ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そうした状況下では、平均PERが指標として機能していませんでしたが、直近ではそうした状況も落ち着いてきており、日経平均株価はPER 14倍程度での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは7月2日大引けの時点で、1.24倍での推移となっています。
なお、7月2日大引けの時点で、平均PBR 1.2倍相当が27855円、平均PBR 1.3倍相当が30176円となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
この図からも分かるように、2020年10月頃より続いていた、海外投資家の買い越し傾向は足元で一服しており、2021年4月以降はほぼ横ばいとなっています。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
この図から、日銀のETF買い入れは直近において、大きくペースダウンしていることが分かります。
ちなみに、4月以降における日銀のETF買い入れは、4月21日の701億円と、6月21日の701億円の2回だけでした。
さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
3.NT倍率
また、NT倍率も見てみることにします。
この図からは直近で、NT倍率低下の後を追うようにして、日経平均株価がじりじりと下落しているように見えます。
4.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、足元で-8.19%となっていることから、直近の相場は決して過熱感があるというわけではなく、かといって割安感があるというわけでもなさそうです。
5.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から、騰落レシオに関しても、株価の最近までの上昇と比較して、そこまで上昇していないことが分かります。
6.総括
ここまで見てきたように、2021年4月以降は日本株の大きな買い手であった海外投資家および日銀の買いが急減し、日経平均株価も停滞を余儀なくされていました。
日銀はこれまで大量に購入したETFの出口戦略を懸念されていることもあり、日銀によるETFの買い入れは今後も期待できないでしょう。
一方の海外投資家については、コロナウイルス感染拡大の動向や、ワクチン接種の進捗次第かと思われますが、これに関しては今秋以降には改善が見られるのではないでしょうか。
また、日経平均株価のPERを見ても14倍と決して割高な水準ではなく、コロナの影響で苦戦している業種は依然としてあるものの、全体としてみれば企業の業績も堅調なように思われます。
そういったことから、日本株にとって今夏は、買い場を提供してくれるような展開になるのではないかと考えています。