ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.東証REIT指数とTOPIX
まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。
この図から、TOPIXと東証REIT指数とは強い相関を認めることが分かります。
また、停滞していた東証REIT指数も、ようやく上昇へと転じていました。
2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り
次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。
まずは、NAV倍率の方からです。
NAV倍率は依然として、一般的に割安の基準であるとされる1倍前後での水準(赤い点線)となっています。
続いて、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)
この図から分かるように、直近のJ-REIT分配金利回りは4%を割り込んできており、東証REIT指数の割安感は修正されつつあります。
3.各種利回りの比較
さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。
ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、2月末に0.15%を大きく超える場面もありましたが、直近では、若干の利回り低下を認めています。
そのため、長期金利は依然として比較対象として適切なものかどうか疑わしいため、ここではJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとを比較してみます。
このJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。
ここ最近は、TOPIXと東証REIT指数ともに上昇していたこともあり、両者の利回り差も概ね横ばいとなっています。
4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数
なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。
そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。
具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。
まずは、「毎月決算型」の方からになります。
この「毎月決算型」を見るのは、分配金を毎月出す投信にとって、相対的に利回りの高いREITというのは、都合が良いためです。
ここ最近では、「毎月決算型」投信の純資産総額はほぼ横ばいとなっていますが、東証REIT指数が上昇したため、両者の乖離が広がる結果となっています。
2017年末頃からは両者の乖離が拡大傾向となっており、「毎月決算型」投信の純資産総額は、もはやあまり参考にならないのかもしれません。
続いて、「国内 不動産投信」になります。
一方で、「国内 不動産投信」の純資産額の推移は、東証REIT指数とほぼ連動するような動きとなっていることが分かります。
株式と比較して割安感のあった、不動産に資金が流入したものと思われます。
5.総括
前回(2020年12月)の東証REIT指数のデータ分析で、REITには割安感があると指摘しましたが、この3ヵ月でその割安感はある程度修正されたように思われます。
そしてREITを、「物流」、「住居」、「オフィス」、「商業施設」、「ホテル」といった用途別に分けて、それぞれの代表的な銘柄の値動きを見てみると、その強弱の差に変化が出ていることが分かります。
これまで強かった「物流」系銘柄は横ばいからやや調整といった値動きとなっており、一方で、これまで弱かった「商業施設」や「ホテル」系銘柄の回復基調が鮮明となっているのです。
特に「商業施設」系銘柄では、コロナ前の水準をほぼ回復しているような状況です。
また前回、意外なほど軟調な値動きとなっていると書いた「オフィス」系銘柄は、上昇してきてはいるものの、コロナ前の水準を回復するにはまだ遠い状況となっています。
コロナ禍を契機としたテレワークの増加やオフィス縮小などといった動きを織り込んでのものと思われ、「オフィス」系銘柄がコロナ前の水準を回復するのには、予想以上に時間がかかりそうです。
総合的に見て、現状のREITに関しては積極的に買いたいとは思えず、再び割安感が出てくるのを待ちたいといったところでしょうか。