ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 100倍高のスゴ株!
- 著者:高山 緑星
- 出版日:2018/7/4
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略
1.書籍の概要
まずは、本書の概要からです。
本書では、好材料株や旬のテーマ株に投資して、テンバガー(10倍株)などといった大化け株を狙うための手法について書かれています。
なお、本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章:スゴ腕プロがやっているルーティンワーク
- 第2章:好材料発表銘柄でストップ高を狙え!
- 第3章:テーマ株で10倍高を狙う方法
- 第4章:IPO銘柄でテンバガーを達成する方法
- 第5章:大本命のスーパー大化け株 ハンドレッドバガーを狙え!
- 第6章:仮想通貨より凄い千円からのオプション投資
ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。
2.プロのルーティンワーク
まず第1章では、プロがやっているルーティンワークについて書かれています。
具体的には、以下のような内容が説明されています。
① 大引け後15時からは、日本取引所グループ(JPX)のホームページや、株探のホームページから、適時開示情報(会社開示情報)を閲覧し、好材料発表銘柄だけをピックアップしていく。
② 17時からのPTS(私設取引システム)夜間取引で、値上がり率ランキングをチェックする。
③ 値上がり率ランキング上位銘柄の好材料内容などを分析・研究する。
④ 以下の条件で好材料の大きさを見極める。
- 以下の1~4のうち、2つ以上を満たす
- 以下の5~7のうち、2つ以上を満たす(※5は必須)
- 最先端技術の開発またはオンリーワン性
- 大手企業との業務提携や採用
- 業績の大幅上方修正
- 旬な〇〇関連などのテーマ性
- 時価総額150億円以下
- チャートが底値圏
- PER 10倍以下
⑤ 7時半に株探で、今朝の注目ニュースを確認。気配で判断して成り行き買いを発注。
ここで、④の7.で「PER 10倍以下」とありますが、本書で例示されている、バルクホールディングス(2467)ではPER 90倍、セルシード(7776)ではPER 130倍と書かれており、この条件を満たす銘柄は限られたものだけとなってきそうです。
3.好材料銘柄の売買ルール
また、本書では、好材料発表銘柄やIPO株などの売買ルールとして、以下の8つが根幹を成すものとして挙げられています。
- 運用資金の半分で短期売買を繰り返し複利運用。残り半分の資金は本命大化け候補株数銘柄の中長期投資でテンバガー狙い
- 信用取引は現物取引で鍛錬を重ね、資金が増えてからにする。やるなら現金担保の2倍までの範囲内での取引を
- 買いのタイミングは3日連続ストップ高までの出来高急増1日目
- 買値を割ったら、決めた幅でロスカット
- 買った株数の半分は出来高急増3営業日前後で利益確定売り
- 株価が5日移動平均線を下回ってきた場合は、残り半分も全株利益確定売り
- 6日連続ストップ高前後は利益確定売り
- 新値九手前後または買った日を入れて9営業日目前後で利益確定売り
4.失敗例(不測の事態)
第4章では、失敗例として、ブライトパス・バイオ(4594)が挙げられています。
ブライトパス・バイオは、上図のように、2018年5月下旬に3日連続ストップ安売り気配で、ロスカットさえも不可能だったのです。
5.掲載銘柄のその後
ちなみに、本書で詳しく取り上げられている各銘柄のその後の株価推移を見ていきたいと思います。
バルクホールディングス(2467)
セルシード(7776)
オウケイウェイブ(3808)
リミックスポイント(3825)
FRONTEO(2158)
売買ルールでは、資金の半分で大化けを狙って中長期投資とありますが、こうやって見ていくと、あまり欲をかかず、短期売買に徹した方が良さそうに思えます。
もちろん、これらの銘柄が直近の高値を超えて大きく上昇していく可能性も無いとは言えませんが、あのソフトバンク(9984)ですら、未だに2000年に付けた高値を超えられていないことを考えると、そこまで期待はできないでしょう。
6.スーパー大化け株狙い
そして、第5章では、冒頭で次のように書かれています。
本章では「1銘柄で資産100倍を目指す夢のハンドレッドバガー」を狙う方法について語っていきましょう。全ては、前述してきた1~4章の投資手法の延長線上にあると考えてください。
そもそも、本書に書かれているような材料株投資は一般にリスクが高いものであり、株価が大きく下落したり、最悪の場合には企業が経営破綻に陥ったりといったことも十分に考えられます。
そのため本書の前半でも、急落を回避するための、細かい売りのルールについて述べられていました。
にも関わらず、「1銘柄で資産100倍を目指す方法」が、「1~4章の投資手法の延長線上にある」とは到底思えません。
それはさておき、ひとまず読み進めていくと、次のような記載があります。
問題は、オウケイウェイブのように大本命となった株を、全株売却してしまった場合、突っ込み買いや三角保ち合い上放れの買いで上手く買い直せるか、または、そのまま一段高となってしまった場合に、高値で買い直すのかという矛盾が発生します。
いったん数倍高した銘柄なので、三角保ち合い上放れにダマしが何度も現れる可能性があり、投資効率が悪くなったり、ロスカットを繰り返す羽目に陥る危険性があります。
ここで、オウケイウェイブに限りませんが、ダマしが多いため、新値更新で株数を多く買った直後に急反落すると大損してしまう可能性があり、「追撃買いでは建玉法で株数を減らす」とも書かれています。
この建玉法に関しては正しいというか、あるべき姿勢だと思いますが、これは冒頭の「1銘柄で資産100倍を目指す方法」とは明らかに矛盾しています。
そして、次のようにも書かれています。
結局、株式投資で儲けるためには、未来予測を高い精度で的中させるしかないのです。
本来であれば、将来のことは誰にも分らないため、売り方を工夫するなどの建玉法によって、リスクを軽減していく必要があります。
しかしこれでは、予測精度を高める必要があり、そのための努力が重要だと言っているようなものであり、本筋から外れた方向へと努力を傾倒してしまいかねません。
さらに、大本命と書いていたオウケイウェイブに関して、本書の中で筆者は、【5月6日付けレポートで「上場来高値更新から青天井相場再開に向かう」と予想】していました。
ですが、その後ほどなくして急落してしまったのは、上に載せたチャートの通りです。
もし仮に、この「1銘柄」だけに運用資金を集中させてしまっていたら、悲惨なことになっていたでしょう。
7.総括
本書では、最後に書いたように、論理的な一貫性が欠如している部分も見受けられますが、前半部分の内容については、運用資金のごく一部あるいは、少額であれば取り入れてみるのも面白いかもしれません。
ただし、リスクが高い手法であることには変わりなく、資金の大部分を失う覚悟でという注意書き付きではありますが。
また、最後の第6章に書かれている、オプション投資については、相場の急落を狙ってプット・オプションを購入するという至極真っ当な手法であり、これに関しても、宝くじのような感覚で少額でチャレンジしてみるのはありでしょう。
さて、東証マザーズのような新興市場の銘柄を、個人投資家が活発に売買している様子を見ると、本書のような手法を実践している個人投資家というのは、少なくないのではないかと思われます。
くどいようですが、本書にあるような手法というのは、確かに短期間で元手を大きく膨らますことができる可能性がありますが、それはあっという間に資金を大きくすり減らしてしまうリスクと常に隣り合わせでもあるということです。
ですから、こういった手法というのはコアではなく、あくまでサテライトとして、運用資金のごく一部で行うべきではないかと考えています。
- 100倍高のスゴ株!
- 著者:高山 緑星
- 出版日:2018/7/4
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略