ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、バフェット指数、騰落レシオ、信用評価損益率といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
日経平均株価は、ここしばらくPER 13倍相当の株価水準を下回って推移してきましたが、直近では株価上昇とともに平均EPSの低下もあって、PER 14倍相当の株価水準を上回ってきています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
一方の平均PBRでは、日経平均株価がPBR1.2倍相当の株価水準に迫る勢いとなっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
ここしばらく、海外投資家は売り越し傾向となっていましたが、2019年10月初めより買い越し傾向へと転じ、それとほぼ一致するようにして日経平均株価も上昇傾向となっていることが分かります。
なお、2019年10月第1週から12月第2週までの累計額は、約2.3兆円の買い越しとなっています。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めていることが分かります。
3.ドル建て日経平均株価
そして、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価についても見ていきます。
ドル建て日経平均株価を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、2015年以降を取り出したのが、下図になります。
この図から明らかなように、日経平均株価はドル建て日経平均で200ドルの水準を大きく超えてきています。
この上昇が、2018年にあったような一時的なオーバーシュートで終わってしまうのかどうか、今後注目していきたいところです。
4.NT倍率
また、海外投資家は一般に日経平均先物を売買することも多いため、NT倍率(=日経平均株価/TOPIX)についても見ていきます。
NT倍率と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日経平均株価はNT倍率を中心として、上下に乖離するような動きを見せていますが、ごく直近では日経平均株価の上昇に対し、NT倍率はほぼ横ばいでの推移となっています。
これは日本株が幅広く買われているということでしょう。
5.バフェット指数
続いて、バフェット指数を見ていきます。
バフェット指数=株式時価総額/名目GDP×100
バフェット指数は上記の式で求められますが、日本株では株式時価総額に「東証1部の株式時価総額」が一般に用いられますので、ここでもそのデータを使用しています。
そして、バフェット指数の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
バフェット指数では、100(赤いライン)を超えていると相場が過熱圏にあるとされていますが、この図からは依然として過熱圏の水準にあることが分かります。
6.騰落レシオ
さらに、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは「だまし」の多い指標でもあるため、これだけでは何ともいえないところですが、直近の騰落レシオでは、そこまで過熱しているというわけではなさそうです。
7.信用評価損益率
最後に、信用評価損益率についてです。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
そして直近では、日経平均株価が上昇しているにもかかわらず、信用評価損益率の改善がほとんど見られていません。
これは、日経平均株価が高値圏にあるように見えることから、信用売りを行って損失を膨らませている投資家が一定数いるためだと思われます。
一般的な信用取引には6ヵ月の返済期限があることから、このまま日経平均株価が高値で推移するようだと、信用売りの買戻しによる一段の上昇もあり得るでしょう。
8.総括
日経平均株価は、平均PER・PBRという観点からは割安感の修正が進み、その要因としては海外投資家の買い越し傾向が強かったことが挙げられます。
また、企業の予想利益(平均EPS)が減少傾向にあるにもかかわらず、日経平均株価が上昇している要因としては、FRB(米連邦準備理事会)による3会合連続の利下げ(7・9・10月)の影響もあったはずです。
このように、日経平均株価は海外情勢の影響を受けやすいと言えますが、2020年11月に米大統領選挙が控えていることを考えると、一時的な調整はあったとしても、相場の下支えが期待できます。
そして、信用評価損益率のところでも書いたように、日経平均株価がこのまま高値で推移するようだと、さらなる上昇というのも十分に考えられます。
なお、日経平均のアノマリーとして、11月末~12月末に大きく上昇し、1月に調整、2月中旬~4月中旬に再度上昇するという株価パターンがありますので、このことは意識しておくと良いかもしれません。