ここでは、直近(2019年12月)の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図からは、投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格が、強い相関性を認めていることが分かります。
直近では、投機筋のネットポジションは横ばいから増加傾向にあり、WTI原油先物価格も上昇傾向となっています。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間にも、強い相関性があることが見て取れます。
直近では、両者の乖離が広がったままとなっていますが、上の長期の推移からすると、乖離が広がっているというわけではなく、何とも言えないところです。
ただ、いずれにしても、このBEIからは原油価格にあまり上昇余地がないように見えます。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの図からは、EIAとAPIの在庫統計ともに、直近では増加傾向となっているにもかかわらず、WTI原油先物価格が底堅さを保っていることが見て取れます。
4.総括
以上のことから、WTI原油先物価格は底堅い値動きとなってはいるものの、上昇余地には乏しいように見えました。
そして、原油の供給面ということでは、12月6日に、石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアなどによる協調減産の強化が、2020年3月末まで行われることで合意となっていました。
ただ、減産量のインパクトは小さく、影響は限定的なうえに、米国やブラジルなどでは増産をしています。
一方、需要面では、米中貿易摩擦の影響により世界経済が減速すると、需要も減少することが予想されます。
なお、12月15日には、米国の対中追加関税「第4弾」の全面発動が予定されていますが、これはどうやら延期となりそうで、これにより一時的に原油相場が上昇する可能性はあります。
とはいえ上述のように、大きく上昇していくとは到底思えず、引き続き原油相場は方向感の乏しい展開が続きそうです。