Contents
1.バークシャー・ハザウェイを率いるウォーレン・バフェット氏
今回は、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイ(BRK)の2022年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
バフェット氏は、「投資の神様」や「オマハの賢人」と呼ばれることがあることからも分かるように、過去35年間(1987-2021年)の年平均リターンは、15.6%と驚異的なものとなっています。(同期間のS&P 500の年平均リターンは、8.9%。)
ただ、下の表に示すように、最近の10年間で見ると、やや様相が異なっていることが分かります。
年平均リターン | BRK | S&P 500 | 超過リターン |
過去3年間(2019-2021) | 13.8% | 23.9% | -10.1% |
過去5年間(2017-2021) | 13.0% | 16.3% | -3.3% |
過去10年間(2012-2021) | 14.7% | 14.3% | 0.4% |
過去10年間(2012-2021年)では、S&P 500とほぼ同等であり、過去3年間(2019-2021年)および過去5年間(2017-2021年)においては、S&P 500をアンダーパフォームしているのです。
これに関しては、米国株の上昇が続いていたことから、バフェット氏のお眼鏡に適うような割安株が見つかりづらかったことが要因の一つではないかと思われます。
実際、バークシャーの現金等の待機資金は、2010年頃より前四半期まで増加傾向となっていました。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、バフェット氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、22年5月中旬頃には、著名投資家たちの22年3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.バークシャー・ハザウェイのポートフォリオ
それでは早速、バークシャー・ハザウェイの2022年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2021年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
4.バークシャー・ハザウェイの主な売買銘柄と総括
今回の22年1月から3月末までの間では、ポートフォリオに割と大きな動きがありました。
それを具体的に見ていくために、ポートフォリオ全体への影響度が大きかった上位7銘柄について、前四半期からの増減率および組み入れ比率とともに示したのが、次の表になります。
ティッカー | 銘柄名 | 増減率(%) | 組み入れ比率(%) | 全体への影響度(%) |
CVX | Chevron Corp | 316.21 | 7.13 | 5.42 |
OXY | Occidental Petroleum Corp | 新規買い | 2.13 | 2.13 |
ATVI | Activision Blizzard Inc | 338.77 | 1.42 | 1.10 |
HPQ | HP Inc | 新規買い | 1.04 | 1.04 |
C | Citigroup Inc | 新規買い | 0.81 | 0.81 |
PARA | Paramount Global | 新規買い | 0.72 | 0.72 |
CE | Celanese Corp | 新規買い | 0.31 | 0.31 |
この表を見ると、前四半期に買い増していた石油・ガス関連企業の「CVX(シェブロン)」への大量の買い増しや、同じく石油・ガス関連企業の「OXY(オクシデンタル・ペトロリアム)」を大きく新規買いしているのが目立ちます。
また、前四半期に新しく買い入れていた米ゲーム大手の「AVTI(アクティビジョン・ブリザード)」も割と大きく買い増しています。
その他、大きな成長は見込めなさそうではあるものの、割安感のある「HPQ(HP)」や「C(シティグループ)」、「PARA(パラマウント・グローバル)」なども買い増しており、これらに関してはバフェット氏らしいポートフォリオ・マネジメントという印象です。
バークシャーでは、2010年代前半より保有する現金・同等物が右肩上がりで増加し、21年12月末時点では約17兆円にもなっていました。
それが、この22年1月から3月末までの間に、約5兆円もの株式を買い越す結果となっていたのです。
その中でも、石油・ガス関連企業に大きく投資していたのは、インフレへの備えという狙いや、原油や天然ガス価格の高騰が当面は収まらないだろうとの見立てがあってのことだと思われます。
確かに、仮にウクライナ紛争が終結したとしても、ロシア産原油が西側諸国に出回ることは考えづらく、OPECや米国などもすぐには大きく増産するのが難しいため、原油価格が大きく下落する可能性は低いと言えるでしょう。
一方で、インフレ対策という観点からは、資源関連銘柄以外にも、物価上昇分を価格に転嫁することができるような競争力のある企業に投資するという手段もありそうです。
いずれにしても、バークシャー・ハザウェイが依然として14兆円近くもある現金・同等物を、今後どのように扱っていくのかは注目したいところです。