読書録・書評

【読書録・書評】『ETFはこの7本を買いなさい ―――世界No.1投信評価会社のトップが教えるおすすめ上場投資信託』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、「インデックス投資」という投資法について書かれています。

インデックス投資とは、「世界中に分散したインデックスファンドを積み立て投資して長期保有すること」です。

また、インデックスファンドというのは、日経平均株価などの各種指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す投資信託のことになります。

なお、本書の章立てとしては、以下のようになっています。

  • 第1章:世界で存在感を高めるインデックスファンド
  • 第2章:インデックス投資の最強ツール「海外ETF」に注目
  • 第3章:今、ETFへの注目度が急上昇しているのはなぜか?
  • 第4章:ETFを買う前にここだけはチェック! 資産運用の最新常識
  • 第5章:ETFはこの7本を買いなさい
  • 第6章:もっとこだわりたい人へ 一歩進んだETFの活用法
  • 第7章:ETFはどこで、どう買ったらいいのか?

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.アクティブファンドとインデックスファンド

第1章では、アクティブファンドとインデックスファンドとの比較について主に書かれています。

例えば、国内の日本株ファンドでは、「8割近くのアクティブファンドは、インデックスに負けてしまっていた」ということです。

また、米国籍や欧州籍の株式ファンドにおいても、同様の結果もしくは、さらに惨憺たる結果であったとのことでした。

このように、多くのアクティブファンドがインデックスに負けてしまう理由としては、その高いコストが挙げられています。

そして、投信選びでは、「コストの低さ」が重要であり、「1%の違いが長期の運用成績に大きく影響する」ということも、具体例を挙げて示されています。

3.ETFとインデックスファンド

第2章では、ETFとインデックスファンドとの比較や、海外ETFについて書かれています。

ETFについては、次のように説明されています。

ETFは「Exchange Traded Fund」の略称で、日本では「上場投資信託」とも呼ばれています。市場に上場されており、株式のように売買できるのが特徴です。

このETFとインデックスファンドとの比較については、以下のように書かれています。

ETFの最大の魅力は、インデックスファンドと比べても信託報酬(運用管理費用)が低水準であることです。また、株式のようにリアルタイムで取引ができる機動性、指値注文や成行注文も可能という利便性もあります。

一方、「購入手数料」「少額での金額指定購入の可否」という点では、ETFはインデックスファンドに見劣りします。

ですので、ある程度まとまった額を投資する場合には、ETFを活用することが望ましいといえます。

そして、ETFの活用に関しては、国内のETFではなく、アメリカやヨーロッパ等、海外の市場に上場されている、いわゆる「海外ETF」が推奨されています。

というのも、国内のETFには、「純資産額が大きいもの」や「出来高が大きいもの」が少なく、「買ってもいい」といえるものが限られてしまうためです。

4.ロボ・アドバイザー

第3章では、国内外のETF市場の動向について書かれています。

また、ETFの伸びを後押しする存在として、ロボ・アドバイザーについても触れられています。

ロボ・アドバイザーでは、自分の年齢や保有資産の状況、リスク許容度、今後のライフプランといった項目について質問に答えていくだけで最適な資産配分や具体的な金融商品を選んでもらえるようになっています。

そして、このロボ・アドバイザーと同様に、資産配分から商品選び、リバランスまですべてお任せにできるサービスとして、「ファンドラップ」にも触れられている。

ただ、「ファンドラップ」については次のように書かれています。

ファンドラップには、コストが非常に高いという問題があります。各社のファンドラップはさまざまなコストがかかりますが、平均では年間におよそ3.5%程度の管理コストが必要なのです。

一方、ロボ・アドバイザーでは、運用されるETFの信託報酬の他に、投資顧問手数料として年1.0%がかかります。

そのため本書では、ロボ・アドバイザーは、ファンドラップに比べて、手数料が低く抑えられていると書かれています。

しかし、せっかく信託報酬(運用管理費用)の低いETFを選んでいるのに、投資顧問手数料なるものが、毎年1%も徴収されるようでは本末転倒と言わざるを得ません。

少しの手間をかけてでも、投資するETFとその配分比率を決めて、自分で直接ETFに投資すべきです。

はっきり言って、ロボ・アドバイザーなんて利用すべきではありません。

5.海外ETFを活用した分散投資

第4章では、分散投資の重要性やポートフォリオの具体例が示されています。

この中で、分散投資したポートフォリオの具体例として、次の2つが挙げられています。

  • スタンダード運用タイプ:投資期間5~10年程度で、年率5%前後の運用を目標とする
  • 積極運用タイプ:投資期間10年以上で、年率5%以上の運用を目標とする

そして、それぞれの資産配分は以下のようになっています。

  • スタンダード運用タイプ:株式60%(国内株式10%、先進国株式40%、新興国株式10%)、債券40%(先進国債券30%、新興国債券10%)
  • 積極運用タイプ:株式100%(国内株式20%、先進国株式50%、新興国株式30%)

これらのポートフォリオでは、いずれも株式の割合が高くなっていることが分かります。

しかも、100%全てを株式や債券に投じています。

ですが、このようなポートフォリオでは、リーマン・ショックのような金融危機の際に、50%前後の大幅な下落に見舞われることは間違いありません。

そして、自身のポートフォリオの価値が半分も毀損していくような状況下で、これらのポートフォリオを保持し続けるというのは、多くの投資家にとって容易なことではありません。

もしそのまま何年か保有し続けることができれば、ポートフォリオは元の水準にまで回復していくだろうと、口で言うのは簡単です。

しかし、「言うは易く行うは難し」であり、これらのポートフォリオに関しては、投資家の心理的要素に対しての配慮に欠けていると言わざるを得ません。

6.国内外ETFの厳選7本

次に第5章では、ETFを選ぶ際のチェックポイントについて書かれており、それを踏まえて厳選された7本のETFが紹介されています。

ETFを選ぶ際のチェックポイントとしては、コスト(信託報酬)が十分に低いのはもちろんですが、純資産残高と出来高が十分にあるかも大事になってきます。

純資産残高や出来高が小さいと、ETFが償還されてしまう(運用会社が運用を止めてしまう)リスクや、「売りたいときに売れない」などといった流動性リスクが生じてきてしまうためです。

出来高に関しては、最低でも1万株、できれば3万株ほどはあった方が望ましいと書かれています。

また、出来高が少ないと、基準価額(実際の価値)と取引価格との「乖離率」も大きくなってしまいます。

この乖離率については、モーニングスターのウェブサイトから確認することができますが、おおまかには±0.5%以内であれば問題ないと考えて差し支えないと書かれています。

そして、これらを踏まえて厳選された、7本の国内外ETFが紹介されており、具体的には以下のようなものとなっています。

  • バンガード・トータル・ワールド・ストック ETF(VT):グローバル株式、信託報酬:0.11%
  • i シェアーズ・コア・S&P 小型株 ETF(IJR):先進国小型株式、信託報酬:0.07%
  • MAXIS トピックス上場投信(1348):国内株式、信託報酬:0.078%
  • バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツ ETF(VWO):新興国株式、信託報酬:0.14%
  • i シェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG):米国債券、信託報酬:0.05%
  • バンガード・トータル・インターナショナル債券 ETF (米ドルヘッジあり)(BNDX):先進国債券(除く米国)、信託報酬:0.12%
  • バンガード・米ドル建て新興国政府債券 ETF(VWOB):新興国債券、信託報酬:0.32%

さらに第6章では、もっとこだわりたい人へということで、その他のお薦めの国内外ETFとして13本が紹介されています。

最後の第7章では、国内外ETFの買い方などについて書かれています。

その中で、海外ETFの売買手数料が低いのは、マネックス証券とSBI証券で、ともに約定代金の0.486%、最低手数料は5.4ドル、上限手数料は21.6ドルとなっていると書かれています。

おそらく本書が出版されてから現在までの間に手数料の引き下げが行われたのでしょうが、現在では楽天証券も上記と同じ手数料体系となっています。

なお、この手数料体系について考えてみると、約定代金が1111(≒5.4/0.00486)ドル以下の場合は、手数料率が0.486%よりも高くなることになります。

また、約定代金が、4444(≒21.6/0.00486)ドルを超える場合には、手数料率が0.486%よりも低くなります。

つまり、海外ETFの売買に関しては、ある程度まとまった資金での取引でないと、手数料がやや割高になってしまうので、このことには注意しておきたいところです。

7.総括

国内のETFを利用しているという人は多くても、海外ETFを利用しているという人はそう多くはないのではと思われます。

ですが、国内のETFよりも海外ETFの方が、有用な商品が圧倒的に多いといえます。

そんな海外ETFへの投資を考える際の入門書としては、本書は最適な内容になっているのではないかと思います。

そして、投資信託やファンドラップ、ロボ・アドバイザーなどへ資金を投じるくらいであれば、ここで取り上げたような国内外のETFを買った方が、断然有利です。

また、既にそういった取るに足らない金融商品・サービスに投資してしまっている場合でも、ここで取り上げたようなETFへと乗り換えた方がいいのは間違いありません。

もちろん、多少の手間はかかりますが、その程度の手間も惜しむようであれば、初めから投資などはせずに、ひたすら預貯金に励んだ方がいいでしょう。

私たちが最も避けなければならないのは、下手な金融商品に手を出して、いたずらに資金を失ってしまうことなのですから。

 

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