相場のデータ・指標

「米国株(S&P 500)」のデータ分析(2019.12)(PER・CAPEレシオ・ブルベア指数・長短金利差)

ここでは、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CAPEレシオ・ブルベア指数・長短金利差などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.S&P 500とPER

まずは、S&P 500に採用されている500銘柄の平均PERとS&P 500の長期推移を見ていきます。

S&P500とPERの長期推移を示した図(2019.12)

そして、この図の1995年以降の推移だけを示したのが以下の図です。

S&P500とPERの直近の推移を示した図(2019.12)

この図から、1990年代後半以降では、ITバブル後やリーマン・ショック後のような特殊な状況を除くと、PERは概ね15倍~35倍で推移しているといえます。

そこで、同期間における、PERが15倍~35倍に相当する株価とS&P 500の推移を示してみたのが以下の図になります。

S&P500とPER別株価の推移を示した図(2019.12)

S&P 500は2019年初に急落していましたが、そこからは力強い値動きとなっており、過去最高値を更新し続けています。

なお、2000年前後のITバブル前にはPERが35倍近くまで上昇する場面もありましたが、2008年のリーマン・ショック前のPERは25倍程度までの上昇に過ぎませんでした。

つまり、PERだけで割高かどうかを判断するのには限界があることが分かります。

2.S&P 500とCAPEレシオ

次に、景気循環調整後の株価収益率(PER)である、CAPEレシオ(シラーPER)とS&P 500の長期推移を見ていきます。

S&P500とCAPEレシオの長期推移を示した図(2019.12)

そして、この図の1995年以降の推移だけを示したのが以下の図です。

S&P500とCAPEレシオの直近の推移を示した図(2019.12)

CAPEレシオでは、一般に25倍を超えると株価が過熱圏にあるという見方がされますが、直近では30倍前後での推移となっていることが分かります。

ちなみに、過去に30倍を超えたのは、1929年の世界大恐慌の前や、2000年のITバブルの時だけであり、2008年のリーマン・ショック前には25倍以上で推移はしていましたが、30倍まではいきませんでした。

また、CAPEレシオに関しても、15倍~40倍に相当する株価とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。

S&P500とCAPEレシオ別株価の推移を示した図(2019.12)

この図から、直近のS&P 500は、2000年のITバブル時ほどではなくても、2008年のリーマン・ショック前よりは割高な水準にあることが分かります。

また、2008年のリーマン・ショック前には、何年もの間にわたって、CAPEレシオが25倍を超えて推移していたことも見て取れます。

そういった意味では、CAPEレシオもPERと同様にこれだけで割高かどうかを判断するのには限界があり、相場転換のタイミングを計ることにも向きません。

PERやCAPEレシオはあくまで参考程度のものだといえます。

3.S&P 500とブルベア指数

続いて、代表的なブルベア指数である、Investors Intelligenceの Sentiment Index(Advisor’s Sentiment)について見ていきます。

このSentiment Indexについて分析している、Yardeni Researchのレポートから一部を抜粋したのが、以下の図です。

S&P500とブルベア指数の推移を示した図(2019.12)

この図では、Bull / Bear Ratioが3倍以上となっている期間が赤色の線で示されており、その期間では強気派が多いことを示しています。

直近では、赤線が密集しており、強気派が増加傾向にあることが分かります。

また、この図から見て取れるように、2013~2015年、2016~2018年に赤線が密集した後に、S&P 500が調整局面を迎えていることを考えると、再びいつS&P 500が調整局面を迎えても不思議ではないと言えます。

4.S&P 500と長短金利差(米国債利回り差)

最後に、長短金利差として、米10年国債利回りと米2年国債利回りの差(=10年国債利回り-2年国債利回り)を見ていきます。

※通常、短期金利とは期間が1年未満の金融資産や負債の金利のことをいいますが、ここでは便宜上2年国債利回りを短期金利として扱っています。

そして、米国の長短金利差とS&P 500の推移を示したのが以下の図です。(なお、見やすくするために、右軸の長短金利差のスケールは反転しています。)

S&P500と米国長短金利差の推移を示した図(2019.12)

この図からは、2001年前後のITバブル崩壊や、2008年のリーマン・ショック前に米国債利回り差が0%以下と、2年国債利回りの方が10年国債利回りよりも高い状態で推移する「逆イールド」と呼ばれる状態になっていることが分かります。

そして、今年2019年の8月末から9月初めには、この長短金利差(米国債利回り差)がゼロからマイナスとなっていました。

また直近においては、0.26%とやや峠を越えたような状況であり、これから注意が必要になってくるかもしれません。

というのも、過去3回あった「逆イールド」では、発生から景気後退までに1年7ヵ月から2年10ヵ月の期間があったからです。

しかも、その間にS&P 500では24~34%の上昇がみられており、今回もS&P 500は、逆イールド発生時の2900前後から、直近の3200超へと10%以上の上昇をみせているためです。

5.総括

S&P 500は、2019年の1年間で約30%と大きな上昇をしていますが、ここまで見てきたように、あと1~2年のうちにいつ調整局面が訪れてもおかしくはありません。

世界経済が決して好調というわけではないにもかかわらず、株価が大幅に上昇している背景としては、大きく次の2つが挙げられます。

それは、FRB(米連邦準備理事会)が7月、9月、10月と3会合連続で利下げを行っていたことや、2020年11月に米大統領選挙を控え、米中貿易問題の激化が回避されていることです。

そして、1928年以降で、S&P 500が20%超の上昇をした年の翌年は、年平均上昇率が6.6%と、全ての年の年平均上昇率である7.6%を下回っているというデータもあります。

以上のことを踏まえると、2020年の米国株は、2019年のような大きな上昇は見込みづらく、また調整局面への警戒も必要になってくるとは思われますが、リーマン・ショックなどのような金融危機が、今すぐやってくるような状況でもないでしょう。

ただ、前回の「米長期金利のデータ分析(2019年12月)」の総括でも書いたように、中国で社債のデフォルトが急増していることや、同じく中国で2021年と2022年に大量の社債償還が控えていることなどを考えると、いつまでも楽観してはいられません。

これは中国に限ったことではありませんが、現状は世界的に債券バブルへの過程をたどっているように見えるのです。

そのため、危機の兆候を見極めるには、前回の「米国株のデータ分析(2019年9月)」の総括で書いたように、「HYG」や「BKLN」、「SNLN」といった信用度の低い債券や証券のETFの値動きに注目しておくのが良いでしょう。

 

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