ここでは、直近(2019年6月)の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっているのに対して、ドル円相場の方は、概ね横ばい(ボックス圏)での推移となっていることが分かります。
そういった意味では、米長期金利だけを見た場合には、ドル安円高の余地があると言えそうです。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。
そして直近では、日米の長期金利差が急速に縮小しており、ドル円相場のドル安円高方向への動きを示唆しているように見えます。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていることが分かります。
つまり、ドル円相場を購買力平価という観点から見た場合には、ドル安円高余地が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との乖離は縮小傾向ではあるものの、ドル円のレートには依然としてやや円高余地があるように思われます。
4.総括
ここでは、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から、ドル円相場について見てきましたが、その全てで円高余地があるように見えました。
さらに、ドル円相場には、日米の金融政策が大きく関係してきます。
まず、FRB(米連邦準備理事会)は、6月18~19日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利(FF金利)を2.25~2.50%に据え置くことを決定しました。
続いて、日銀も6月19~20日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しています。
そして今後に関しては、FOMCでは年内の利下げを見込むメンバーが増え、市場でも来月7月(30~31日)のFOMCで利下げが行われるとの見方がかなり強まっています。
一方の日銀では、追加緩和の可能性について触れてはいるものの、金融機関の収益悪化などの副作用もあることから、実際に追加緩和を行うのは厳しいのではないかと思われます。
仮に日銀が何らかの追加緩和を行ったとしても、トランプ大統領から通貨安誘導との批判を受け、7月の参院選後に為替条項の導入に踏み切られるとの懸念もあります。
そういったこともあり、ドル円相場は直近で107円台前半まで円高が進んでいました。
ただ、市場では来月のFOMCでの利下げが既にかなり織り込まれているため、仮に利下げが行われなかった場合に、円安方向への揺り戻しも想定されます。
となると、円高方向への圧力はあるものの、大きく円高になることも考えづらく、ドル円相場はしばらく105~110円くらいの値幅で方向感のない展開が続くのではないでしょうか。