ここでは、直近(平成30年9月)の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
これらの図から、投機筋のネットポジションはロング(買い建て)へと大きく傾いていましたが、それが減少傾向にあることが分かります。
一方で、WTI原油価格は60ドル台後半を保っていることから、実需筋の需要が高まっていると言えるかもしれません。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
これらの図から、WTI原油先物価格とブレーク・イーブン・インフレ率は特にここ数年において、強い相関性を示していることが分かります。
そして、ここ数か月では、WTI原油価格とブレーク・イーブン・インフレ率との間に若干の乖離が生じつつあり、期待インフレ率と比べて原油価格が強さを保っているように見えます。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの図から、EIAとAPIの原油在庫統計はともに、ここ4~5年においてWTI原油先物価格と強い相関性を示しています。
ただ、原油在庫統計が、原油価格の後追いとなってしまっていることも事実です。
ですから、原油在庫統計をそのまま原油価格の予測に用いるというよりは、原油の在庫が今後どうなっていくのかを考えることの方が重要だと言えそうです。
4.総括
EIAとAPIの原油在庫統計を見て分かるように、原油在庫は減少傾向にあります。
これにはいくつかの要因が挙げられます。
まずは、トランプ政権によるイランへの制裁から、イラン産原油の輸入が減少していることです。
また、事実上の破産状態に陥っているベネズエラの原油輸出も大きく減少しています。
そして、米国においてもシェールオイルの生産量に減速の兆しが見え始めており、EIA(米エネルギー情報局)は最近、2019年の国内原油生産を下方修正しています。
さらに、昨年末のシェール企業に対する調査では、ほとんどの企業が採算ラインを60~65ドル以上と回答していました。
これらのことから、原油在庫の減少傾向は今後も続く公算が高いと言えます。
また、WTI原油価格も、世界的な景気減速などが無い限り、下値は底堅く推移し、さらに上昇していく可能性も十分にあるのではないでしょうか。