ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、バフェット指数、騰落レシオ、信用評価損益率といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
この図から、日経平均株価は昨年12月末の下落からやや持ち直しはしたものの、依然としてPER 13倍相当の株価水準を下回っていることが分かります。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
一方の平均PBRは、昨年の12月25日に0.99倍で底を打って、直近ではPBR 1.1倍相当の株価水準での推移となっています。
なお、本日3月29日時点での、PBR 1.0倍相当の日経平均株価は18934円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、海外投資家による売り越し傾向が2018年から継続していることが分かります。(直近の3月第3週までは8週連続、累計で約2兆円の売り越しとなっています。)
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めていますが、直近でやや乖離が生じていることが見て取れます。
ここで見ている海外投資家の売買動向は現物株についてのものですので、海外投資家が日経平均の先物に関しても売り越し傾向となっていることが要因ではないかと思われます。
3.ドル建て日経平均株価
そして、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価についても見ていきます。
ドル建て日経平均株価を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図から、2015年以降を取り出したのが、下図になります。
足元で、日経平均株価は昨年末の下落から持ち直してきていましたが、ドル建て日経平均で見ると、200ドルの水準に近づきつつあることが分かります。
ですから、今後はこのドル建て日経平均で200ドルの水準が、日経平均株価の上値抵抗線となってくる可能性があるでしょう。
4.NT倍率
また、海外投資家は一般に日経平均先物を売買することが多いため、NT倍率(=日経平均株価/TOPIX)についても見ていきます。
NT倍率と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日経平均株価はNT倍率を中心として、上下に乖離するような動きを見せていますが、直近では両者の乖離がほとんど見られないことが分かります。
5.バフェット指数
続いて、バフェット指数を見ていきます。
バフェット指数=株式時価総額/名目GDP×100
バフェット指数は上記の式で求められますが、日本株では株式時価総額に「東証1部の株式時価総額」が一般に用いられますので、ここでもそのデータを使用しています。
そして、バフェット指数の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
バフェット指数では、100を超えていると相場が過熱圏にあるとされていますが、この図からは依然として過熱圏の水準にあることが分かります。
最近、東証1部再編が唱えられ、時価総額が基準の一つとなりそうですが、これはつまり、本来であれば1部上場基準を満たさないような企業が東証1部に数多く含まれているということを示しています。
そうなると、ここで用いている「東証1部の株式時価総額」が減少することは間違いなく、バフェット指数で言うところの過熱圏にあるような状況では既にないのかもしれません。
6.騰落レシオ
さらに、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは「だまし」の多い指標でもあるため、これだけでは何ともいえないところですが、直近の騰落レシオからは、日経平均株価は目先の天井圏や底値圏のいずれでもなさそうだと言えそうです。
7.信用評価損益率
最後に、信用評価損益率についてです。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされますが、この図からは、日経平均株価が目先の底値圏にあると言えそうです。
8.総括
ここまで見てきたように、当面の日経平均株価の下値は平均PBR 1.0倍相当の約19000円、上値はドル建て日経平均で200ドル水準の22000円前後(1ドル=110円で計算)ではないかと思われます。
そして、ドル円相場については、前回の記事の総括で述べたように円高方向を想定しています。
円高は日経平均株価にとって、どちらかというとマイナスに働くことが多いため、そうなると上値余地も下がることが予想されます。
ただ、日本株に大きな影響を及ぼす、海外投資家の過去10年間の売買動向を見てみると、やはり2月・3月は売り越し額が大きくなっています。
ですが、4月は買い越し額が年間で最も大きくなっており、また過去10年間の全てで買い越しとなっている唯一の月でもあるのです。
つまり、今年も同様の傾向が見られるのであれば、来月4月は海外投資家の買い越しによって、日経平均株価の上昇が期待できると言えます。
4月1日には新元号の発表もあり、相場も明るいムードとなりそうです。
とはいえ、今年は4月末より10連休という大型連休が控えているため、4月に上昇したところで、一部を利益確定しておくことが望ましいでしょう。