ここでは、直近(2019年9月)の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっているのに対して、ドル円相場の方は、概ね横ばい(ボックス圏)での推移となっていることが分かります。
そういった意味では、米長期金利だけを見た場合には、ドル安円高の余地があると言えそうです。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。
そして直近では、日米の長期金利差が急速に縮小しており、ドル円相場のドル安円高方向への動きを示唆しているように見えます。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていることが分かります。
つまり、ドル円相場を購買力平価という観点から見た場合には、ドル安円高余地が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との乖離は縮小傾向ではあるものの、ドル円のレートには依然としてやや円高余地があるように思われます。
4.総括
ここでは、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から、ドル円相場について見てきましたが、その全てで円高余地があるように見えました。
さらに、ドル円相場には、日米の金融政策が大きく関係してきます。
まず、FRB(米連邦準備理事会)は、7月30~31日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、10年半ぶりとなる政策金利(FF金利)の利下げ(0.25%)を行っていました。
そして、今週の9月17~18日のFOMCでも、0.25%の追加利下げが見込まれています。
一方、日銀では前回に引き続き、今回(9月18~19日)の金融政策決定会合でも、金融政策は現状維持との見方が強くなっています。
もちろん、FRBが利下げを行わなかったり、日銀がマイナス金利の深堀りなどの追加緩和を行ったりする可能性は否定できません。
とはいえ、中長期的に見れば米国の景気後退および、米長期金利低下が予想されます。
直近では、米中通商交渉の再開が報じられたこともあって、米長期金利が上昇し、為替もドル高円安方向に動いていますが、これは一時的な動きに過ぎないと思われます。
米中貿易摩擦はとても一朝一夕に決着がつくようなものではないからです。
為替相場では、注目される変動要因が時期によって異なりますが、近年のように金利差に焦点が当たっている状況下では、ドル円相場が中長期的にドル安円高傾向となっていく可能性が高いのではないでしょうか。