ここでは、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格の強い相関性は、コロナショック以降に弱まっていました。
ここ1年ほどは再び強い相関性を取り戻してきていますが、投機筋のネットポジションはここ10年の中では依然として低い水準となっています。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間には、強い相関性があることが見て取れます。
直近では、WTI原油先物価格が底堅い値動きとなっており、期待インフレ率も下げ渋っていることが分かります。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの在庫統計を見ると、その増減はWTI原油先物価格の後追いとなっていることが分かります。
原油在庫の増減を見越して(先取りして)、原油価格が動いているのでしょう。
足元では、WTI原油先物価格がやや調整の値動きとなっており、原油在庫も増加しています。
4.総括
WTI原油先物価格は、6月初めに一時72ドル台と、4ヵ月ぶりの安値を付ける場面がありました。
この背景には、OPECプラスが、現在の自主減産の規模を10月以降、段階的に縮小することを決定したことがあります。
そして、今後の原油相場を左右する材料としては、中東情勢の緊迫化や、米欧や中国の景気減速などが挙げられるでしょう。
先進国では、3月にスイス、5月にスウェーデン、6月に入ってからカナダ、ECB(欧州中央銀行)と利下げに転じる中銀が出てきているように、景気減速懸念が高まってきていると言えます。
実際に米国では、直近で景気・雇用の減速を示唆する指標が相次いでいます。
そういったことから、当面の原油価格には、下げ圧力がかかりやすい状況が続くのではないかと考えています。