1.バリュー投資ファンドの閉鎖
世界の株式市場は、年明けも堅調な値動きとなっています。
2020年11月23日には、以下の記事で、グロース株とバリュー株について触れていましたが、11月上旬には、バリュー株が優位となる局面が見られました。
ただその後は、グロース株が再び優位となっており、これで2015年頃からはほぼ一貫してグロース株優位となっていることになります。
そういったこともあり、12月には、バリュー株に投資する運用資産100億ドル米AJOパートナーズというファンドが閉鎖となってしまっていました。
2.ITバブル崩壊前のファンド閉鎖
ちなみに、ITバブルが崩壊する直前の2000年3月末には、当時世界最大のヘッジファンドであった米タイガー・ファンド等が閉鎖となっていました。
その投資戦略は、バリュー株を買い、割高な株を空売りするというものでしたが、不合理なバブル市場によってパフォーマンスが低迷し、資金流出に見舞われる事態となっていたのです。
そして、その直後の2020年4月から、NASDAQが急落し、ITバブル崩壊が始まっていました。
また、そこから2007年まではバリュー株優位ともなっていました。
もしかすると、今回もその時と同様に、AJOパートナーズのファンド閉鎖が、相場の調整やバリュー株優位への転換を示唆するものとなるかもしれません。
3.バリュー株を組み入れるべきか
ここでの、バリューやグロースといった分類は、PERやPBRといった投資指標によって行われています。
つまり、バリュー株というのは、低PERや低PBR株を指しているわけですが、こういった指標だけで銘柄選択をしてしまうと、「割安のワナ(バリュー・トラップ)」に引っ掛かりかねません。
株価が割安に放置されているのには、それなりの理由があり、ずっと割安なままで、いつまで経っても株価が上がらないという状況になりやすいのです。
また、近年のように様々な産業で、技術革新が進んでいるような状況では、資金力に乏しいような企業は淘汰されかねません。
そう考えると、もし今後のバリュー株優位への転換を期待して、ポートフォリオにバリュー株を組み込む場合には、次のような企業が望ましいと考えられます。
- 設備投資および研究開発に回すための、資金力・潤沢なキャッシュフローがある。
- 将来的に技術革新の先頭に立てるような材料がある。
- 将来的に商品・サービスの需要増が見込まれる。
4.具体的な銘柄の一例
上記のような項目を満たす企業として、ここではNTTや三菱重工業、AT&Tを挙げたいと思います。
なお、このいずれも、PERやPBRで見るとそこまで割安というわけではありません。
ですが、営業CFと時価総額を比較した場合には割安と言えますので、バリュー株扱いということにしたいと思います。
そして、NTTの場合には、5Gの先を見据えた「IOWN」という光技術の研究開発に力を注いでいます。
また、AT&Tについても最近、次世代通信につながる技術である「量子テレポーテーション」の実験に、米大などとともに成功したと報じられています。
最後に、三菱重工業に関しては、米防衛大手ロッキード・マーティンと提携して、次期戦闘機の開発を主導すると昨年に報じられていました。
こういった企業であれば、倒産の心配はまずなさそうであり、むしろ上昇余地すらあると言えそうです。
グロース株中心のポートフォリオとなっているような投資家は、こういった銘柄を一部に組み込んでみても良いのかもしれません。