ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.東証REIT指数とTOPIX
まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。
この図から、TOPIXと東証REIT指数とは強い相関を認めることが分かります。
2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り
次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。
まずは、NAV倍率の方からです。
NAV倍率は、1.06倍となっており、割安な水準に近付きつつあります。
続いて、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)
直近のJ-REIT分配金利回りは3.76%となっていますが、この利回りをリスクと比較して高いと見るかそうでないかは、意見が分かれそうです。
3.各種利回りの比較
さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。
ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」などにより、ここ何年もほぼゼロ%近傍での推移となっています。
そういったこともあり、長期金利は比較対象として適切なものかどうか疑わしいため、ここではJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとを比較してみます。
このJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。
この図から分かるように、スプレッドは低い水準となっており、東証REIT指数は株式と比較して割安であるとは言えなそうです。
4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数
なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。
そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。
具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。
まずは、「毎月決算型」の方からになります。
この「毎月決算型」を見るのは、分配金を毎月出す投信にとって、相対的に利回りの高いREITというのは、都合が良いためです。
ここ最近では、「毎月決算型」投信の純資産総額はほぼ横ばいとなっていますが、東証REIT指数が上昇していたため、両者の乖離は拡大傾向となっていました。
2017年末頃からは両者の乖離が大きくなっており、「毎月決算型」投信の純資産総額は、もはやあまり参考にならないのかもしれません。
続いて、「国内 不動産投信」になります。
対照的に、「国内 不動産投信」の純資産額の推移は、東証REIT指数とほぼ連動するような動きとなっていることが分かります。
「国内 不動産投信」の純資産額は、直近でやや減少してはいるものの、依然として高い水準にあることが見て取れます。
5.総括
東証REIT指数は直近でやや調整の値動きとなっていますが、ここまで見てきたように、まだそこまで割高感が薄れているとは言えなそうです。
J-REITの予想分配金利回りは、22年1月末時点で平均して3.76%で、これは一見すると利回りが高いように感じるかもしれませんが、REITでは、収益の9割以上が分配金として還元されていることを忘れてはなりません。
一方で、同じ1月末時点での東証1部全銘柄の加重平均配当利回りは、2.00%でした。
日本企業の配当性向が3割強であることを加味すると、収益性という観点では、株式に軍配が上がることが分かります。
もちろん、単純に利回りだけで比較できるものではありませんが、それでも業績が堅調で、株価もまだまだ割安な企業が多いことを考えると、REITよりも株式の方に投資妙味があるのではないかと考えています。
ちなみにREITを、「物流」、「住居」、「オフィス」、「商業施設」、「ホテル」といった用途別に分けて見てみると、用途別に値動きの強弱があることが分かります。
具体的には昨年後半以降、「オフィス」や「ホテル」の主な銘柄は、弱い値動きとなっているのに対し、「住居」や「商業施設」、「物流」の主な銘柄は堅調な値動きとなっています。
そして、世界的に新型コロナウイルスとの共存の流れが出てきている状況下では、いずれ日本もそれに追従していくことになるかと思われ、そう考えると未だ割安感のある「ホテル」系銘柄への投資はありかもしれません。実際に私も一部の「ホテル」系銘柄を試し買いしていました。
ただ、「オフィス」系銘柄については、新型コロナウイルスの感染拡大を契機としたテレワーク実施に伴う、オフィスの空室率上昇の流れが、コロナが終息した後もすぐに止むとは思えず、特に大規模なオフィスほど苦戦することになりそうです。
ですから、もし「オフィス」系銘柄を狙いたいというリスク選好度の高い投資家であれば、中小規模のオフィスを中心に組み入れた銘柄を狙うのが良いのではないでしょうか。