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1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント
今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2022年9月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。
また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。
これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。
他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
そして、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、この22年11月中旬には、著名投資家たちの22年9月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2022年9月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2022年6月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。
4.チェース・コールマンのポートフォリオ・マネジメントと総括
まず、22年7月から9月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が1.0%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) | 組入比率(%) |
DDOG | Datadog Inc | 3.23 | 4.71 |
GOOGL | Alphabet Inc | 2.87 | 4.81 |
WDAY | Workday Inc | 2.54 | 4.43 |
UBER | Uber Technologies Inc | 2.26 | 2.41 |
NOW | ServiceNow Inc | 2.00 | 5.87 |
MSFT | Microsoft Corp | 1.81 | 12.84 |
HUBS | HubSpot Inc | 1.47 | 1.47(新規買い) |
SQ | Block Inc | 1.44 | 1.92 |
PGY | Pagaya Technologies Ltd | 1.24 | 1.24(新規買い) |
次に、22年7月から22年9月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が1.0%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) | 組入比率(%) |
CRWD | CrowdStrike Holdings Inc | -7.99 | 1.36 |
NU | Nu Holdings Ltd | -4.92 | 1.87 |
PCOR | Procore Technologies Inc | -1.19 | 0.00(完全売却) |
XPEV | XPeng Inc | -1.16 | 0.00(完全売却) |
S | SentinelOne Inc | -1.15 | 0.97 |
ONEM | 1Life Healthcare Inc | -1.12 | 0.00(完全売却) |
これらの銘柄を見ると、売上高は右肩上がりで、利益は黒字化している企業が一部にあるものの多くは赤字で、株価もかなり割高という点で共通しています。
また、チャートの形状も右肩下がりで売却というものもありますが、そうではないものが多く、これら企業の買いと売りの判断を分かつものが一体何なのかは私には分かりませんでした。
もちろん、「GOOGL(アルファベット)」や「MSFT(マイクロソフト)」については、年初来からの調整幅がそれぞれ3割強、2割強となっていますので、押し目買いのような形なのだろうと思われます。
そして、これらの売買銘柄を見ても想像が付くかと思いますが、タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオは、「テクノロジー(情報技術)」セクターの構成比率が高くなっています。
同セクターのポートフォリオ全体に占める割合は、22年9月末時点で前四半期の45.5%からさらに上昇して、53.4%と半分強を占めるまでになっているのですが、ハイテク関連銘柄にとって、昨今の金融引き締め環境は株価に逆風となります。
実際に、22年9月末時点からポートフォリオの構成に変化がなかったと仮定すると、直近ではS&P 500に対して15%強ものアンダーパフォームとなっており、前四半期に続いて苦戦している様子が伺えます。
ただ、21年12月末時点でポートフォリオ全体の時価総額は459億ドルだったところから、22年3月末に266億ドル、同6月末に119億ドル、同9月末には109億ドルにまで持ち高を減らしているようでした。
つまり、現金もしくは現金同等物の比率を高めながら、これまで通りハイテク関連銘柄にベットする方針であると思われます。
仮に2023年中にFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが停止されたとしても、政策金利が高水準にある状況がしばらく続くことは避けられず、ハイテク関連銘柄にとっては厳しい環境が続くことになりそうです。
一方で、インフレが落ち着き、オーバーキルによる景気後退からFRBが再び金融緩和に舵を切るとの見方が強まれば、グロース株には逆に追い風となるでしょう。
その金融引き締めと金融緩和の境界線をどのように見極めて、タイガー・グローバル・マネジメントが再びアクセルを踏む時がいつなのかを注視していきたいところです。