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1.バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏
今回は、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ(BRK)の2022年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
バフェット氏は、「投資の神様」や「オマハの賢人」と呼ばれることがあることからも分かるように、過去35年間(1987-2021年)の年平均リターンは、15.6%と驚異的なものとなっています。(同期間のS&P 500の年平均リターンは、8.9%。)
ただ、下の表に示すように、最近の10年間で見ると、やや様相が異なっていることが分かります。
年平均リターン | BRK | S&P 500 | 超過リターン |
過去3年間(2019-2021) | 13.8% | 23.9% | -10.1% |
過去5年間(2017-2021) | 13.0% | 16.3% | -3.3% |
過去10年間(2012-2021) | 14.7% | 14.3% | 0.4% |
過去10年間(2012-2021年)では、S&P 500とほぼ同等であり、過去3年間(2019-2021年)および過去5年間(2017-2021年)においては、S&P 500をアンダーパフォームしているのです。
これに関しては、米国株の上昇が続いていたことから、バフェット氏のお眼鏡に適うような割安株が見つかりづらかったことが要因の一つではないかと思われます。
実際、バークシャーの現金等の待機資金は、2010年頃より2021年末頃まで増加傾向となっていました。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、バフェット氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、22年11月中旬頃には、著名投資家たちの22年9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.バークシャー・ハザウェイのポートフォリオ
それでは早速、バークシャー・ハザウェイの2022年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2022年6月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。
4.バークシャー・ハザウェイの主な売買銘柄と総括
まず、22年7月から9月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.1%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) | 組入比率(%) |
TSM | Taiwan Semiconductor Manufacturing Co Ltd | 1.39 | 1.39(新規買い) |
OXY | Occidental Petroleum Corp | 0.74 | 4.03 |
CVX | Chevron Corp | 0.19 | 8.02 |
LPX | Louisiana-Pacific Corp | 0.10 | 0.1(新規買い) |
次に、22年7月から9月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.1%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) | 組入比率(%) |
USB | U.S. Bancorp | -0.65 | 1.06 |
ATVI | Activision Blizzard Inc | -0.21 | 1.51 |
BK | Bank of New York Mellon Corp | -0.14 | 0.81 |
これらの表から、過去3四半期に続いて、「OXY(オクシデンタル・ペトロリアム)」や「CVX(シェブロン)」といった石油・ガス関連企業を買い増していることが分かります。
一方で、同じように買い増してきていた米ゲーム大手の「AVTI(アクティビジョン・ブリザード)」に関しては、一転して売却となっています。
また、「USB(U.S.バンコープ)」「BK(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)」といった金融株も売却しています。
そして、何と言っても目を引くのが、「TSM(TSMC)」の41億ドル強にも及ぶ新規買いでしょう。
TSMCは、言うまでもなく世界一の半導体ファウンドリであり、業績も右肩上がりですが、年初からは株価が大きく調整していたこともあり、買い出動したものと思われます。
なお、11月14日時点で、日本の大手総合商社5社(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)の保有比率を約5%から、それぞれ6.5%前後にまで引き上げていたことも明らかになっています。
さて、FRB(米連邦準備制度理事会)は、11月2日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、0.75%の利上げを決定しており、今後もしばらくは利上げを継続することになりそうです。
そうなると、当然「AAPL(アップル)」などのハイテク関連銘柄には逆風となり、実際に年初から調整の値動きとなっています。
そういった環境下でバークシャー・ハザウェイが、アップルが4割超を占めるポートフォリオをどのようにマネジメントしていくのか、引き続き注目していきたいところです。