今回はアノマリーについてです。ここでは、全てというわけにはいきませんが、代表的なアノマリーについてまとめてみました。
1.アノマリーとは?
アノマリー(anomaly)には、変則や例外などといった意味がありますが、こと投資においては、はっきりとした理論的根拠を持つわけではないが、経験的に起こることの多い事象のことを指します。
アノマリーをもとにした投資は、実際にファンドなどでも行われおり、これによって市場平均を超えるリターンを上げている機関投資家も存在します。
また、市場の効率性に関する実証研究では、効率的市場仮説への反証として、様々なアノマリーが報告されています。
(効率的市場仮説については、効率的市場仮説と行動ファイナンス理論のところで書いていますので、よろしければご参照下さい。)
それでは早速、アノマリーについて見ていきたいと思います。
2.暦・周期関連のアノマリー
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1月効果(1月の株高)
1月に株価が大きく上昇しやすい。
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節分天井、彼岸底
節分(2月3日)のころに株価は天井を打ち、彼岸(3月20日)の頃に底値を打ちやすい。
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新年度相場
4月に上昇しやすい。
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夏枯れ相場
7~9月の夏場は収益率が低い。
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彼岸底
彼岸(9月23日の秋分の日とその前後各3日)の頃に底値をつけやすい。
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Sell in May and go away. But remember to come back in September.(5月に売ってどこかへ出かけろ。ただし9月に戻ってくることを忘れるな。)
アメリカの相場格言です。5月に天井を、9月に底値をつけやすい。
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10月効果
10月に底値をつけやすい。
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掉尾の一振(とうびのいっしん)
大納会(年内最後の取引日)に向けて株価が上昇しやすい。
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TOM効果
TOMは、turn of the monthの略称で“月の変わり目”という意味で、TOM効果とは、月末・月初に株価が上昇することが多いというもの。
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曜日効果
「月曜日の株安」や「週末の株高」などが挙げられる。
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魔の水曜日
SQ日とは簡単に言うと、先物・オプション取引の決済日のことで、SQ日がある週の水曜日は相場が荒れやすいというもの。
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2日新甫は荒れる
月の初日が休みで、2日から相場が始まる月は荒れやすい。
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10年パターン
下一桁が2や3で終わる年は、理想的な買いのポイントとなることが多く、また5で終わる年は非常に強気となり、その次に買いのポイントとなるのは7で終わる年だというもの。そして、9や0で終わる年はマーケットの天井となることが多い傾向がある。
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4年周期
4年周期で底をつけることが多いというもので、目先の相場では2018年、2022年、2026年が該当する。
3.価格関連のアノマリー
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低PER効果
PER(株価収益率)は、PER=株価÷一株あたり当期純利益(EPS)で求められる。低PER効果とは、この値が低いほど市場平均よりも高い収益率を上げられる可能性が高くなるというもの。
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低PBR効果
PBR(株価純資産倍率)は、PBR=株価÷一株あたり純資産(BPS)で求められる。低PBR効果もPBRが低い株式の方が市場平均よりも高い収益率を上げられる可能性が高いというもの。
※PER、PBRについて詳しくは、PERとPBRから日経平均株価のレンジを測る!をご参照下さい。
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配当利回り効果
配当利回りの高い銘柄は、市場平均よりも高い収益率を上げることが多い。
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規模効果(小型株効果)
時価総額の低い銘柄は市場平均よりも高い収益率を上げることが多い。
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低位株効果
株価の低いものは、値上がり率が高い。
4.ミーン・リバージョンとリターン・リバーサル
アメリカや日本の市場における株式収益率を調べた数多くの検証の結果、価格変動には短い期間では正の自己相関が存在するが、5年や10年といった長期間になるほど負の自己相関が存在することが示されており、後者のことをミーン・リバージョン(mean reversion)といいます。
このミーン・リバージョンは相場変動の平均回帰性とも呼ばれ、長期的には市場価格は平均的な(適正な)水準に戻るということを意味しています。
つまり、ある期間において上昇した株式はその後に下落し、逆にある期間に下落した株式はその後に上昇するということです。
そしてその結果として、市場価格が上下に騰落を繰り返すような動きとなることをリターン・リバーサル効果(return reversal effect)といいます。
5.米国大統領選挙関連
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大統領選サイクル
中間選挙の年が底値で、大統領選挙の年に上昇しやすい。また、大統領選の前年に一番良いパフォーマンスを示すことが多くなっている。そして、ドル円相場に関しても、大統領選挙の年とその翌年は円安ドル高となり、中間選挙の年とその翌年は円高ドル安になりやすいという傾向がある。
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大統領8年目
過去に大統領が8年間務めた際の8年目の米国株のパフォーマンスは悪いというもの。
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新大統領の就任した年
新大統領が就任した年は、6月まではNYダウが上昇して、7月以降のどこかで下落に転じることが多いというもの。
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民主党から共和党への政権交代
民主党から共和党へと政権が移行した年のNYダウは下落が激しいというもの。
6.その他
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ジブリの法則
ジブリの作品が金曜ロードショーで放映されるとき、その当日または翌週月曜日の相場が荒れるというもの。
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サザエさん効果
サザエさんの視聴率が上がると株価が下がり、逆に視聴率が下がると株価が上がるというもの。
7.最後に
以上、様々なアノマリーについて見てきました。
アノマリーについては、残念ながら近年になってその有効性が低下しているものも中には見受けられます。
その原因としては、アノマリーが広く知れ渡り、多くの投資家たちが利用し始めることで、その有効性が低下してしまっていることなどが考えられます。
一方でアノマリーの中には、効率的市場仮説では説明がつかないような、高い再現性をもって繰り返されるものもあります。
そのため、アノマリーをもとにして投資戦略を立てていくといったことは十分に検討に値するものだといえます。
もちろん、アノマリーを過信せずに、アノマリー通りにならなかった場合にどう対処するのかまでも考えておくことが重要なのは言うまでもありません。
なお、ここで取り上げたアノマリーのいくつかについては今後、その有効性を検証していきたいと思っています。
個人的には、今年(2017年)も残りわずかですが、5.米国大統領選挙関連で一番最後に書いた、「民主党から共和党への政権交代」のアノマリーが実現するかどうかが気になるところです。
また、2.暦・周期関連のアノマリーの一番最後に書いた、「10年パターン」や「4年周期」のアノマリーからは、2018~2020年における相場の大幅調整に注意が必要だといえそうです。