相場のデータ・指標

【2023年12月】「ドル円相場」のデータ分析(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)

ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.日米10年国債利回りとドル円相場

まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。

23年12月までの米10年債利回りとドル円相場の推移を示した図

この図から分かるように、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっていましたが、ここ数年で急反発していました。

一時5%超を付けた米長期金利は、直近では4%を下回るところまで低下しています。

次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。

23年12月の日米10年国債利回り差とドル円相場の推移を示した図

こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。

直近では、米長期金利の低下に伴って長期金利差が縮小したことで、ドル円相場もやや円高となっています。

2.購買力平価とドル円相場

次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。

なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。

23年12月までの日米の各種購買力平価とドル円相場の推移を示した図

この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていたことが分かります。

さらに、2022年以降、ドルの円レートが消費者物価PPPを大きく超える動きとなっており、直近においてもその状態が継続しています。

3.修正ソロスチャートとドル円相場

最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。

23年12月までの修正ソロスチャートとドル円相場の推移を示した図

この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との相関性が高いことと同時に、最近では両者の乖離が拡大していることが分かります。

4.総括

10月下旬から11月の上旬まで150円前後で推移していたドル円相場は、直近で一時140円近くにまで急落しています。

この背景には、日銀が金融政策を修正するではないかとの思惑が強まったことなどがあります。

今月18~19日に開かれる日銀の金融政策決定会合では、大きな政策変更はないと見られていますが、来年24年の前半には、YCC(イールドカーブ・コントロール:長短金利操作)の撤廃やマイナス金利解除がなされるのではないかと予想されています。

また、今月12~13日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)は政策金利を据え置き、2024年中の利下げ幅の予想はやや拡大する結果となっていました。

一方で、FRBがQT(量的引き締め)を継続しているのに対し、日銀は量的緩和を継続しています。

そして、12月12日に発表された11月の米CPI(消費者物価指数)は前年同月比3.1%上昇と、インフレ率は鈍化傾向にはあるものの、その低下ペースは緩やかなものとなっています。

そういったことなどから、現在の円高は先行きをやや織り込み過ぎているように思われ、このまま円安が進んでいくような展開にはなりづらいのではないかと考えています。

【2023年12月】「WTI原油」のデータ分析(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API))前のページ

【2023年12月】「日経平均株価」のデータ分析(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、信用評価損益率、騰落レシオ)次のページ

関連記事

  1. 相場のデータ・指標

    「米国長期金利」のデータ分析(2020.3)(日本と中国の米国債保有額・FRB保有債券残高)

    この記事では、直近の「米国長期金利」について、日本と中国の米国債保有額…

  2. 相場のデータ・指標

    生兵法は怪我の基!? 空売り比率の見方には注意が必要!

    この記事では、空売り比率とは何か、規制緩和による空売り比率への影響、空…

  3. 相場のデータ・指標

    「ドル円相場」のデータ分析(2019.9)(日米10年国債利回り・購買力平価・ソロスチャート)

    この記事では、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修…

  4. 相場のデータ・指標

    「米国株(S&P 500)」のデータ分析(2020.9)(PER・CAPEレシオ・ブルベア…

    この記事では、直近の「米国株(S&P 500)」について、PER・CA…

  5. 相場のデータ・指標

    信用取引残高(信用残)の意外な検証結果と新たな指標!

    この記事では、信用取引残高(信用残)について、金額ベースのものと株数ベ…

  6. 相場のデータ・指標

    2018年、「戌(いぬ)笑い」は成るか!? 十干十二支と日経平均株価

    この記事では、日経平均株価を十干と十二支という観点から検証しています。…

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 読書録・書評

    【読書録・書評】『ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること 「すごい会社…
  2. 株式取引履歴

    【2024年6月】株式取引履歴(日本株・外国株)
  3. 相場のデータ・指標

    【2024年3月】「日経平均株価」のデータ分析(PER・PBR、海外投資家売買動…
  4. 相場のデータ・指標

    「WTI原油」の先物価格とCFTC建玉明細
  5. 相場のデータ・指標

    「日経平均株価」のデータ分析(2020.3)(PER・PBR、海外投資家売買動向…
PAGE TOP