1.金価格下落の背景
NY金価格は、8月上旬に2080ドル強の高値を付けたのち、10/27時点では1800ドル前後にまで下落しています。
一方で、「デジタルゴールド」とも呼ばれるビットコインの価格は急上昇していますし、NYダウが3万ドルの大台を付けたりもしていました。
こういった動きの背景には、新型コロナウイルスに対するワクチンの早期実用化への期待などから、市場がリスクオンへと傾いたことがあると思われます。
そして、12月15日~16日のFOMC(連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備理事会)が量的緩和を拡大するのではないかと見られています。
これは、新型コロナウイルスの感染再拡大が、景気回復の下振れリスクとなっており、量的緩和によって景気を下支えするためです。
また、金とともに安全資産とされる米国債も売られており、それによって米長期金利が0.8%台にまで上昇しているため、量的緩和によって長期金利の上昇を抑える意図もあるのでしょう。
2.純金上場信託とドル円相場
ここで、国内の代表的な金ETFである「純金上場信託(1540)」とNY金先物価格の推移を示したのが以下の図になります。
この図から、ここ最近では、青線で示した「1540」が、橙線で示したNY金先物に対して、アンダーパフォームしていることが分かります。
この理由は、細い赤線で示したドル円相場にあります。
つまり、ドル円相場が円高傾向となっているために、円建ての金価格である「1540」がアンダーパフォームしていたというわけです。
3.ドル円相場の今後
ドル円相場が円高傾向となっているのは、米国の財政収支と経常収支の「双子の赤字」の拡大が意識されてのものと思われます。
また、来月12月にも予想されているFRBによる量的緩和拡大や、次期大統領による経済対策で財政赤字がさらに増えることも、ドル安要因となり得るでしょう。
さらに、11月15日には、日本や中国を含む計15ヵ国が、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定に署名していました。
これにより、仮にアジア地域で(デジタル)人民元の決済が行われることとなれば、長期的に米ドルのプレゼンスが低下することは避けられないでしょう。
こういったことなどから、当面はドル安傾向となることが予想されます。
4.金相場の今後
上記のように、世界の基軸通貨とされるドルの信認が低下するような局面では、金が買われやすくなります。
また、現状で強い動きを見せている株式市場が大きな調整を見せるなどすれば、投資資金が金へと逃避することも考えられます。
今後、新型コロナウイルスの感染再拡大が想像以上に長引き、実体経済への悪影響が大きくなれば、株式市場もこのまま上がり続けるというわけにはいかないでしょう。
逆に、ワクチンの普及などにより、コロナ禍が収束して景気が上向き、金融政策の正常化となれば、これも株式市場にとっては逆風となり得ます。
そう考えると、最高値から比較的大きな調整を見せている金を、今後のドル安傾向も見越して円建てで、ポートフォリオの一部に加えてみても良いのではないでしょうか。