Contents
1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント
今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2021年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。
また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。
これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。
他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
そして、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、この11月中旬には、著名投資家たちの9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2021年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2021年6月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者を比較してみると、あまり大きな違いがないのですが、やや変化があった銘柄をピックアップすると、下記のようになります。
- SNOW(スノーフレーク):23.5%増。
21年7月以降、株価上昇中。 - APO(アポロ・グローバル・マネジメント):28.0%減
21年7~9月は株価横ばいだが、10月初めより急上昇。 - RBLX(ロブロックス):36.4%減
21年7月~10月は株価横ばいだが、11月中旬より急上昇。 - ZM(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ):11.2%増
21年8月以降、株価は右肩下がり。
なお、ポートフォリオ全体に占める上記銘柄の変化率は、0.24~1.67%に過ぎませんので、やはり全体的な変化としては小さいものになります。
4.チェース・コールマンの主な新規買い銘柄と総括
ここからはさらに踏み込んで、21年7月から21年9月末までの間に、タイガー・グローバル・マネジメントが新規買いした主な銘柄について見ていくことにします
以下の表は、新規買いが行われた銘柄のうち、ポートフォリオの組み入れ比率が0.2%以上の5銘柄を取り出したものです。
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率 |
WRBY | Warby Parker Inc | 1.54 |
HOOD | Robinhood Markets Inc | 1.1 |
BLND | Blend Labs Inc | 0.48 |
VTEX | Vtex | 0.45 |
MTTR | Matterport Inc | 0.27 |
これらの銘柄は、上場してから割と日が浅いものばかりですが、株価推移を見てみると、WRBYはほぼ横ばい、MTTRは右肩上がり、それ以外は右肩下がりとなっています。
さて、タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオですが、JD(JDドットコム)、PDD(ピンドュオドュオ)に加え、上述の上位15銘柄にはありませんが、BABA(アリババ・グループ・ホールディング)も1.20%組み入れています。
この3銘柄だけでポートフォリオへの組み入れ比率が1割強となっていることからも分かるように、中国株へのエクスポージャーは、米国のヘッジファンド業界でも最大規模であると言われています。
これらのうち、JDの株価は堅調ですが、PDDやBABAの株価は今のところ右肩下がりとなっています。
BABAは、独禁法違反の疑いで中国当局から巨額の罰金を科されるなどしていましたが、一部の中国株には今後もそうした当局からの突然の規制強化などのリスクが付きまといます。
にもかかわらず、21年7月から9月末までの間に、これらの3銘柄のポートフォリオへの組み入れ比率には、ほとんど変化がありませんでした。
これはつまり、タイガー・グローバル・マネジメントが、中国株に対して依然として強気であることを示していると考えられます。
ただ中国は、不動産業をはじめとした過剰債務問題も抱えており、この問題は少なくともあと1~2年は続く見込みです。
そういったこともあり、個人的には中国株には手を出しづらいところですが、今後のタイガー・グローバル・マネジメントの中国株に対するスタンスには引き続き、注目していきたいと思います。