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1.チェース・コールマン率いるタイガー・グローバル・マネジメント
今回は、チェース・コールマン氏が率いる、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドの2021年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
チェース・コールマン氏は、2020年のヘッジファンドマネジャーの収入ランキングで首位となっており、30億ドルを稼いだとされます。
ちなみに、前回の記事で取り上げたレイ・ダリオ氏は、旗艦ファンドの「ピュア・アルファ・Ⅱ」が2年連続のマイナスとなり、ランキング番外となっていました。
また、チェース・コールマン氏は、以下に示すように、2010年12月末の時点で、アップル(AAPL)株のポートフォリオへの組み入れ比率をトップとしていたのです。
これは、アップル株が本格的な上昇を開始するよりもかなり前でした。
他にも、FacebookやLinkedInには初期の頃から投資していたりと、同氏の先見の明には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、チェース・コールマン氏に限りませんが、上記のように著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、この5月中旬には、著名投資家たちの3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.タイガー・グローバル・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、タイガー・グローバル・マネジメントの2021年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位15銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2020年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者を比較してみると、PDD(ピンドゥオドゥオ:中国のネット通販大手)の組み入れ比率が低下していることが分かります。
ただ、特筆すべきは、RBLX(ロブロックス:オンラインゲームのプラットフォーム)を、ポートフォリオの6%超にも及ぶ新規買いをしている点です。
このRBLXは、2021年3月10日に上場したばかりで、株価は概ね65~85ドルのレンジでの推移となっています。
一方、2018~2020年の過去3年間の業績は増収ではあるものの、各種利益は全て赤字となっており、直近の通期決算では赤字幅も大きく拡大しています。
2020年12月期の売上高9.2億ドルに対して、5月21日時点での時価総額は472億ドル、実績PBRは82倍と、一般的な尺度からすると超割高な株価となっています。
4.チェース・コールマンの主な新規買い銘柄と総括
ここからはさらに踏み込んで、上記のRBLXも含め、20年12月末から21年3月末までの間に、タイガー・グローバル・マネジメントが新規買いした主な銘柄について見ていくことにします。
以下の表は、新規買いが行われた銘柄のうち、保有ポジションの高い順に9銘柄を取り出したものです。
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率 |
RBLX | Roblox Corp | 6.03 |
FUTU | Futu Holdings Ltd | 1.22 |
CPNG | Coupang Inc | 0.41 |
OSCR | Oscar Health Inc | 0.34 |
PLTK | Playtika Holding Corp | 0.34 |
ONTF | ON24 Inc | 0.18 |
DOCN | DigitalOcean Holdings Inc | 0.16 |
BMBL | Bumble Inc | 0.14 |
TUYA | Tuya Inc | 0.14 |
そして、上記銘柄の過去の業績をそれぞれ閲覧し、大まかにまとめたのが下記になります。
- FUTUは業績好調、ONTF、BMBL 、PLTKは業績堅調だが、バリュエーションが高い。
- CPNG、OSCR 、DOCN、TUYAは増収も赤字継続、バリュエーションも高い。
また、新規買いされた銘柄を見ると、最近上場したばかりの企業が多いことが分かります。
いずれもバリュエーションが高く、手を出しづらいものばかりですが、それらをまとめて買うことで、一部の銘柄だけでも大きく成長すれば、全体として良いパフォーマンスを上げることができるという考え方なのかもしれません。
米国株は、1株単位で買えることから、比較的少額からでも、個人投資家がこの戦略を真似することは可能だと言えます。
ただ、投資先企業が大きく成長するまでに、少なくとも数年間は保有し続ける必要があるでしょうし、その間に淘汰される企業も少なくはないでしょうから、忍耐を要する戦略であることは間違いありません。
ポートフォリオのごく一部で実践してみるのはありかもしれませんが、実際に行えるかどうかは性格的に分かれるところでしょう。
なお、前四半期に続き、21年3月末も組み入れ比率トップのJD(アリババに次ぐ中国2位のeコマース企業)に関しては、バリュエーションがそこまで高いわけではなく、今後の成長も期待できると思われるため、私もほんの少しですが保有しています。