

それは、人材派遣銘柄や輸出関連銘柄のような景気敏感株では、PERで割安に見えても、株価が急落してしまうケースがあるということです。

また、「特別利益」などによって1株利益がかさ上げされ、PERが低くなるようなケースもあるため、過去の純利益の推移についても確認する必要があると述べられています。

5.の「ストック型ビジネス」については、その代表例として、ホームセキュリティ、不動産管理、マンション向けの光ファイバー網、ウォーターサーバー、中古車ローン、BtoBで企業向けのサービスを手がける会社などが挙げられています。

上記の他に、判断材料として参考にしているものとして、社長インタビューの動画や、中間決算時の業績進捗率、中期経営計画などにも言及されています。

4.IPO銘柄から割安成長株を見つける

Step3では、IPO銘柄、特にIPOセカンダリー投資について書かれています。

その最大のポイントは、IPO直後の過熱感がクールダウンし、株価が落ち着いた銘柄や投機対象の圏外になっている銘柄を、割安感が出てきたタイミングで拾うことになります。

それには、数ヵ月前にIPOした銘柄だけでなく、1~3年前にIPOした銘柄までさかのぼって、IPOセカンダリー投資の対象を探してみることを勧めています。

また、IPOのセカンダリー投資も、基本的には割安成長株を見つけるテクニックと同じだと言います。

つまり、業績がよく成長性はあるものの、株価が低迷している状況を見つけて、ほかの投資家が目をつける前に買うということです。

なお、IPOセカンダリー投資では、大型株も狙い目だと述べられています。

5.ポートフォリオマネジメントと売り時

Step4では、ポートフォリオマネジメントについて書かれています。

まず著者は、分散投資のリスクとして次の2つを挙げています。

  • 分散しすぎると保有株の情報に目が行き届かなくなる
  • 少額分散すると大きく値上がりしても資産が増加しにくい

このような理由から、少数の銘柄に集中投資を行い、その代わりに現金買付余力を十分高めておくと言います。

具体的な銘柄数に関しては、運用額が200万円なら2~3銘柄、500万円なら3~4銘柄、1000万円なら4~5銘柄に厳選し、運用額が2000万円以降でも8~10銘柄にとどめるとあります。

続いて、Step5では、売り時について説明されています。

ただ、著者は損切りや利益確定に関して、機械的あるいは一律のルールは定めていないと言います。

割安成長株の中小型株の場合、特に悪材料がなくても、株価が10%程度下落することは珍しくありません。

そのため、PERから見て割安で、業績が増収増益であれば、10%程度の下落では損切りしなくてよいと判断しているとのことです。

一方で、躊躇なく損切りするタイミングは、その銘柄に投資した理由が崩れたときで、例えば、「ビジネスモデルが崩れてしまい、業績見通しを下方修正して減益決算になったケース」です。

また、投資した理由が崩れていないときでも、全体的な相場悪化で損切りすることがあったり、損切りした銘柄であっても、業績の成長が期待できる場合は、株価をウォッチし続けて再購入することもあると言います。

そして、保有株を売ってもすぐに新たな銘柄を買わないということにも言及されています。

それは、保有株を売るタイミングと狙っている銘柄を買うタイミングが同時に好機になるということはまず考えられず、いったんは資金を手元で休めておくことが望ましいためです。

6.総括

本書で紹介されている銘柄選別法だけに関して言えば、かなり初歩的なものだと感じざるを得ませんでした。

ただ特筆すべきは、手元資金の半額は「現金買付余力」として残しておく、という点です。

他にも、Step7で書かれている、リスクをコントロールする12のポイントからは、「余裕資金でやる」、「信用取引はしない」、「手を広げすぎない」など、リスク管理を徹底していることがうかがえます。

つまり、リスク管理をしっかりと行えば、平凡な投資戦略でもうまくいくということの好例だと言えます。

とはいえ、運用資産の半分を現金として保有するというのは、かなり保守的に思われる方が多いかもしれません。

ですが、そのくらいを意識していないと、良い銘柄が出てくるとすぐに買ってしまったりして、あっという間に現金比率が下がってしまうといったことが多いかと思われます。

私も、少なくとも3割前後は現金として手元に置いておくことを意識してはいますが、気づくと現金比率が下がってしまっていることが多いので、改めて5割前後を意識することにしたいと思いました。

もちろん、相場環境が良いときは、この限りではないのですが。

その他にも、IPO後1~3年の銘柄から投資候補を探してみるというのも、実際に試してみたいと思いました。

そういったことなどを含めて本書では、実践を重ねてきた著者ならではの内容というのも散見されたように感じられました。

 

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