Contents
1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント
今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2022年6月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。
また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。
これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。
他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
そして、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、この22年8月中旬には、著名投資家たちの22年6月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2022年6月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2022年3月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。
4.チェース・コールマンのポートフォリオ・マネジメントと総括
まず、22年4月から6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.5%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) | 組入比率(%) |
GOOGL | Alphabet Inc | 2.02 | 2.02 |
BZ | Kanzhun Ltd | 0.96 | 2.57 |
META | Meta Platforms Inc | 0.80 | 6.07 |
S | SentinelOne Inc | 0.80 | 1.96 |
次に、22年4月から22年6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が1.5%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) | 組入比率(%) |
SNOW | Snowflake Inc | -4.05 | 2.48 |
JD | JD.com Inc | -3.96 | 16.44 |
CVNA | Carvana Co | -3.77 | 0.02 |
NOW | ServiceNow Inc | -2.78 | 4.45 |
MSFT | Microsoft Corp | -2.49 | 11.11 |
SE | Sea Ltd | -2.39 | 4.60 |
DASH | DoorDash Inc | -2.26 | 1.65 |
CRWD | CrowdStrike Holdings Inc | -1.92 | 9.26 |
SHOP | Shopify Inc | -1.90 | 0.44 |
NU | Nu Holdings Ltd | -1.50 | 6.37 |
これらの表から、ポートフォリオの主力株の多くが大きく売られていたことが分かります。
一方で、GOOGL(アルファベット)を大量に新規買いし、META(メタ・プラットフォームズ)やBZ(カンジュン)なども買い増しています。
BZについては初めて目にしましたが、オンライン採用プラットフォームを運営する中国企業のようです。売上は倍々で拡大していますが、依然として赤字幅も大きくなっています。
タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオは、CRWD(クラウドストライク)やNU(ヌー)、SE(シー)、SNOW(スノーフレーク)のような、売上は拡大しているものの、赤字を垂れ流しているハイテク株が目立っていました。
これらの銘柄はかなり大きく売却したとはいえ、まだ割と大きなエクスポージャーとなっています。
他の主力株もバリュエーションの高いものばかりで、昨今の金融引き締めは強い逆風となることが予想されます。
実際、直近までに6月末時点からポートフォリオの内容に変更がなかったと仮定すると、S&P 500を下回るパフォーマンスとなっています。
高インフレが持続し、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げも継続されることが予想される現在の状況は、タイガー・グローバル・マネジメントにとっては特に大きな受難であると言えます。
引き続き、難しい舵取りを迫られる中で、チェース・コールマンがどのようなポートフォリオ・マネジメントを行っていくのか注目です。