1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- さらに確実に儲けるための売り時・買い時が学べる! 株式投資の学校[チャート分析編]
- 著者:ファイナンシャルアカデミー
- 出版日:2017/4/20
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、テクニカル分析
まずは、本書の概要からです。
本書では、個人向けの投資教育事業を展開する日本ファイナンシャルアカデミー(JFA)によって、各種テクニカル指標を活用した株価チャートの分析法について書かれています。
なお、本書の章立ては、次のようになっています。
- はじめに なぜ株価チャートを利用する必要があるのか?
- 第1章:テクニカル分析を使いこなす4つのポイント
- 第2章:トレンド系のテクニカル指標を活用する
- 第3章:オシレーター系のテクニカル指標の使い方
- 第4章:トレンドを分析して株式市場の状況を見極める
- 第5章:売買タイミングをテクニカル指標で見極める
2.各種テクニカル指標
本書では、はじめに「テクニカル分析」とは、株価チャートを使って過去の株価の動きから今後の株価動向を分析する方法であると説明されています。
また、株を購入するタイミングを検討する際はもちろん、売却を検討する際にも活用したいのがテクニカル分析であるとも書かれています。
そして第1章では、テクニカル指標について、次のように大きく2つに分けて言及されています。
- トレンド系のテクニカル指標
- 株価の動向、つまり株価の方向性を分析することができる
- 順張りで利用する
- 移動平均線、トレンドライン、ボリンジャーバンド、一目均衡表など
- オシレーター系のテクニカル指標
- 株価の過熱感、つまり株が買われすぎか売られすぎかを分析することができる
- 逆張りで利用する
- MACD、ストキャスティクス、RSI、移動平均線乖離率、RCI
上記の各種テクニカル指標については、第2章・第3章でそれぞれの説明がなされています。
さらに第4章では、トレンドラインや、チャートパターン、エリオット波動理論、フィボナッチ比率分析についても触れられています。
なお、チャートパターンとしては、以下のものが挙げられています。
- 三角保ち合い
- ダブルトップ(もしくはダブルボトム)
- ヘッドアンドショルダーズトップ(もしくはヘッドアンドショルダーズボトム)
3.売買タイミングの見極め
第5章は、「売買タイミングをテクニカル指標で見極める」とのことで、より実践的な内容となっています。
まず初めに、次の2つを行います。
- 株価のトレンド(=方向性)を把握し、株を買うのか、空売りするのか、取引戦略を考える。=トレンド系のテクニカル指標を利用する
- 株価の過熱感(=買われすぎか、売られすぎか)を把握し、株を売買するタイミングとして妥当かを考える=オシレーター系のテクニカル指標を利用する
次に、念には念を入れて、トレンド系のテクニカル指標でも、オシレーター系のテクニカル指標でも、最低2つのテクニカル指標で分析を行い、確認をした方がよいと言います。
そして、株を買った後も、株価を動かしている要因に変更がないことや、トレンドが転換していないかを、常に確認するようにして、利益確定のタイミングを逃さないようにするとあります。
4.総括
本書では、多くのページを割いて各種テクニカル指標について解説されていますが、どれもありきたりで一般的な内容に終始しています。
そして、第3章のストキャスティクスの説明のところには、次のような記載があります。
株価にトレンドが出ているか出ていないかで、ストキャスティクスのシグナルも機能したり、しなかったりというふうになります。テクニカル指標が常に正確に機能するわけではありませんから、株式市場の地合い等も参考にしながら、その都度どのテクニカル指標を利用したらいいのかを考えていかなければならないでしょう。
また、第4章のトレンドラインのところでも、以下のような説明があります。
株式投資で儲けるためには、その時の株価のトレンドに合わせて取引しなければなりません。その時の地合いに合わせて、投資する手法を臨機応変に変えていかなければ、パフォーマンスの最大化を図ることは難しいでしょう。
他に、複数のテクニカル指標を併用して投資判断を行う、といった内容も目立ちます。
そもそも、テクニカル指標はどれを使用したところで大差なく、まして複数のものを組み合わせたからとって精度が高まるようなものではありません。
テクニカル指標というのは、過去の株価などのデータを加工したものに過ぎず、そこから将来の株価の動向が予測できるものでもありません。
あくまでもテクニカル指標は、エントリーや手仕舞いといった売買のきっかけとして使うためのものだと言えます。
本書では、そういったことの認識が甘い(無い)ように感じられます。
まるで、テクニカル指標をうまく活用すれば、相場予測の精度を高めることができると言っているかのようです。
それに、株価のトレンドというのも、なかなか後になってみないと分からないということが多々あります。
そんな中で、株式市場の地合いに合わせて、利用するテクニカル指標や投資する手法を臨機応変に変えていくなどということができるとは到底思えません。
本書では、テクニカル指標についてのそれらしい説明がなされてはいますが、実践的にはほとんど役に立たないような内容だと言えるでしょう。
もし本書に載っているテクニカル指標について興味があれば、ネット上で検索すればそれで事足りるはずです。