1.東証の市場再編
東証では、2022年4月4日に、現在の4つの市場(東証1部、2部、マザーズ、JASDAQ)から、プライム、スタンダード、グロースの3市場体制へと移行する予定となっています。
この際に焦点となっているのが、現在の東証1部上場企業が、最上位のプライム市場に残れるかどうかといった点です。
詳しくは後述しますが、プライム市場への上場維持基準というのは、既に大枠で発表されています。
その基準に基づいて、まずは2021年7月中に東証が上場企業に対して、判定を通知することとなっているのです。
2.プライム市場の上場基準
具体的に、プライム市場の上場維持基準としては、主に以下のようなものが挙げられています。
- 流通株式比率:35%以上
- 流通株式時価総額:100億円以上
なお、プライム市場への新規上場基準としては、上記の他に、「時価総額250億円以上」、「純資産50億円以上」などの条件が加わります。
そして、既に東証1部に上場している企業であれば、プライム市場の上場維持基準を満たしていなくても、一定期間はプライム市場に留まることができます。
一方で、東証1部上場の全銘柄を対象とした株価指数であるTOPIXからは、段階的に組み入れ比率を下げられてしまうのです。
3.段階的ウエイト低減のスケジュール
まずは、上述した21年7月の判定の後、22年10月の判定で、流通株式時価総額が100億円に達していないと、「段階的ウエイト低減銘柄」に指定されます。
その後、3ヵ月ごとに4回に分けて、段階的にTOPIXへの組み入れ比率が下げられていくことになります。
さらに、23年10月の判定でも100億円に達していなければ、再び3ヵ月ごとに組み入れ比率が下げられ、25年1月末にTOPIXから完全に除外されるといった流れになっているのです。
そうなれば、当然、株価への悪影響は避けられないでしょう。
そして、プライム市場への上場基準を維持するためには、当然ですが、時価総額を増加させたり、大株主に保有株を売却してもらったりする必要があります。
そのため、既に動きが出てきてはいますが、今後も上場企業による政策保有株式の売りや、株式持ち合いの解消といった動きも進んでいくことが想定されます。
4.東証市場再編に伴う今後の戦略
2021年3月中旬の時点で、東証1部上場企業のうち、流通株式時価総額が100億円未満の企業の時価総額シェアは1%程度であるのに対し、銘柄数では約700銘柄にもなると言います。
また、流通株式時価総額が100億円というのは、普通株時価総額に換算すると、250億円の水準になるとも言われます。
ここで、簡易的で考察しやすい時価総額250億円という基準で自分自身の保有銘柄を見てみると、50銘柄中9銘柄が「東証1部かつ時価総額250億円未満」に該当していました。
そして、そういった銘柄は、今後の市場再編による、TOPIXから段階的なウエイト低減が嫌気されて、売られる局面があるかもしれません。
しかし、そういったテクニカルな要因で一時的に売られたとしても、業績が好調であれば、株価は再び上昇していくことが期待できるはずです。
そのため、「東証1部かつ時価総額250億円未満」に該当するからといって、それだけで上記の9銘柄を売却するつもりはありません。
一方で、これから新規に買う可能性のある銘柄については、市場再編が材料視されて、当面は軟調な値動きとなるリスクを低減するために、「東証1部かつ時価総額250億円未満」の銘柄はウエストを減らしていこうかと考えています。